02
自分の人生が、そこで終わってしまうんじゃないかというほど、泣いた。
番組編成の関係で、そのラジオは終わってしまうのだという。それからのことは、まるで頭の中にモヤが掛かって、現実を受け止めたくないからなのか、覚えていない。
あとからネットで調べて分かったのは、そのボーカルはリンという男性で、顔出ししておらず、年齢等も一切伏せられていた。
唯一の手掛かりは、SNSだったけれど、リンが「Klar(クラー)」を脱退することをきっかけに、解散。そのSNSは相方のヨウの活動を紹介するためのものになると書かれていた。
あれ以来、彼の詳細は不明だった。
だからぼくは、このデパートに来るたびに、あのローカルステーションが気になって仕方がない。
いつか、もしかしたら、彼に出会えるのではないか。
そんなことを思いながらも、まるで時間が止まったかのように、ぼくはあのときの音楽を聴き続けている。
◇
高校三年生にもなって、母の言いつけを守るのは、子どもっぽいとは思っている。実際、ぼくの容姿は幼いほうだ。
背も取り分けて高いわけではない。小柄ではないが、線が細い。食べても太らないのは、繊細に物事を考える母の遺伝だと思う。
自宅に帰り、ぼくは無塩バターを母に手渡した。
先日、祖父が病気をした。腸の病気だ。
幸いにして大事には至らなかったものの、母のほうが祖父よりも体を気遣いようになった。無塩バターの買い出しもそうだ。
コーヒーにグラスフェッドバターを入れると、腸内環境を改善できるというネット記事を読んで、母は約2か月の間、律儀に続けている。
食事に使うのも、その無塩バターだ。卵焼き、ソテー、なんにでも使う。
コレステロールは血管の保護のために必要だから下げる必要はないというのが最新の見識だとも言っていた。
だから、バターの使い過ぎで不健康になるのでは? というぼくの意見は、最初から弾かれている。
「南帆、クッキーを焼いたの。勉強の合間にどうぞ」
そう言って、母がココットに入れたひと口大のクッキーをぼくに差し出した。小麦ではなく、米粉と麦を使っている。
大学受験のために去年から始めたオンライン式の塾の講師は、母と同様にかなりの健康マニアだ。勉強のさなかには糖分をしっかり摂るほうが良いという。