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自分たちが特別なわけではなく、人はみんなそれぞれの音を持っている。
その音は誰かひとりにだけ届けばいい音でもあるし、不特定多数の人に届いて初めて音になる場合もある。
「Klar(クラー)」という、ユニット名と同じこの曲を作るにあたって、その音が個人個人、そして多数に届いたときに聞こえ方が異なるような音になればいい。そう思って書き上げた楽曲だ。
旅立ちとも、再会とも受け取れる。歌詞に明確な感情の色は付けなくて、そこを縁取るのはこの曲を聴いて下さった方であってほしい。その音が重なって初めて、この楽曲は完成する。
そのときと、ほぼおなじ説明を、リンが言う。ヨウがギターを構える音がする。ぼくの周囲にいた人たちが、声を震わせた。
『原曲はピアノだけど、さすがにここに持ってくるわけにはいかないので』
ヨウのセリフに、周囲の人が笑った。パーソナリティーも、リンも笑っている。
『そりゃあ狭いスタジオの中にピアノは無理だねえ、俺が半分くらいになっても無理』
自分の恰幅のよさをネタにするパーソナリティーを笑いながら、ヨウがギターのチューニングを始めた。
ヨウのギターもまた、柔らかで、独特な音を奏でる。ぼくの周りにいる人たちはヨウのファンの人みたいで、ただチューニングをしているだけだというのに、うっとりとした顔をしていた。
『あれっ? ちょっと待って、楽曲を掛けるんじゃなくて、もしかして、生演奏!?』
わざとらしい口調で、パーソナリティーが言う。どう見てもそうなのだけれど、ぼくたちは煽られるよりも早く、自発的に拍手をした。
リンとヨウが視線を合わせている。数日前に再会したと言っていたのに、まるでずっと一緒にいたかのように、もう馴染んでいる。
『それでは聞いてください。「Klar(クラー)」』
ヨウが静かに言ったあと、静寂が周囲を包んだ。
ヨウがギターのボディーを叩いてカウントをとる。ふたりの視線があったのを合図に、ヨウがギターの弦をつま弾いた。静かなアルペジオから始まるイントロは、導入というよりもそのフレーズだけでも聴かせる響きだ。
この曲は、ヨウの歌声から始まる。Bメロに差し掛かるあたりからリンの声にさし代わり、ヨウがハモリに転じるのだが、そのパートに差し掛かったとき、ぼくの周囲にいた人たちが、息を呑んだ。