初恋
「よう、昨日の期末どうだった? え? ああ、俺追試確定だわ、付き合うか?」
ミコト、俺のこと完コピしすぎだろ。ずっと俺のこと見てたんだな、それに双子だしな。
「あ、水野、クン」
急にミコトが女らしい言葉遣いになったが、理由がすぐに分かり俺は少々不愉快になった。
水野と言えば、頭脳明晰、容姿端麗で女子からの人気ナンバーワンの男子だ。おまけに、気さくでいい奴ときている。俺が勝てるところと言ったら、運動神経くらいしかない。
〈お前、水野の事好きなんだろ?〉
「えっ、いやー、そのー......うん、大好き」
ミコトが小声で言う。出来たばかりの妹を取られた気分だ。
「ホントは告白したいなって、ずーっと思ってたんだよね。でも、私幽霊だし、お兄ちゃんの身体で告白するわけには......アハハ、いかないよね」
〈報われない恋だな〉
「やっぱり、そうだよね。告白するわけには、いかないよね......」
〈お前、意地でも告白するつもりだろ〉
「さすがお兄ちゃん、分かってるね!」
そんなこと分かりたくないが、ここまで分かりやすくおねだりされたら嫌でも分かってしまうだろう。
〈......とりあえず、今里命が、告白できればいいんだろ? 幸い水野は俺が一人っ子ということを知らない。妹からだと言って、普通にラブレターでも渡したらどうだ?〉
「キャー、古典的で恥ずかしい方法!」
〈嫌なら良いんだぞ〉
「やらせて頂きます」
すると、ミコトはスマホを取り出し、生成AIで何やら描き出した。
〈何描いてるんだ?〉
「私の姿描いてるの。自分の顔のイメージくらいあるからね。うん、出来た、ソックリ!」
出来た画像は、ショートカットで少し背が低い快活そうな女の子だった。淡いピンクのワンピースと白い帽子がよく似合っている。
〈へえ、お前結構可愛いじゃんか。母さんに目元が似てるな〉
「少し盛ったけどね。これで、顔とメッセージは届くね。あとは......」
ミコトは俯いて、「実在すれば完璧、なんだけどな」と呟いた。
「み、水野クン......」
「どした、今里? お前なんか今日変じゃね?」
「いや、ちょっと紹介したい奴がいてさ。俺の妹なんだけど......」
ミコトは、自分の似顔絵の画像と、ラブレターを差し出した。
「お前の妹? へえ、そうは思えないな。ずいぶん可愛いじゃないか!」
「え!? ホント!?」
「なんでイジられて喜んでんだよ?」
「あ、いや、コレは......」
「でも、惜しいな。俺、告白は自分からする奴が好きなんだ。古いって思われるかもしれないけどな」
「え!? そ、そんな......」
あんまりだ。ミコトはちゃんと自分で告白したじゃないか!
「それに、生成AIって......せめて写真にしろって妹さんに言っといてくれ。悪いな」
〈てめえ、水野! ミコトは写真が撮れないんだから仕方ないだろうが!〉
「ごめん、水野。妹が気分害して悪かった」
〈ミコト、代われ、一言言ってやる!〉
「水野は何にも悪くないもんな。気にしないでくれ」
水野は悪くない。それは、そんなことは分かっている。まさか相手が幽霊だなんて思ってもいないんだから。でも、ミコトの気持ちはどうなる?
ミコトは誰もいないところに来ると、泣き始めた。
「お兄ちゃん、失恋って、こんなに辛いんだね。野中先輩のことイジってごめんね」
〈そんな事気にしてたのか、バカだな。俺のはタダの下心だから良いんだよ〉
......本当は俺だって本気で野中先輩のことを好きだった、とは言えなかった。ミコトにはバレてるかも知れないが。ミコトの恋の儚さを思って、俺ももらい泣きした。