痛み
「さてと、そろそろお兄ちゃんに恩返しと行きますか!」
そう、期末テストは今日もあるのだ。
〈お前、勉強なんか出来るのか?〉
「そりゃあ、頭はお兄ちゃんのを借りてるし、双子だよ? そんなにできるわけ無いよね!」
〈明るく言うことかよ〉
「でも、メンタルはバッチリだよ。昨日邪魔した分、補習回避はしてあげるからね」
期末テストの間中、俺は律儀に黙っていた。頭の中でアドバイスを送るのは、なんだかカンニングみたいで気が引けたからだ。なので、何時間もぼーっとせざるを得なかった。ミコトは頑張って問題に取り組み続けている。何だかんだ言って良い妹だ。産まれて来れなかった分、少しでも俺の人生分けてやるか、などと考えていると、いつの間にか眠ってしまった。
変な話だが、目が覚めると、俺は女子と話をしているところだった。もちろん、実際に話をしているのはミコトだ。
「へえ、折口って料理上手いんだ、今度俺にも教えてくれよ」
「やだ、今里くんそれ誘ってんの?」
「悪いか?」
「悪い」
普段の俺を完コピするのは良いが、こんなマヌケな振られ方まで完コピしなくていい。ミコトは女子とも話したいだけなのだろうが。
〈ミコト、テストどうだったんだよ〉
「楽しかったよ、やっぱり何かに全力で打ち込むのは良いよね」
結果は、推して知るべしだな。
「ところでお兄ちゃん、寝すぎだよ? もう三時間くらい経ってるんだけど」
〈あれ、もうそんなになるのか? 疲れてるのかな? 眠気が取れなくて〉
そろそろ部活か。この暑い中、ミコトに球拾いさせるのはちょっと気が引けるな。
〈ミコト、そろそろ一旦代われ、球拾いは俺がやるから〉
「えー、私は絶好調だよ、どんどん力が湧いてくる感じ。球拾いでもなんでも任せて! 今日一日は頑張りたいの!」
〈仕方ないな、キツくなったら代われよ〉
ミコトの身のこなしは、まあまあだった。さすが俺の妹なことだけはある。ゴロを軽々捌いて、フライを捕りに行った時......
「痛ッ!」
ミコトは派手にコケた。少し足首をひねったようだ。
「痛い痛い、死んじゃう!」
初めての怪我にしては相当痛いだろう。
〈代われミコト〉
「ダメ、変わったらお兄ちゃんが痛いじゃん!」
〈良いから代われ、俺なら平気だから〉
ミコトはしぶしぶ交代した。
「痛ッてえ!?」
思いの外、足のケガは重傷だった。受け身が全く取れなかったからだろう。捻挫していた。
〈だから痛いって言ったのに〉
「うるせえ、ちょっと驚いただけだよ。こんなのケガのうちに入るか」
〈おーっと今里痩せ我慢はいけません〉
「その実況、トラウマだから二度とやらないでくれ」
〈ごめん、つい〉
「まあ、捻挫って言っても、一週間もすれば治るだろう。その間部活サボれるしな。期末も終わったから夏休みだ。どこか行きたい所あるか?」
〈夏と言えば海でしょ!〉
「泳げないぞ、この足じゃ」
〈泳ぐだけが海じゃないよ、私一度行ってみたかったんだ〉
「分かったよ。一緒に海に行こう」
〈二人っきりで?〉
「嫌か?」
〈ううん、行きたい!〉