女性は男性配属高校以外の高校にあまり興味はありません。なぜなら、そこに男性がいないからです。
次の日になった。
今日は学校がある。
1日経ったくらいじゃこのアザは消えない。でかめの湿布を貼り、寝違えたことにしたら、たぶん大丈夫だろう。そう思っていた。
ふと、なんとなく窓から外を見たら、アイツらがいた。3人セットで。暇なのかな。咲良は学校行っていないからアレだけど、母達は仕事あるでしょ。
目が合い、向こうはこちらに手を振っている。
⋯⋯うん
見なかったことにして、カーテンを閉める。
サイレントモードの弊害が出ていたか。家族用のスマホを確認する。
『窓の外見て♥️』
が届いていた。なるほど。どうやら、そういうことらしい。
なんで昨日行ったのに今日来るんだよ。わけがわからない。
⋯⋯昨日見れなかったスマホ。
隠しているかもしれないアザ。
なるほどね。
わかったわ最悪。
『準備するから1時間は待って』
『ダメ♥️今すぐ⋯⋯』
とりあえず、待ってもらうようメールをする。なんか、すぐに返信が来たような気がするが僕は何も見ていない。
ほら、スマホから通知音がしていない。大丈夫だ!
さて、今からシャワーでも⋯⋯いや、湯船に浸かろう。時間はたくさんある。
風呂から上がったら、朝はちょっと豪華な料理を作ろう。
そうしよう。
僕は風呂掃除から始めた。
――――――――――――――――――――――
朝からなんでこんな憂鬱な気分にならなければならないのか。
教室の扉を開ける。
中を見ると、太郎はいつものように気だるげに本を読んでいた。
「あ、今日は遅かったね。御形が彼女からの鬼電でいなくなったから暇だ⋯ったん、だ⋯」
彼は本から顔を上げ、僕の首元に視線を注ぐ。アイツらのせいで隠せなかったからね。
「あー⋯とりあえず、おめでとう?」
「違うから。勘違いだから」
「勘違いって。それを虫刺されは無理があるよ」
「だから違うって」
彼の言葉を否定しつつ、席につく。疑いの目はまったく消えない。
「で?相手は誰?橘?」
なんなら、こう言ってくる始末。
「橘はこんなことしないよ。⋯⋯従姉妹だよ。言ったことあったよね」
家の愚痴は何度もしたことあるし、逆にむこうの家の愚痴も何度も聞かされた。むこうはむこうで大変そう。こっちも負けてないけどね。
「⋯⋯ちょっと待ってね。想像の真反対すぎて混乱してるから」
えー、そう言われたらなぁ。
さらに混乱させたくなるよね。
「ちょッ、チョッ、ちょ。え?なんで、ズボン脱ぐの!?今度は何!?」
「え?足に隠した湿布を取るため」
「いや、カバン使いなよ!そんなことする必要ないじゃん!」
「手荷物検査されるからね。上半身に隠しても、手触りでバレるから、下半身しかなかったんだ⋯⋯」
本当にバレないかヒヤヒヤした。しかも、なぜかすっごく不機嫌だった。荷物とかスマホとかいつも以上に見られたし。
なぜかね、なぜか。理由考えたら、僕が悪くなるから、なぜか。
いやぁ、朝から僕に会えるというのに、本当に不思議だ。
「あー⋯今日の朝だったんだ、それ」
「だいたい、そんな感じ」
アザは昨日のだから、少し違うけど訂正するほどのことでもない。今日も色々あったし。
「落ち着いた?」
「まったく」
まぁ、さらに混乱させたから当たり前か。この間に湿布でも貼るか。
しばらく待つと整理がついたのか、彼の方から話しかけてきた。
「はぁ、お待たせ。てか、隠すの雑すぎない?」
「雑すぎる方が、アレを隠してるなんて思われにくそうじゃん?」
「めちゃくちゃ目立ってるけどね。剥がしてなんて言われたらどうする?」
「⋯⋯その時は、その時さ」
言われるかな、言われそうだな。ハハハ。
「隠さずに行った方がいいと思うよ。特に橘とか隠し事マジで嫌いだから」
「えー、でもなぁ」
それができたら苦労はしない。怖いんだよ、このアザをつけて食堂行くのが!
「聞いてないけど、たぶん君には落ち度はないんでしょ?なら、ちゃんと説明したら納得してくれるよ」
「聞く?」
「⋯⋯遠慮しておくよ。給食、食べる前に胃もたれしちゃうから」
「愚痴くらい聞いてよ」
「それは愚痴じゃなくてテロだよ」
テロ?
⋯⋯うん、テロか。
でも、そう考えると僕はテロ以上のことをされたのか。よく、生きてるな。死ぬようなことはされてないけど。
「はぁ、給食嫌だなぁ。行きたくない」
「愛しの彼が他の女のキスマークつけてる方が嫌じゃない?週末、デートした人もいるのに」
「⋯⋯なんで、知ってるの?言ってなかったよね」
「橘からちょっとね。服装の相談とかされたし」
「え?そんなやりとりしたの?」
「まぁね。君の前だと冷静を装ってるけどさ、わりと乙女よ」
「へぇ、そうなんだ」
乙女な橘。
ダメだ、まったく想像つかない。逆に気になってきた。
「とりあえず、それ剥がしなよ」
「無理無理、剥がせない」
「剥がしたほうがいいってわかってるでしょ?」
「わかってるけどさ。勇気が⋯⋯」
僕狙いの子、全員にこのアザを見られて、問い詰められる。軽く死ねるな。
「えい」
「ちょッ」
アイツの手が、僕の首元にのびる。
「えい」
「ちょッ、まッ、ああ!」
湿布が剥がされる。急すぎて、ガードできなかった。
まだだ、まだ粘着力が少し落ちただけで使えるはずだ。確認したら、粘着面がグチャってくっついている。もう使えないな。チクショウガ。
「どう?ボクからの勇気のプレゼントは」
「最悪だね」
「気に入ってくれたようで、なにより」
アイツは面白そうに笑う。そっちは楽しそうでいいよね。見てるだけでいいんだもん。
「まぁ、まだ給食まで1時間以上あるんだから、心の準備はできるでしょ」
「1週間はほしいね」
「覚悟できてない。その頃には消えてんじゃん」
本当は、それくらい学校休みたいんだけどなー。でも、理由もないのにそんな長期間学校休んだら、罰あるだろうからなー。
ああ、憂鬱だ。咲良の悪魔のような笑顔が頭に浮かんだ。