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女子生徒が食堂に入場できるのは4限終わり10分前からです。なお、授業を受けず給食にだけ出席することはできません。

食堂にこれほどまでに行きたくないと思ったのは初めてかもしれない。

時刻は4限が終わる15分前。不安すぎて、教室から出るのが少し遅くなってしまった。少数ではあるが女子ともすれ違ったし。

あと10分遅かったら、廊下は女子で埋め尽くされていただろう。

ピーク終わった後に来るという手もあるんだけど、それはそれで出遅れ組と鉢合わせるから、あまり好きではない。

「じゃあ、あとはがんばってね」

そう言って太郎と分かれる。

ウジウジしている僕をここまで引っ張ってきてくれた。感謝はしよう。だが、感謝より恨む気持ちが強くなってしまうのは、仕方ないけど許してくれ。

自分の席に着く。

男子はまばらではあるけど、そこそこ集まってきてはいる。女子はまだいない。

時計はもうすぐ10分前を指す。今日もまた席取り合戦が勃発するのだろう。

ドタバタと足音が聞こえた。




――――――――――――――――――――――



⋯⋯空気が悪い。

橘はまだ来ていない。けれどかわりと言っていいのか、急いで来た女子が僕の周りを囲んでいた。そして、全員が僕の首元を見ている。

いつも笑っている女子達の顔は、恐ろしい程無表情で、様々な感情が渦巻いているのが、肌で感じられる。

「これはね――」

「言わなくていいよ。もうすぐ、あの子が来るから。本人の口から直接聞かないとね」

違います!橘は無関係なんです!

なんて言えるわけもなく女子に威圧され、縮こまるしかできることがない。

確かに、こんなことができるの学校だと橘くらいだけどさ。ちょっと早合点すぎない?

橘はこんなことしない。するとしても、服で隠れて見えない位置にする。それはそれで嫌だな。

彼女達に詰められる御形の気持ちが少しだけわかった気がする。

「見せつけるように、つけるなんてホント性格悪い」「私達そんなことできないですよ」「橘さん、頭はいいのに、こうゆうとこあるよね」

橘の悪口なんだろうけど、ごめん実行者別だから何とも思わない。ああでも、性格悪いのは同意する。

仮にも想い人を陥れようとするのは、性格が悪い以外なにものでもないからね。

やってもいないことで悪口を言われる橘も可哀想だけど、まぁ普段の行いが悪いから仕方ないか。

「なんの話をしているのですか?私の名前が聞こえたのですが」

ようやく橘が来た。週末にデートをしたからか機嫌が良さそうだ。すぐに悪くなると思うけど。

「あ、やっと来た。遅かったね」

真海さんが橘に声をかける。前回の仕返しか嫌みたっぷりで。ただ、来るのが遅かったのか僕から席が離れているので格好はついていない。なんなら、少しダサい。

それでも、女子達の視線が橘に集まる。先ほどの言葉と殺意が入り混じった目に違和感でも感じたのか、橘は目をスッと細める。

「どうかしましたか?」

デートのことがバレたのかな。そのくらいの認識で橘は問いかける。実際にはバレてないし、そのことは口に出さないでくれ。もっとカオスになる。

「どうかしましたか?どうかしてるのは貴方でしょ。あんな痕を見せつけちゃって、自慢のつもり?」

「⋯⋯痕?そんなものは――」

「知らないふり?春野くんの首元見て。これでも、言い訳するの?」

そこでようやく、ことの原因を理解し、目のハイライトが消える。ベンタブラックより黒い。

「私、そんなことしてないですよ。⋯⋯春野くん、誰にされたんですか?」

橘は怒鳴ったり、わかりやすく怒るようなことはしなかった。ただひたすらに、声が冷たかった。

そこでようやく、真海さん達は橘が犯人ではないと悟る。遅いよ。

「従姉妹だよ。言ったことあるよね」

なるべく、平然を装って発言する。それでも、声が震えてしまう。これで、少しは納得してもらえればいいが、はたして。

「⋯⋯ああ、あの子ですか」

嫌悪が混じった低い声。

その嫌悪が、僕ではなく咲良のものでありますように。

ハイライトは少し戻った。今は黒色無双くらい。けれど、まだ声は冷たい。

あと、真海さん達が新しいライバル登場かって殺気立ってるから怖い。できることなら、咲良はライバルではなくモブにしたい。無理だろうけど。

「断れなくて、無理矢理。しかも、隠すなって湿布とかも没収されちゃって、⋯⋯勘違いさせてごめんね」

おおむね真実。嘘は言っていない。

「いえ、大丈夫です。あなたの家庭については理解しているつもりなので」

「そうなの?」

「はい」

「そっか。じゃあ、文化祭はたぶん家族に連れ回されると思うんだけど、これも理解してくれるんだよね」

買収条件を破ってしまうけど、大丈夫だろう。だって、理解してくれるって言ったんだもん。罰はやめてね、僕は悪くない。

「⋯⋯そうですか。それが、週末デートした女の子に言う言葉ですか?」

「「「「は?」」」」

ごめんなさい。ここでカミングアウトしないでください。僕が悪かった。

やめてよ。真海さん達、やっぱり敵か、みたいな目で橘見てるじゃん。僕もマズイけど、君もだからね。

「ねぇ、デートってどういうこと?それ、知らないやつのキスマークより重いよ」

「普通のデートですよ。約束してたんです。どこか行こうって。⋯⋯そうですね。あーんとか膝枕とかしましたね」

「いや、あーんはしてない。あと、そこで言うなら、どこに行ったかだから」

「⋯⋯膝枕は認めるんだね」

言質を取られた。なんで味方であるはずの、橘から揚げ足を取られなければいけない。穏便に終わらせようよ。

「ええ、春野くんの寝顔、可愛かったですよ」

火に油を注がないでください。

結局、給食は地獄のような空気で終わった。ただ、彼女達のボディタッチが多かった気がする。それは、甘んじて受け入れよう。

受け入れるほうが楽なんだよ。暴走したら止められない。

それに咲良のヤツよりはマシだし。アレするとかだったら全力で逃走するけど。

今日の給食は乗り越えたけど、明日以降もギスギスするんだろうな。

全部、咲良が悪い。

責任転嫁、最高!
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女子生徒が食堂に入場できるのは4限終わり10分前からです。なお、授業を受けず給食にだけ出席することはできません。

食堂にこれほどまでに行きたくないと思ったのは初めてかもしれない。

時刻は4限が終わる15分前。不安すぎて、教室から出るのが少し遅くなってしまった。少数ではあるが女子ともすれ違ったし。

あと10分遅かったら、廊下は女子で埋め尽くされていただろう。

ピーク終わった後に来るという手もあるんだけど、それはそれで出遅れ組と鉢合わせるから、あまり好きではない。

「じゃあ、あとはがんばってね」

そう言って太郎と分かれる。

ウジウジしている僕をここまで引っ張ってきてくれた。感謝はしよう。だが、感謝より恨む気持ちが強くなってしまうのは、仕方ないけど許してくれ。

自分の席に着く。

男子はまばらではあるけど、そこそこ集まってきてはいる。女子はまだいない。

時計はもうすぐ10分前を指す。今日もまた席取り合戦が勃発するのだろう。

ドタバタと足音が聞こえた。




――――――――――――――――――――――



⋯⋯空気が悪い。

橘はまだ来ていない。けれどかわりと言っていいのか、急いで来た女子が僕の周りを囲んでいた。そして、全員が僕の首元を見ている。

いつも笑っている女子達の顔は、恐ろしい程無表情で、様々な感情が渦巻いているのが、肌で感じられる。

「これはね――」

「言わなくていいよ。もうすぐ、あの子が来るから。本人の口から直接聞かないとね」

違います!橘は無関係なんです!

なんて言えるわけもなく女子に威圧され、縮こまるしかできることがない。

確かに、こんなことができるの学校だと橘くらいだけどさ。ちょっと早合点すぎない?

橘はこんなことしない。するとしても、服で隠れて見えない位置にする。それはそれで嫌だな。

彼女達に詰められる御形の気持ちが少しだけわかった気がする。

「見せつけるように、つけるなんてホント性格悪い」「私達そんなことできないですよ」「橘さん、頭はいいのに、こうゆうとこあるよね」

橘の悪口なんだろうけど、ごめん実行者別だから何とも思わない。ああでも、性格悪いのは同意する。

仮にも想い人を陥れようとするのは、性格が悪い以外なにものでもないからね。

やってもいないことで悪口を言われる橘も可哀想だけど、まぁ普段の行いが悪いから仕方ないか。

「なんの話をしているのですか?私の名前が聞こえたのですが」

ようやく橘が来た。週末にデートをしたからか機嫌が良さそうだ。すぐに悪くなると思うけど。

「あ、やっと来た。遅かったね」

真海さんが橘に声をかける。前回の仕返しか嫌みたっぷりで。ただ、来るのが遅かったのか僕から席が離れているので格好はついていない。なんなら、少しダサい。

それでも、女子達の視線が橘に集まる。先ほどの言葉と殺意が入り混じった目に違和感でも感じたのか、橘は目をスッと細める。

「どうかしましたか?」

デートのことがバレたのかな。そのくらいの認識で橘は問いかける。実際にはバレてないし、そのことは口に出さないでくれ。もっとカオスになる。

「どうかしましたか?どうかしてるのは貴方でしょ。あんな痕を見せつけちゃって、自慢のつもり?」

「⋯⋯痕?そんなものは――」

「知らないふり?春野くんの首元見て。これでも、言い訳するの?」

そこでようやく、ことの原因を理解し、目のハイライトが消える。ベンタブラックより黒い。

「私、そんなことしてないですよ。⋯⋯春野くん、誰にされたんですか?」

橘は怒鳴ったり、わかりやすく怒るようなことはしなかった。ただひたすらに、声が冷たかった。

そこでようやく、真海さん達は橘が犯人ではないと悟る。遅いよ。

「従姉妹だよ。言ったことあるよね」

なるべく、平然を装って発言する。それでも、声が震えてしまう。これで、少しは納得してもらえればいいが、はたして。

「⋯⋯ああ、あの子ですか」

嫌悪が混じった低い声。

その嫌悪が、僕ではなく咲良のものでありますように。

ハイライトは少し戻った。今は黒色無双くらい。けれど、まだ声は冷たい。

あと、真海さん達が新しいライバル登場かって殺気立ってるから怖い。できることなら、咲良はライバルではなくモブにしたい。無理だろうけど。

「断れなくて、無理矢理。しかも、隠すなって湿布とかも没収されちゃって、⋯⋯勘違いさせてごめんね」

おおむね真実。嘘は言っていない。

「いえ、大丈夫です。あなたの家庭については理解しているつもりなので」

「そうなの?」

「はい」

「そっか。じゃあ、文化祭はたぶん家族に連れ回されると思うんだけど、これも理解してくれるんだよね」

買収条件を破ってしまうけど、大丈夫だろう。だって、理解してくれるって言ったんだもん。罰はやめてね、僕は悪くない。

「⋯⋯そうですか。それが、週末デートした女の子に言う言葉ですか?」

「「「「は?」」」」

ごめんなさい。ここでカミングアウトしないでください。僕が悪かった。

やめてよ。真海さん達、やっぱり敵か、みたいな目で橘見てるじゃん。僕もマズイけど、君もだからね。

「ねぇ、デートってどういうこと?それ、知らないやつのキスマークより重いよ」

「普通のデートですよ。約束してたんです。どこか行こうって。⋯⋯そうですね。あーんとか膝枕とかしましたね」

「いや、あーんはしてない。あと、そこで言うなら、どこに行ったかだから」

「⋯⋯膝枕は認めるんだね」

言質を取られた。なんで味方であるはずの、橘から揚げ足を取られなければいけない。穏便に終わらせようよ。

「ええ、春野くんの寝顔、可愛かったですよ」

火に油を注がないでください。

結局、給食は地獄のような空気で終わった。ただ、彼女達のボディタッチが多かった気がする。それは、甘んじて受け入れよう。

受け入れるほうが楽なんだよ。暴走したら止められない。

それに咲良のヤツよりはマシだし。アレするとかだったら全力で逃走するけど。

今日の給食は乗り越えたけど、明日以降もギスギスするんだろうな。

全部、咲良が悪い。

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