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都会には男性専用ショッピングセンターが存在します。ここは数少ない男性の働き場となっております。

男性専用ショッピングセンター

 それは男性とその付き添いで彼女が2人までしか入れない、もし男性と付き合えたら行きたい場所ランキング2位を3年連続で獲得している場所である。

ちなみに1位は家。こっちは1位から陥落したことがない。2位とは倍以上差があるから、これから先も落ちることはないだろう。

 そんなふうに女性からの人気は高いが、実際には店は少ないし、品ぞろえは悪く、ほとんど趣味で運営されている。補助金がなければ成り立っていない。

というか数少ない男性をメインターゲットとしている時点で、商売としては難しい。しかも、その男性もあまり来ない。ここを使うくらいならネットショッピングでいい。

 僕も、買い物気分を味わいたい時しか来ない。確か、前回は1年前だったかな、昔すぎて覚えていない。

 そんな感じで男性からは不人気。あれだよ、女性は絶対に行くことができないから期待と理想だけがどんどん上がっていくやつ。それがここ。

 そんな期待と理想の塊に僕達は向かっている。移動手段はもちろんタクシー。男性割の他にもカップル割もある。カップル割の方がさらにお得。電車とかより安いらしい。

 ただ、車内は運転手の嫉妬じみた目で見てくるから居心地が悪い。一人で乗ると、積極的に僕に話しかけてくるのに、今は一人でブツブツつぶやいている。呪詛が混じってそうで、少し怖い。事故だけは起こさないでね。

 橘がキュッとくっついてくる。運転手に見せつけるように。橘にしては珍しく、積極的。

 やんわりと引き離そうとしたら、運転手が叫びながらタクシーが急加速する。法定速度は超えたと思う。

 橘は笑っている。この状況を楽しんでやがる。僕は事故になりそうで、震えてるというのに。スピード落として!怖い!

 ギャァァァ!

 ―――――――――――――――――――――――



「うぷっ」

 結果としては事故は起こらなかった。ただ、めちゃくちゃ酔った。タクシーで酔うってなに。

 今は、男性専用ショッピングセンターのベンチの上。もっと言ったら橘の膝の上だ。酔った元凶が一番得をしている。ふざけんな。

 少し休憩したいと言ったらこれだ。デート中だから甘んじて受け入れるしかない。契約違反だなんだと、もっと酷いことを要求されたら目もあてられない。

けれど、したらしたで周りから微笑ましいカップルみたいな目で見られるのが地味に嫌だ。

 ただ、この視線はまだマシ。男性専用ショッピングセンターの中だからね。外でこんなことしたら、最悪嫉妬で橘が刺される。

「大丈夫ですか?ゆっくり休んでくださいよ」

 口元が嬉しそうに少し歪んでいる。そのことに文句の一つでも言いたいところだが、あいにくその気力すらない。

幸いと言っていいのかわからないが、早めの集合と爆速のタクシーのおかげ(?)で、時間には余裕がある。

「30分くらいしたら起こして」

「わかりました。おやすみなさい」

 目を閉じると、頭を撫でられたような感触がした。それが、僕を深い眠りへといざなう。

 寝顔は撮られませんように、そう祈って、眠りに落ちた。


 ――――――――――――――――――――――

「おはようございます」

 僕が起きたと認識するより先に橘の声が聞こえた。起こされたはずなのに不思議と不快感はない。元々起きそうな感じだったのだろう。

「おはよう。ありがとね」

「いえいえ、役得でしたよ」

 そうだろうね。膝枕から起き上がり、スマホで時間を確認する。寝る前に見た時間より1時間は軽く過ぎている。

「だいぶ時間が経ってるね」

「そうですね。寝顔が可愛くて、つい起こすのを忘れていました」

 橘が笑う。まぁ、見るよね。写真も撮られてそう。これに関しては諦めるしかない。ちょっとした申し訳なさもあるし。

「せっかく予定とかしっかり組んでたのに、ごめんね」

「別にいいですよ。それ以上のものをもらいましたし。さてと、行きましょうか。昼食の予約時間から考えて、行けて2箇所ですかね」

「そうだね」

 ここにはそんないい店はないけど、行くとしたらマネキンばっかな服屋か娯楽本しかない本屋だな。その2つが一番マシ。

 そう考えてベンチから立つ。橘もベンチから立とうとして、また座る。あれ?

「すみません。足が痺れて」

 痛みのせいか少し顔をしかめている。

 ⋯⋯仕方ないか。そりゃあ、1時間膝枕したら足の1つや2つ痺れるよね。2つは全部じゃね?というツッコミは置いといて。

「グダグダだね」

「こういう日もありますよ」

 ため息を吐きつつ、ベンチに戻る。なんとしてでも行きたい場所でもない。足の痺れが治るまで待つことにしよう。

 とりあえず、その間は。

「膝枕でもしてもらいながら待つか」

「うれしいのですが、やめてください」

 足の痺れなんて、自覚した後が一番キツイ。正座を崩した後に、もう一度正座できないみたいな感じ。

 痺れているだろう太ももを指でつつく。いつも負けている橘に仕返しできて、ちょっと楽しかった。

 そのせいでか時間がなくなり一箇所しかまわれなくなった。安い、お釣り頂戴。


 ―――――――――――――――――――――――


 少しの話し合いの結果、目的地はここになった。

 洋服屋「エデン」。ここは男性専用ショッピングセンターの中で一番まともな店だ。マネキンだらけなことには目をつぶりつつ。

 前回来た時より増えてるな。一年前だからあまり覚えてないけれど、明らかに違うと分かるくらいにはマネキンが増えている。

 まさにマネキンの楽園。

「いらっしゃいませー」

 やる気を微塵も感じられない男性店員の声。ファッション誌を開き、接客のセの字も感じられない姿。あ、これ店長ね。

 これだよ、コレ。ようやく、ここに来た実感が湧いてくる。

 ここ男性専用ショッピングセンターは、男性が安心して働ける数少ない場所の1つ。男性とパートナー持ちの女性しか働けない。しかも、運営は男性がするから、やる気の差で店の出来が激しい。

 まぁ、ここの店長やる気ないけど。したいことしかしない。

「何度見ても慣れませんね。男性が働いているところは」

「そう?僕はそんなことないけど」

「⋯⋯男性に共感を求めた私がバカでした」

 橘は呆れたように息を吐く。そこまで驚く?確かに働く男性なんてここ以外じゃほとんど見ないけど。

 さて、話は戻るがここエデンの一番の魅力はたくさんのマネキンにある。ここの店長はどうやらコーディネートが好きらしくて、できたコーデをマネキンに着せていってるそうだ。

 ちなみに、今の店長のコーデは白Tにジーンズ。自分のコーデを着ろと言いたくなる。

 それが100着以上。僕達は今、ファッションショーを観に来た観客みたいなものだ。ちなみに、変な服は一切ない。そんなファッションショーの悪い所まで反映されてない。あと、マネキンがスペースをとるせいで服がたくさんあるという洋服屋の良い所も反映されていない。なんだこの店。

 橘と寄り添って歩く。時間はあまりないから少し早歩きで。マネキンはどれもいい衣装で、つい欲しくなる。この後も予定があるから、荷物になる物は買えないんだよな。デートじゃなかったら何か買ってた。

 そんなことを考えながらマネキンの間を進む。これはいい、あっちもいい、ダラダラとしゃべりながら。数は多いけれど、1体1体にかかる時間は短く、あっという間に見終わってしまう。

 たぶん、普通の洋服屋だったらこの3倍の時間がかかってたと思う。なお、ナンパ時間は除いてあります。やっぱ、この店しかないわ。選り好んでられない。

「そういえば⋯」

 服を見ていたからか、今日合流してから言っていなかった言葉が思い浮かんでくる。『ごめん、待った?』の次くらいにでてくるデートの決まり文句。

「服、似合ってるね」

 決まり文句ではあるけれど、心からそう思っている。

 橘は少し驚いたように目を丸くして、すぐに今さらですか?と言いたげに表情を変える。それも、まばたきの間に崩れて

「ありがとうございます」

 今日一番の笑顔が咲いた。
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男性は基本的にタクシーを移動手段として使用します。なお、徒歩だとナンパで前に進めなくなる場合があります。
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男性と外食をする場合は個室をおすすめします。2人きりになれるからではありません。
男女比が壊れた世界のブラックな日常作者:霊兎卯
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都会には男性専用ショッピングセンターが存在します。ここは数少ない男性の働き場となっております。

男性専用ショッピングセンター

 それは男性とその付き添いで彼女が2人までしか入れない、もし男性と付き合えたら行きたい場所ランキング2位を3年連続で獲得している場所である。

ちなみに1位は家。こっちは1位から陥落したことがない。2位とは倍以上差があるから、これから先も落ちることはないだろう。

 そんなふうに女性からの人気は高いが、実際には店は少ないし、品ぞろえは悪く、ほとんど趣味で運営されている。補助金がなければ成り立っていない。

というか数少ない男性をメインターゲットとしている時点で、商売としては難しい。しかも、その男性もあまり来ない。ここを使うくらいならネットショッピングでいい。

 僕も、買い物気分を味わいたい時しか来ない。確か、前回は1年前だったかな、昔すぎて覚えていない。

 そんな感じで男性からは不人気。あれだよ、女性は絶対に行くことができないから期待と理想だけがどんどん上がっていくやつ。それがここ。

 そんな期待と理想の塊に僕達は向かっている。移動手段はもちろんタクシー。男性割の他にもカップル割もある。カップル割の方がさらにお得。電車とかより安いらしい。

 ただ、車内は運転手の嫉妬じみた目で見てくるから居心地が悪い。一人で乗ると、積極的に僕に話しかけてくるのに、今は一人でブツブツつぶやいている。呪詛が混じってそうで、少し怖い。事故だけは起こさないでね。

 橘がキュッとくっついてくる。運転手に見せつけるように。橘にしては珍しく、積極的。

 やんわりと引き離そうとしたら、運転手が叫びながらタクシーが急加速する。法定速度は超えたと思う。

 橘は笑っている。この状況を楽しんでやがる。僕は事故になりそうで、震えてるというのに。スピード落として!怖い!

 ギャァァァ!

 ―――――――――――――――――――――――



「うぷっ」

 結果としては事故は起こらなかった。ただ、めちゃくちゃ酔った。タクシーで酔うってなに。

 今は、男性専用ショッピングセンターのベンチの上。もっと言ったら橘の膝の上だ。酔った元凶が一番得をしている。ふざけんな。

 少し休憩したいと言ったらこれだ。デート中だから甘んじて受け入れるしかない。契約違反だなんだと、もっと酷いことを要求されたら目もあてられない。

けれど、したらしたで周りから微笑ましいカップルみたいな目で見られるのが地味に嫌だ。

 ただ、この視線はまだマシ。男性専用ショッピングセンターの中だからね。外でこんなことしたら、最悪嫉妬で橘が刺される。

「大丈夫ですか?ゆっくり休んでくださいよ」

 口元が嬉しそうに少し歪んでいる。そのことに文句の一つでも言いたいところだが、あいにくその気力すらない。

幸いと言っていいのかわからないが、早めの集合と爆速のタクシーのおかげ(?)で、時間には余裕がある。

「30分くらいしたら起こして」

「わかりました。おやすみなさい」

 目を閉じると、頭を撫でられたような感触がした。それが、僕を深い眠りへといざなう。

 寝顔は撮られませんように、そう祈って、眠りに落ちた。


 ――――――――――――――――――――――

「おはようございます」

 僕が起きたと認識するより先に橘の声が聞こえた。起こされたはずなのに不思議と不快感はない。元々起きそうな感じだったのだろう。

「おはよう。ありがとね」

「いえいえ、役得でしたよ」

 そうだろうね。膝枕から起き上がり、スマホで時間を確認する。寝る前に見た時間より1時間は軽く過ぎている。

「だいぶ時間が経ってるね」

「そうですね。寝顔が可愛くて、つい起こすのを忘れていました」

 橘が笑う。まぁ、見るよね。写真も撮られてそう。これに関しては諦めるしかない。ちょっとした申し訳なさもあるし。

「せっかく予定とかしっかり組んでたのに、ごめんね」

「別にいいですよ。それ以上のものをもらいましたし。さてと、行きましょうか。昼食の予約時間から考えて、行けて2箇所ですかね」

「そうだね」

 ここにはそんないい店はないけど、行くとしたらマネキンばっかな服屋か娯楽本しかない本屋だな。その2つが一番マシ。

 そう考えてベンチから立つ。橘もベンチから立とうとして、また座る。あれ?

「すみません。足が痺れて」

 痛みのせいか少し顔をしかめている。

 ⋯⋯仕方ないか。そりゃあ、1時間膝枕したら足の1つや2つ痺れるよね。2つは全部じゃね?というツッコミは置いといて。

「グダグダだね」

「こういう日もありますよ」

 ため息を吐きつつ、ベンチに戻る。なんとしてでも行きたい場所でもない。足の痺れが治るまで待つことにしよう。

 とりあえず、その間は。

「膝枕でもしてもらいながら待つか」

「うれしいのですが、やめてください」

 足の痺れなんて、自覚した後が一番キツイ。正座を崩した後に、もう一度正座できないみたいな感じ。

 痺れているだろう太ももを指でつつく。いつも負けている橘に仕返しできて、ちょっと楽しかった。

 そのせいでか時間がなくなり一箇所しかまわれなくなった。安い、お釣り頂戴。


 ―――――――――――――――――――――――


 少しの話し合いの結果、目的地はここになった。

 洋服屋「エデン」。ここは男性専用ショッピングセンターの中で一番まともな店だ。マネキンだらけなことには目をつぶりつつ。

 前回来た時より増えてるな。一年前だからあまり覚えてないけれど、明らかに違うと分かるくらいにはマネキンが増えている。

 まさにマネキンの楽園。

「いらっしゃいませー」

 やる気を微塵も感じられない男性店員の声。ファッション誌を開き、接客のセの字も感じられない姿。あ、これ店長ね。

 これだよ、コレ。ようやく、ここに来た実感が湧いてくる。

 ここ男性専用ショッピングセンターは、男性が安心して働ける数少ない場所の1つ。男性とパートナー持ちの女性しか働けない。しかも、運営は男性がするから、やる気の差で店の出来が激しい。

 まぁ、ここの店長やる気ないけど。したいことしかしない。

「何度見ても慣れませんね。男性が働いているところは」

「そう?僕はそんなことないけど」

「⋯⋯男性に共感を求めた私がバカでした」

 橘は呆れたように息を吐く。そこまで驚く?確かに働く男性なんてここ以外じゃほとんど見ないけど。

 さて、話は戻るがここエデンの一番の魅力はたくさんのマネキンにある。ここの店長はどうやらコーディネートが好きらしくて、できたコーデをマネキンに着せていってるそうだ。

 ちなみに、今の店長のコーデは白Tにジーンズ。自分のコーデを着ろと言いたくなる。

 それが100着以上。僕達は今、ファッションショーを観に来た観客みたいなものだ。ちなみに、変な服は一切ない。そんなファッションショーの悪い所まで反映されてない。あと、マネキンがスペースをとるせいで服がたくさんあるという洋服屋の良い所も反映されていない。なんだこの店。

 橘と寄り添って歩く。時間はあまりないから少し早歩きで。マネキンはどれもいい衣装で、つい欲しくなる。この後も予定があるから、荷物になる物は買えないんだよな。デートじゃなかったら何か買ってた。

 そんなことを考えながらマネキンの間を進む。これはいい、あっちもいい、ダラダラとしゃべりながら。数は多いけれど、1体1体にかかる時間は短く、あっという間に見終わってしまう。

 たぶん、普通の洋服屋だったらこの3倍の時間がかかってたと思う。なお、ナンパ時間は除いてあります。やっぱ、この店しかないわ。選り好んでられない。

「そういえば⋯」

 服を見ていたからか、今日合流してから言っていなかった言葉が思い浮かんでくる。『ごめん、待った?』の次くらいにでてくるデートの決まり文句。

「服、似合ってるね」

 決まり文句ではあるけれど、心からそう思っている。

 橘は少し驚いたように目を丸くして、すぐに今さらですか?と言いたげに表情を変える。それも、まばたきの間に崩れて

「ありがとうございます」

 今日一番の笑顔が咲いた。
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次の話男性と外食をする場合は個室をおすすめします。2人きりになれるからではありません。
男女比が壊れた世界のブラックな日常作者:霊兎卯
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