男性は国が指定した男性配属高校に通います。 なお、女性の倍率は20を超えます。
僕は女の人が苦手だ。
なぜって聞かれると、うまく説明できる気はしない。それでも、苦手だということがはっきりしている。
それでも頑張って言葉にするのなら、僕はそれほど価値のある人間ではない、といった感じだと思う。
自分で言うのもなんだけど、僕はイケメンじゃない。中の下、多めに見積もっても中の中くらいしかない。
ちなみに、女装した彼は上の上。なんなら特上だ。
彼だったり、イケメンがモテるのはわかる。でも、僕のような普通の人に釣り合いの取れないような美人が寄ってくる。
ただでさえ綺麗な人が、髪を整え、化粧をし、頭脳は国内トップクラス。そんな人が僕を好きだと言う。もはや、笑うことしかできない。
僕は今まで努力というものをしたことがない。だから、彼女達がどれだけ頑張っているのかを理解することはできない。
だけど、一つだけわかることがある。
男がもっとたくさんいたら僕はまったくモテないということだ。
だってそうだろう。男の少ない今ですら、上を探せばいくらでもいる。
それなのに僕を選ぶ理由がない。
彼女達が好きなのは僕じゃない。
男が好きなんだ。
彼女達は相手が僕じゃなくても、同じ顔してすり寄るだろう。
だからこそわからないことがある。
なぜ橘彩は僕の隣に座るのか。
指定する権利があるのなら、もっとかっこいい男性の隣に座ったほうがいい。わざわざ僕なんかを選ぶ必要がない。
彼女とは中学の頃からの付き合いになる。それなのに彼女は、なぜ僕の隣に座るのか話すことはない。いつも適当な所ではぐらかされる。
わざわざ難しい男性配属高校に受験し、その中で1年から2年の今まで学年一桁を取り続けている。
はっきり言って、並大抵の努力ではないのだろう。僕には想像すらできない。
想像すらできないけれど、僕には到底その努力に見合うような男には思えない。
だから、彼女が一番苦手だ。
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今日の給食はカレーだった。
食堂の人達がどんどんと配膳していく。
その様子を見ながら、僕は適当に喋っていた。彼女達の話に答えたり、相槌打ったり色々。
橘彩はあまり会話に入らなかった。今日だけ、という訳ではなく普段からあまり入って来ない。
ただ、必死な彼女達の様子を余裕そうに見ている。どうせ貴方は私を選ぶと、言外に言っているようであった。
まぁ、このままいけばそうなるのであろう。僕も強制結婚は嫌なのだ。
とはいえ、彼女のことが好きなのかと聞かれたら、答えに困るのだけれど。
彼女はこういうことをわかってやってくる。
そんな所が苦手だ。
「そういえば春野くん、私バトロン始めたんだ。この前、春野くんやってるって言ってたよね」
少しだけ顔が歪む。
バトロンは僕――春野光輝がやっているFPSゲームだ。僕がこのゲームの戦闘が好きなだけで、大人気ゲームという訳では無い。なんなら平日はランクマにbotが混じるくらいには過疎っている、そんなゲームだ。
別のゲームで当時は真海さんもいなかったけど、中学の時に僕の好きなゲームを聞かれて答えたことがあった。やってくれるなら嬉しいなと、そんな軽い気持ちで。
結論からいえば、その子は、というかその会話を聞いていた子達は、1ヶ月で僕よりそのゲームが上手くなっていた。
考えれば当たり前のことだった。男子と共通の話題ができる、それだけのことで彼女達は必死になるのだ。
だからこそ、このゲームの話題で僕の気を惹きたいんだなと勘ぐってしまう。
「そうだよ。真海さんも始めたんだ」
「うん。だから、春野くんにこのゲームを教えてほしいなぁ」
たぶん、彼女はもうこのゲームについて調べている。調べた上で僕に聞いている。わからないからではなく、僕と話して、一緒に遊ぶ理由が欲しいだけ。少なくとも、僕にはそう見えた。
そもそも、僕はこのゲームについて話す気はなかった。ただ、不用心にも食堂でパッチノートを見ていたのがバレてしまって、泣く泣く話すしかなかったのだ。僕のメインが強化されるという噂もあって気になりすぎたのだ。反省はしている、次はしない。
「ゲーム、ね。私、普段ゲームなんてしないのよね」
珍しく、橘が会話に入ってきた。
「学年3位の君が、ゲームをやってたら別の意味で驚くよ、僕は」
「人を勉強しかしない奴みたいに言わないで。私にも趣味くらいあるわよ」
「読書でしょ。しかも理由が、すきま時間にできて、数時間で終わるから。理由、悲しすぎない?」
「それでも、立派な趣味よ。それに春野だって読書が趣味の一つでしょ」
「一緒にしてほしくないけど、まぁそうだね」
「それなら、最近読んだ本の話をしましょ。ゲームの話なんか置いといて」
ゲームの話が流れる。
隣に座る真海さんから、橘をにらむような視線を感じる。橘はそのことを気にしてすらいない。
そのせいで、さらに橘への当たりが強くなっている気がする。とはいえ、僕が視線を向けても、にらんでいるどころか、何事もなかったかのように笑っている。
隠すの上手いな、真海さんは。
「それならいい本があるよ」
ふと、先ほど読んでいた本が思い浮かんだ。
「『てん⋯⋯」
タイトルを言おうとして、思い出す。タイトルがバチクソ恥ずかしかったことを。そのせいで、少し言いよどむ。
「なによ。別にどもることないでしょ」
橘が責めるような、呆れるような、そんな目で僕を見る。何も考えず、言わなければ良かった。きっと、橘はいまさら無いと言っても許してくれない。
覚悟を決める。
「⋯⋯『転生したから逆ハーレムを作ります』」
「は?」
その日、僕は橘に少し引かれたと思う。内容はいいんだよ、内容は。