ホーム›男女比が壊れた世界のブラックな日常›文化祭の売上の一部は学校に回収されてしまいます。しかし、それを除く金額がクラスに入ります。
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文化祭の売上の一部は学校に回収されてしまいます。しかし、それを除く金額がクラスに入ります。

 まさか、この服をもう一度着ることになるとは。

 肌触りは悪くない。むしろ素材がいいからか、良すぎるくらいだ。前回から一年経っているから、サイズが少し小さいかと思ったが、全然そんなことなかった。

 執事服。いや、燕尾服って言ったほうがいいのかな。違いがわからないから、どっちが正しいか知らないけど。

 男子専用教室を使って、男子達が着替えている。ここは覗かれる心配がなくていい。

 服のクオリティーは人によってマチマチだ。実際に仕事で着てそうなほど完成度が高いものから、コスプレ用のちゃっちいまで様々である。

 僕?

 去年使った橘の私物だよ。無駄にクオリティーが高い。いやでも、コスプレみたいなのを着るよりはこういった本格的なものの方がいいのか。ありがとう橘。1回の文化祭のためにこれ買うのは馬鹿だとは思うけど。

 どれくらい出来がいいのかと言うと、クラスで2番目くらい。一番は御形、たくさんの彼女が出し合って買ったのだろう。

 イケメンは何でも似合うからいいな。僕は衣装に着せられてる感がすごい。高そうだからなおさら。

 荷物はそのまま置きっぱなしで教室を出る。人のものを取るような男子はこの学校にいない。

「あっ、やっと出てきましたか。キツくなったりはしていませんか?」

 この教室から少し離れた所で待っていた橘が声をかけてきた。女子が男子専用教室の近くにいると色々問題だからね。

「全然大丈夫。というか、去年も思ったけどさ、いくらしたのこれ?」

「オーダーメイドなのでそこそこしましたよ。着れてよかったです。着れなかったらもう一着買うことになっていたので」

 へぇ、オーダーメイドか。へぇ。

「⋯⋯そこそこっていくら?」

「聞きたいですか?」

 暗に聞くなと言っているようであった。

 もし、僕が2着目をほしいって言ってたらどうなっていただろうか。橘のことだから絶対に良いものを買うだろうな。これと同じか、それ以上の物を。


 ⋯⋯⋯やめとこう。知らなくていいこともある。

「ダイジョウブです」

 これは戦略的撤退である。決してビビっているわけではない。

「そうですか」

 そこで会話が終わる。会話が終わると周りの景色も見えてくる。

 放課後で文化祭の準備もあるからか廊下は女子生徒であふれている。だからか、視線が集まって気持ちが悪い。

 そりゃそうだ。執事姿の男子がいたら誰だって見る。ただの制服姿でも見られまくるというのに、コスプレしているので尚更。

 橘はそんな視線を見て、笑っていた。自慢なのか、愉快なのか、それとも怒っているのかは僕にはわからなかった。

 そんな視線に耐えながら、ようやく教室に着く。視線からは逃れたけど、こっちはこっちで地獄なんだよな。教室の隅にある大きな箱には目を向けないようにしつつ。

「春野くんは写真に何かこだわりはありますか?なければ私が決めますよ」

 橘が口を開く。
 そう、今日は写真を撮らないといけないのだ。

 シチュボに使うジャケット用とキャスト紹介に使うらしい。そのためにわざわざ執事服に着替えたのだ。

「こだわりはないけど、恥ずかしいのはやめてね」

「薔薇でも持ちますか?かっこいいですよ」

「かっこいいと恥ずかしいは両立するんだよ」

 薔薇なんて僕が持ってもお笑いにしかならない。このクラスだと御形の専用装備だね。少し強そう。

「わがままですね。じゃあ、これはどうですか?」

 そう言って取り出したのは給仕用のポットとティーカップだ。こうゆうのだよ、こうゆうの。シンプルでいい。

「それでいいんですね?うるさくなる前にさっさと撮りましょう」

「わかったよ」

 僕より先に来た人はもう撮影が終わっているのか、撮影スペースが空いていた。わざわざ持ってきたのであろうグリーンバック。ガチである。

「ポーズは私を真似してください」

「こう?」

 ポットを持つ右手は顔より少し下あたり、ティーカップを持つ左手はポットより下だけど下すぎず、体は正面で撮るというよりは少しだけ傾ける。

「いい感じです。あと、細かいですがポットは傾けるように持って、顔は笑顔というよりは微笑む感じでお願いします」

 本当に細かいな。まぁ、言われた通りにするのだけど。

「いいですね。では、お願いします」

「了解」

 その返事とともに写真部の女子がカメラを構える。カメラについてはまったく分からないが、デカくてゴツかった。いい写真が撮れそう。

「いくよー、3・2・1」

 パシャリ。シャッターが切られる。1度ではなく3回ぐらい。

 フラッシュが眩しかったが、目はできるだけ動かさないようにした。半目が一番嫌だ。

「OKです。もう動いて大丈夫です」

 その言葉を聞いて腕を下ろす。腕を中途半端に上げたままキープって結構つらいよね。

「よく撮れてますね。春野くん、次のポーズなんですが――「キャー」」

 廊下の方から悲鳴が聞こえた。橘が言おうとした言葉は多数の声によってかき消されてしまう。

 まぁ、聞こえはしたよ。これ以上写真撮りたくないから無視するけど。

 悲鳴はどんどんと大きく、こちらに近づいてくる。様子を見に行った女子も悲鳴になって返ってくる。

 怖くはない。だって悲鳴といっても、前に『黄色い』という言葉が付くからね。

 教室の扉から一人の男子が入って来る。先ほどから悲鳴を叫ばれている人、御形である。

 その後から女子達もゾロゾロと教室に入って来る。彼女15人全員揃い踏みである。さっきの悲鳴もほとんど彼女達のものだろう。このクラスの子はいいんだけど、他クラスの子は帰ってほしい。教室が狭い。自分のクラスの準備をしろ。

「ほら。撮影は終わったし、邪魔になる前にどこ」

「⋯⋯そうですね」

 橘は何か言いたそうだけど、何も言わない。写真を撮ってくれた子に会釈しその場を離れる。

 御形が来てから教室が騒がしい。このままなら今日はアレをしなくて済むかもしれない。

 逃げ出すように教室を出ようとして――

「どこに行くんですか?」

 橘に捕まってしまう。

「いやぁ、教室うるさいし、さっさと着替えてこうかなって」

「まだ、着替えちゃダメです。これから集合写真撮りますよ」

「そうなの?」

「そうです」

「そっか」

 知らなかった。はたして、何人の男子がそのことについて知っているのだろうか。

 クラス写真か。⋯⋯執事姿で。
 黒歴史確定だね。まず、見返すことはない。

「それまではボイスを、と言いたいんですがこれだと防音室を貫通しそうなんですよね」

 そう言って視線を教室の隅の大きな箱――防音室から騒いでいる御形一行に視線を向ける。ちなみに防音室には人形のマイク、確かダミーヘッドマイクだったかな、それが置いてあるガチのやつである。

 よかった、今日は耐えた。

 あっ御形、薔薇持った。彼女達が嬉々として持たせに行ったな。

 御形は薔薇の造花を装備した。御形のかっこよさが10、キザさとイタさが100上がった。ゴミ装備だね。

 そんなこんなで御形の撮影会はしばらく続いた。少なくとも100枚は撮ったんじゃないかな。数えてないけど。

 その後も他の男子の撮影が続き、すぐに終わる。後の男子を全員足しても御形より短かったな。

 見てるだけではあったけど、結構面白かった。他の男子が決めポーズを撮っている所とか特に。笑い声を抑えるのがつらかった。

 いやぁ、始めの方に撮っていてよかったよ。後の方だったら緊張と恥ずかさでカチカチになっていただろう。

「そろそろ終わりですね」

 隣に座る橘がそう言った。距離は近すぎず遠すぎず、パーソナルスペースを意識した優しい心配り。

「集合写真撮りますよ。黒板の前に集まってください」

 その言葉とともにクラス中が動き出す。

 人によってポーズにも個性がよく出ている。例えば、御形は15人の彼女達に囲まれている。何人かは他クラスのはずなのに。別にいいんだけどね。他にも両手に花な男子だったり、お姫様抱っこをしている人もいる。

 僕はというと、特にポーズもとらずその場に立ち、橘がその隙間を埋める。この時ばかりはパーソナルスペースは無視なのである。

 それだけだと、スペースが空きすぎているので女子が僕や他の男子の距離をここぞとばかりに埋めてくる。そこだけは我慢する。

「撮りますよ。ハイ、チーズ」


 パシャリ。

 嫌ではあったが、良い写真が撮れてるといいな、そう思った。
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文化祭は各クラス5万円の予算がありますが、それ以上は自腹です。なお、売上は100万を軽く超えます。
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文化祭の入場方法は2つしかありません。在校生から招待券をもらうことか学校から入場券を購入することです。
男女比が壊れた世界のブラックな日常作者:霊兎卯
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文化祭の売上の一部は学校に回収されてしまいます。しかし、それを除く金額がクラスに入ります。

 まさか、この服をもう一度着ることになるとは。

 肌触りは悪くない。むしろ素材がいいからか、良すぎるくらいだ。前回から一年経っているから、サイズが少し小さいかと思ったが、全然そんなことなかった。

 執事服。いや、燕尾服って言ったほうがいいのかな。違いがわからないから、どっちが正しいか知らないけど。

 男子専用教室を使って、男子達が着替えている。ここは覗かれる心配がなくていい。

 服のクオリティーは人によってマチマチだ。実際に仕事で着てそうなほど完成度が高いものから、コスプレ用のちゃっちいまで様々である。

 僕?

 去年使った橘の私物だよ。無駄にクオリティーが高い。いやでも、コスプレみたいなのを着るよりはこういった本格的なものの方がいいのか。ありがとう橘。1回の文化祭のためにこれ買うのは馬鹿だとは思うけど。

 どれくらい出来がいいのかと言うと、クラスで2番目くらい。一番は御形、たくさんの彼女が出し合って買ったのだろう。

 イケメンは何でも似合うからいいな。僕は衣装に着せられてる感がすごい。高そうだからなおさら。

 荷物はそのまま置きっぱなしで教室を出る。人のものを取るような男子はこの学校にいない。

「あっ、やっと出てきましたか。キツくなったりはしていませんか?」

 この教室から少し離れた所で待っていた橘が声をかけてきた。女子が男子専用教室の近くにいると色々問題だからね。

「全然大丈夫。というか、去年も思ったけどさ、いくらしたのこれ?」

「オーダーメイドなのでそこそこしましたよ。着れてよかったです。着れなかったらもう一着買うことになっていたので」

 へぇ、オーダーメイドか。へぇ。

「⋯⋯そこそこっていくら?」

「聞きたいですか?」

 暗に聞くなと言っているようであった。

 もし、僕が2着目をほしいって言ってたらどうなっていただろうか。橘のことだから絶対に良いものを買うだろうな。これと同じか、それ以上の物を。


 ⋯⋯⋯やめとこう。知らなくていいこともある。

「ダイジョウブです」

 これは戦略的撤退である。決してビビっているわけではない。

「そうですか」

 そこで会話が終わる。会話が終わると周りの景色も見えてくる。

 放課後で文化祭の準備もあるからか廊下は女子生徒であふれている。だからか、視線が集まって気持ちが悪い。

 そりゃそうだ。執事姿の男子がいたら誰だって見る。ただの制服姿でも見られまくるというのに、コスプレしているので尚更。

 橘はそんな視線を見て、笑っていた。自慢なのか、愉快なのか、それとも怒っているのかは僕にはわからなかった。

 そんな視線に耐えながら、ようやく教室に着く。視線からは逃れたけど、こっちはこっちで地獄なんだよな。教室の隅にある大きな箱には目を向けないようにしつつ。

「春野くんは写真に何かこだわりはありますか?なければ私が決めますよ」

 橘が口を開く。
 そう、今日は写真を撮らないといけないのだ。

 シチュボに使うジャケット用とキャスト紹介に使うらしい。そのためにわざわざ執事服に着替えたのだ。

「こだわりはないけど、恥ずかしいのはやめてね」

「薔薇でも持ちますか?かっこいいですよ」

「かっこいいと恥ずかしいは両立するんだよ」

 薔薇なんて僕が持ってもお笑いにしかならない。このクラスだと御形の専用装備だね。少し強そう。

「わがままですね。じゃあ、これはどうですか?」

 そう言って取り出したのは給仕用のポットとティーカップだ。こうゆうのだよ、こうゆうの。シンプルでいい。

「それでいいんですね?うるさくなる前にさっさと撮りましょう」

「わかったよ」

 僕より先に来た人はもう撮影が終わっているのか、撮影スペースが空いていた。わざわざ持ってきたのであろうグリーンバック。ガチである。

「ポーズは私を真似してください」

「こう?」

 ポットを持つ右手は顔より少し下あたり、ティーカップを持つ左手はポットより下だけど下すぎず、体は正面で撮るというよりは少しだけ傾ける。

「いい感じです。あと、細かいですがポットは傾けるように持って、顔は笑顔というよりは微笑む感じでお願いします」

 本当に細かいな。まぁ、言われた通りにするのだけど。

「いいですね。では、お願いします」

「了解」

 その返事とともに写真部の女子がカメラを構える。カメラについてはまったく分からないが、デカくてゴツかった。いい写真が撮れそう。

「いくよー、3・2・1」

 パシャリ。シャッターが切られる。1度ではなく3回ぐらい。

 フラッシュが眩しかったが、目はできるだけ動かさないようにした。半目が一番嫌だ。

「OKです。もう動いて大丈夫です」

 その言葉を聞いて腕を下ろす。腕を中途半端に上げたままキープって結構つらいよね。

「よく撮れてますね。春野くん、次のポーズなんですが――「キャー」」

 廊下の方から悲鳴が聞こえた。橘が言おうとした言葉は多数の声によってかき消されてしまう。

 まぁ、聞こえはしたよ。これ以上写真撮りたくないから無視するけど。

 悲鳴はどんどんと大きく、こちらに近づいてくる。様子を見に行った女子も悲鳴になって返ってくる。

 怖くはない。だって悲鳴といっても、前に『黄色い』という言葉が付くからね。

 教室の扉から一人の男子が入って来る。先ほどから悲鳴を叫ばれている人、御形である。

 その後から女子達もゾロゾロと教室に入って来る。彼女15人全員揃い踏みである。さっきの悲鳴もほとんど彼女達のものだろう。このクラスの子はいいんだけど、他クラスの子は帰ってほしい。教室が狭い。自分のクラスの準備をしろ。

「ほら。撮影は終わったし、邪魔になる前にどこ」

「⋯⋯そうですね」

 橘は何か言いたそうだけど、何も言わない。写真を撮ってくれた子に会釈しその場を離れる。

 御形が来てから教室が騒がしい。このままなら今日はアレをしなくて済むかもしれない。

 逃げ出すように教室を出ようとして――

「どこに行くんですか?」

 橘に捕まってしまう。

「いやぁ、教室うるさいし、さっさと着替えてこうかなって」

「まだ、着替えちゃダメです。これから集合写真撮りますよ」

「そうなの?」

「そうです」

「そっか」

 知らなかった。はたして、何人の男子がそのことについて知っているのだろうか。

 クラス写真か。⋯⋯執事姿で。
 黒歴史確定だね。まず、見返すことはない。

「それまではボイスを、と言いたいんですがこれだと防音室を貫通しそうなんですよね」

 そう言って視線を教室の隅の大きな箱――防音室から騒いでいる御形一行に視線を向ける。ちなみに防音室には人形のマイク、確かダミーヘッドマイクだったかな、それが置いてあるガチのやつである。

 よかった、今日は耐えた。

 あっ御形、薔薇持った。彼女達が嬉々として持たせに行ったな。

 御形は薔薇の造花を装備した。御形のかっこよさが10、キザさとイタさが100上がった。ゴミ装備だね。

 そんなこんなで御形の撮影会はしばらく続いた。少なくとも100枚は撮ったんじゃないかな。数えてないけど。

 その後も他の男子の撮影が続き、すぐに終わる。後の男子を全員足しても御形より短かったな。

 見てるだけではあったけど、結構面白かった。他の男子が決めポーズを撮っている所とか特に。笑い声を抑えるのがつらかった。

 いやぁ、始めの方に撮っていてよかったよ。後の方だったら緊張と恥ずかさでカチカチになっていただろう。

「そろそろ終わりですね」

 隣に座る橘がそう言った。距離は近すぎず遠すぎず、パーソナルスペースを意識した優しい心配り。

「集合写真撮りますよ。黒板の前に集まってください」

 その言葉とともにクラス中が動き出す。

 人によってポーズにも個性がよく出ている。例えば、御形は15人の彼女達に囲まれている。何人かは他クラスのはずなのに。別にいいんだけどね。他にも両手に花な男子だったり、お姫様抱っこをしている人もいる。

 僕はというと、特にポーズもとらずその場に立ち、橘がその隙間を埋める。この時ばかりはパーソナルスペースは無視なのである。

 それだけだと、スペースが空きすぎているので女子が僕や他の男子の距離をここぞとばかりに埋めてくる。そこだけは我慢する。

「撮りますよ。ハイ、チーズ」


 パシャリ。

 嫌ではあったが、良い写真が撮れてるといいな、そう思った。
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男女比が壊れた世界のブラックな日常作者:霊兎卯
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