第27話 必歩流帝〜夏休み
ブルッル...ブルッフ...フッフ...。
「なぁんだか、機嫌わりぃんだよな、最近。」
必歩流帝のバイクは、調子が悪いようです。
「姉さん、一度病院入れたほうがよくないっスかね。」
「アタシらじゃ、ちょっと...。」
仲間たちに言われて、必歩流帝は目を閉じました。
「金がねえ...。」
「アタシらカンパしますよ!なあ!」
おー!と声を上げる仲間たち。けれど、必歩流帝は首を横に振りました。
「ウチの馬だ。ウチが直す。それがスジだろ。」
バイクは家のガレージにしまって、バイト探しです。
「ウチにできそうなバイトね...。」
必歩流帝は、昔やったコンビニのバイトを思い出しました。手際が悪いのか、レジが長蛇の列になってしまった過去。店長は笑顔でフォローしてくれたけど、他のバイトの視線がキツくて、すぐに辞めてしまった...。
「制服も、パツパツで動きにくかったしなあ。レジ系はダメだな。」
歩いて行くと、ガソリンスタンドが見えます。
「ウチ、バイク好きだし、ガソスタなら...。」
必歩流帝は早速、「バイト募集」の張り紙を指さしながら、店員と交渉しました。
...数分後。
必歩流帝は、がっかりしてガソスタの事務所から出ました。張り紙は、「乙4の資格」がある人用の募集だったのです。
「資格、かあ...。今すぐは無理だな。」
また歩くと、ケーキ屋がありました。
「あそこは、ウチには関係ない...。
ん?」
店内に、ケーキ屋に似つかわしくない大男がうろついています。必歩流帝は、ケーキ屋に入りました。
「いらっしゃいませ。」
店員の挨拶も聞かず、必歩流帝は、空玲須に声の背中を叩きます。
「よう、何買うの?」
空玲須は振り向いて、大げさに驚きました。...ん?これは、何かある。
必歩流帝は少し気になりましたが、空玲須が話さないなら聞くまでもない、と割り切ります。
「いや、正直、何買っていいか...。
出井亜寧羅が倒れちゃって、ケーキが欲しいって言うから来たんだけど...。」
必歩流帝の予想に反して、空玲須はあっさり事情を話しました。
ふふ、空玲須らしい。必歩流帝はニヤリとします。そういうとこが、イイんだよな。隠し事できないっつーか...。
「出井亜寧羅は、フルーツ好きか?」
「わからないけど、弁当にはよく入れてる。葡萄とか、きーうい?とか。」
よく見てんなコイツ、と思いながら、必歩流帝はアドバイスしました。
「なら、これだ。ついでにお前のも買っていけ。一緒に食ったら喜ぶだろ。」
空玲須は、笑顔でお礼をいいました。
「ありがとう。必歩流帝って、ケーキに詳しいんだな。助かった。」
空玲須が店から出たあと、必歩流帝は「バイト募集」の張り紙を見つけました。
どうやら、バイト先は決まったようです。