第26話 女鹿蘭〜夏休み
女鹿蘭は、空玲須から返してもらった弁当箱を開けました。
「やっぱり。洗ってないじゃん。」
スプーンを見つめて、考えます。
...。空玲須が使ったスプーン...。
何を思ったのか。ちょっと赤くなったあと、女鹿蘭は急いでスプーンを洗いました。
翌日。塾の帰りに友達と寄ったショッピングモール。フードコートに座って、ドリンクを飲んで、友達と盛り上がります。
「夏休みになってさあ、親の監視が厳しくなったんだよね。
何時に帰る?とかしつこいの。」
「あー、わかる。
本当に塾行ってる?とか!
失礼極まりない。」
「彼氏とかいればなあ〜。」
「だよね〜、親に隠れてデート!」
「帰りにチューとか...ヤバ、コーフンする❤️」
チュー。昨日のスプーンが頭に浮かびましたが、女鹿蘭は慌ててかき消しました。
「誰かコクって〜。」
「蘭はいいよね〜。
空玲須がいるもんね。」
「え!?」
不意を突かれて、女鹿蘭の声が裏返ります。
「空玲須と言えばさ、
最近ちょっとイケてるよね。」
「そうそう、なんか『強!』って感じ。」
「イシシ。周りに女も増えたよね、って。
あ!
蘭、ごめん。」
周りの女...。そういえば、昨日帰ってきた時も「聖リディア女学院」の袋を持ってたな...。
「蘭〜、そろそろ行かなきゃ。」
友達の言葉で我に帰る女鹿蘭。慌ててドリンクのカップを捨てて、追いかけます。
バス停側への出口に向かう時、特設コーナーのマネキンの水着姿が目に入りました。
「そういや、サマースクールあるね〜。」
「夏休みなのに、みんなで勉強なんてダルい〜。」
「海の自由時間もね...。
いいから、早く帰してくれって感じ...。」
「スタイル良ければなあ。水着着るってだけでもう、貧しい気分になるわ...。」
友達二人は同時に、ため息をつきました。
女鹿蘭は、水着を横目に見ながら通り過ぎました。
家に帰ってきた女鹿蘭は、カバンを置いてベットに仰向けになります。
「なんだか、なぁ...。」
彼氏、チュー、水着...。
...空玲須。
両手で顔を覆います。
次の日曜日。
女鹿蘭は、一人で新しい水着を買いました。