第28話 出井亜寧羅〜夏休み
今日は調子いいぞぉ。記録更新しちゃうかも...。
出井亜寧羅は、夏の大会に向けて一生懸命です。しかし、結果は...。いつもよりタイムが落ちています。
「おっかしいなぁ。身体はキレてるんだけどなあ...。」
「疲れてるんじゃない?
甘いものでも食べて休んだら?」
経鳥栖部長が、声をかけます。
「そうねえ。ケーキがいいな。
フルーツ、のってるやつ。」
帰りに買って帰ろ、と出井亜寧羅は思いました。
出井亜寧羅が学校のプールを出ると、向こうに見慣れた大男が見えました。手を振って駆け寄ります。
「やっほー!空玲須くん、久しぶり!何してんの?」
出井亜寧羅は空玲須の腕をとって、一緒に歩き始めました。
「これさ。」
そう言って、空玲須は「聖リディア女学院」の校章がついたレジ袋を見せました。
「別の学校で『怪化』があったんで、駅土奈先生に届けにきた。
?...出井亜寧羅?」
出井亜寧羅は、空玲須の腕に震えた手でしがみついたまま、引きずられるように歩いています。手には力がなく、ぐったりです。
空玲須は出井亜寧羅を抱え、保健室に行こうとしたとき、後ろから声をかけられました。
「出井亜寧羅!大丈夫?」
経鳥栖部長です。空玲須は出井亜寧羅を抱えたまま、体調が急変したことを伝えました。
「駅土奈先生は、夏休みだからいない。
...部室で休ませましょう。」
「多分、熱中症ね。でも、プールに入ってたのに熱中症なんて...。」
椅子を並べて横になっている出井亜寧羅のおでこに、部長が濡れタオルを置きました。
「へへ、練習...に、ねっちゅう、してました...ってね...。」
「そんなウケないこと言わなくていいから、寝てなさい。これ、飲んで。
何か、欲しいものある?」
部長が聞きましたが、
「うう...。」
出井亜寧羅は、やっぱり答えるのも辛そうです。
「空玲須くん、氷買ってきて。」
「ああ。」
部長に命じられて、空玲須が部室を出ようとしたとき、出井亜寧羅は言いました。
「あ、甘いもの...、ケーキ...。」
「わかった。」
空玲須は頷いて、ダッシュで買い物に行きました。
空玲須が部室に戻ってくると、出井亜寧羅は起き上がりました。経鳥栖部長は、出井亜寧羅を制します。
「空玲須くん、ありがとう。
出井亜寧羅、はい、氷。
これ抱いて寝てなさい。」
「えー、もう、大丈夫だよー。
回復っ!ってね。」
空玲須は、ケーキの箱を机に置きました。
「わーい!ケーキ。開けていい?」
「寝てなさいってば。」
部長が、ケーキの箱を開けます。
「わぁ!フルーツショートだ!」
「...なんで三つ。」
「いや、部長のもあった方がいいかなと思って。」
経鳥栖部長は、びっくりした表情で止まりました。
「いっただきまーす。」
出井亜寧羅は、ケーキを手でつかんで一口。
「うむモグ、とっても、モグおいひいモグ。」
経鳥栖部長は、呆れ顔です。
「食べるかしゃべるかどっちかに...。
...あと、食べ方きたない!」
空玲須は、元気な出井亜寧羅に戻ってよかったと思いました。