第30話 尾牟派麗子〜夏休み
わらわを抱く、逞しい胸。
わらわに臆することなく向ける眼差し。
作戦を分かちあったときの、熱い視線...。
震える肩に置かれた、あの力強い手の温もり...。
「ああ...。頭から離れぬ...。
なんじゃ、これは!?」
目堂冴の事件以降、尾牟派麗子の頭の中は空玲須でいっぱいでした。屋敷の庭を眺めては、生垣の影に彼を探します。車に乗るときのドアボーイが一瞬、彼に見えたりします。そして、食事は、三食「オムライス」です。
...ああ、こんなことになるなら、あのとき「間接チュー」を許しておけばよかった。なんなら「間接」じゃなくても...。
ああ、わらわのバカバカバカ...。
「在後巣高校の、今後の予定を調べよ。」
尾牟派麗子は、召使いに命じました。
一時間も立たず、召使は在後巣高校の「年間行事予定表」を持ってきました。
「ふむ、ほほう?
『サマースクール』とな?
...内容を調べるのじゃ。」
調査も、すぐに終わりました。場所は海のそばの研修施設。期間は二日。宿泊行事です。
「『研修施設』とは、なんじゃ?
ホテルではないのか?」
尾牟派麗子は、ホテルか別荘にしか泊まりません。召使いが答えます。
「皆で同じ部屋に寝る宿泊場所です。庶民たちには、その方が値段が...。」
➖➖ほわわ〜(麗子妄想world)➖➖
「尾牟派麗。一緒に寝よう。」
空玲須が、キラキラしながら尾牟派麗子に語りかけます。その顔はちょっと美化されているようです。
「そ、そんな、いきなり...。」
頬を赤らめらる尾牟派麗子。
「いいではないですか。オレは、あなたのことが...。」
キラキラを纏った顔を近づける空玲須。尾牟派麗子は唇を尖らせます...。
➖➖➖➖ ほわわ〜 ➖➖➖➖
「お嬢様、お嬢様!」
召使いの声で、我に帰る尾牟派麗子。
「はぅ!?
...うむ。あい分かった。
それでは、そこにわらわも泊まれるよう手配するのじゃ。」
「は!?」
召使いたちの控え室...。
先程の召使いが、上司に報告しています。
「さて、困ったな。」
上司も困惑。
「他校の生徒と一緒となると、護衛難度が上がる。」
「他校生徒の中に危害を加えるものがあるかもしれないからな。」
「かと言って、お嬢様の願いを叶えないという選択肢は、我々にはない。」
「お嬢様の狙いはその『空玲須』という者なのだろう?だったら...。お嬢様には、別の場所にお泊まりいただいて、その『空玲須』を連れてくれば...。」
「いや、お嬢様は『サマースクール』に参加したいようだ。その方法では、お嬢様は納得されないだろう...。」
協議の結果、「聖リディア女学院生徒会」が、在後巣高校のサマースクールと同じ場所でイベントを行う、ということで落ち着きました。
➖➖ほわわ〜(麗子妄想world➖➖
「尾牟派麗、どうしてここへ?」
「そちのことを、追ってきたのじゃ。」
「そんなに、オレのことを...。
こっちへ、おいで!」
「ああ、そんなに強く...、あ!...」
➖➖➖➖ ほわわ〜 ➖➖➖➖
その頃、空玲須は、やっと保健室で駅土奈先生に会えて、「怪化」の袋を手渡すことができました。