第22話 尾牟派麗子〜目堂冴④
再び会議室。尾牟派麗子は、教頭に窓側の席に座ってもらいました。
「この者は、或呉巣高校の空玲須。
わらわが事件の調査を依頼した者じゃ。
第一発見者に話を聞きたいそうじゃ。」
教頭は、何というか、普通のおっさんです。緊張した感じがするのは、やはり尾牟派麗子が理事長の孫だからでしょうか...?
空玲須は、自己紹介と質問をした。
「空玲須です。成り行きで調査をすることになりました。
それで、発見したときの『目堂冴』さんの様子は普段と違うところはありませんでしたか?」
教頭は、目を伏せて思い出す仕草をしました。
「うーん。
...何度も聞かれたんだけどね。違うところか。ちょっと凹んでた感じに見えたぐらいかな。」
「そうっすよね。もう散々聞かれましたのよね。」
空玲須は、チラッと尾牟派麗子を見ます。尾牟派麗子は、窓の外を見ながら目を閉じて、優雅にお茶を飲んでいました。
「あ!
そうだ。戻ってきたとき、眼鏡が...。」
そのとき、会議室の扉がノックされた。
「失礼します。」
目堂冴の声がして、教頭が返事をします。
「あ、目堂さ...。」
空玲須の前で、石化していく教頭。
「尾牟派麗子!」
空玲須は叫びながら尾牟派麗子を抱えて、ガラス窓を突き破りました。
空玲須たちが脱出した会議室の窓は、黒い影に覆われています。
「これ。降ろせ。」
尾牟派麗子が、空玲須の頬を軽く叩きます。空玲須は尾牟派麗子を「お姫様抱っこ」していた自分に気づきました。
尾牟派麗子の頬は、少し赤らんでいます。
ヤバい、同意なく女子の体に触ってしまった。コレでは、「せくはら」というやつになってしまう。でも、同意を取る暇はなかった...。
「何となく、わかったぞよ。」
尾牟派麗子は、ふふんと不敵な笑みを浮かべた。「せくはら」を追求される様子はありません。
「まず、逃げよう。」
空玲須は、尾牟派麗子の手を引いて、会議室と反対側の校舎に逃げ込みました。
尾牟派麗子は廊下を歩きながら、空玲須に聞きました。
「そちと、わらわは、石にならなかった。
教頭は、石になった。
この違いは、なんじゃと思う?」
空玲須はいつのまにか、尾牟派麗子に手を引かれて歩いていました。
「...目堂冴が関係しているのは間違いない、としか。」
「目堂冴を『見た』かどうか、ということじゃな。わらわは、目堂冴の姿を見ておらぬ。そちも、見ておらぬじゃろ?
『見た』教頭や三人は石化。『見ていない』わらわたちは無事。」
尾牟派麗子の観察眼と鋭い考察。空玲須は、感服して頷きましたが、ふと気がつきました。
空玲須は、脳内でシミュレーションします。
...何度やっても、見ないで相手を捕まえられる気がしません。
「でも、見たら石化するなら『怪化』を解く方法がない...。」
空玲須の言葉に、尾牟派麗子は自信たっぷりに答えました。
「安心せい。わらわに考えがあるぞよ。」