第13話 井尾玲〜美濃田虚洲の迷宮①
経鳥栖の「怪化」を駅土奈先生に渡してから、数日が立ち...。
またも男子が騒がしい。今日のネタは、転校生(女子)が来る、という話題。
「お、おい!
今回は、スゲぇ...。」
校長室から斥候が戻ってきました。
「どんな?美人か可愛いか、どっちだ?」
次々と質問が飛びます。斥候は、ハァと息を吐いて言いました。
「絶!
言葉では、表せないほど...。ああ。」
胸を押さえて倒れます。周りの男子は顔を見合わせて、ゴクリと喉を鳴らしました。
ホームルーム後。
五組の前の廊下が渋滞しています。まさに黒山のような人だかり。
「見えたか?」
「うーん、もうちょい...。」
押し寄せる男子の足元には、胸を押さえて気絶した身体たちがゴロゴロと...。
女鹿蘭は皮肉っぽく空玲須に言ました。
「空玲須も、参加してみたら?
なんか楽しそうだよ男子。」
とは言ってはいますが、内心は違いました。...可愛いかどうかなんて、どうでもいいじゃない。別に男子にモテるためだけに生きてるんじゃないのよ女子は。
最近の女鹿蘭は、なんだかイライラしています。空玲須には、理由が分かりません。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムと共にざざぁっと黒だかりは去り、授業が始まりました。授業中も男子はヒソヒソと転校生の話題を話しています。空玲須はよく聞こえないので、頭をそちらに傾けました。
ばきっ。
破壊音と共に女鹿蘭のシャーペンは真っ二つです。
休み時間のたびに、五組前は大渋滞。トイレに行くのも一苦労だと、女子たちは怒りを露わにしています。
五組の中を見たものは限られていますが、そのレポートによると、
「五組の男子は皆、溶けている」
とのこと。さらに、神々しい銀の髪、という情報も追加されました。まだ見ていない男子の期待度は爆上がりです。
「女鹿蘭、代わりのシャーペン、ある?」
空玲須は、女鹿蘭に自分のシャーペンを差し出して言いました。
「オレ、どうせ字書けないし、よかったら使えよ。」
女鹿蘭は、自分で折ったシャーペンを見つめました。
...わたし、何をこんなにイラついてんだろ。男子が可愛い子で騒ぐのなんていつものことなのに。何で...?
「女鹿蘭...。」
いつもの女鹿蘭じゃないことは分かりますが、空玲須は何と言ったらいいかわからないので、席に戻りました。
ついに、男子が待ち望んだ昼休み。
現地に動きがありました。
「速報:転校生が教室を出る」
全男子の視界上部に速報が出ました。黒だかりが移動していきます。向かう場所は...。
「速報:移動先は職員室」
転校生は、黒だかりを廊下に置いて、職員室に入っていきます。
「井尾玲は美濃田先生に用があるらしい。」
五組の男子からのリークで、転校生の名前と目的が明らかになります。考察が始まりました。美濃田先生といえば、書道の大家。なるほど。考察班の結論は「書道部」。
その頃、空玲須は、教室でランチを食べていました。窓の外は初夏の爽やかな青空。
...今日は平穏無事に過ごせそうです。