第32話 サマースクール〜「海の家バザー」
ビーチでの自由時間。
開始一時間ほど経って、男子も女子も、そろそろロックオン対象を絞り始めます。
諦め男子は、水着鑑賞にシフトです。諦め女子は、女子同士つるみます。胸に一縷の希望を秘めながら...。
ノリの良い曲と共に、アナウンスが流れます。
「『聖リディア女学院生徒会』じゃ。
今より、『海の家バザー』を始めるぞよ。
ぜひ、来てたもれ。
なお、水着の女子と、そのツレ限定じゃ。
ボッチ男子はパートナーをしっかり見つけるのじゃぞー。」
...ナニソレ。
ビーチの空気が変な方向に変わります。
「海の家」は魅力的です。
かき氷、焼きそば、カレー。定番はもちろん。
クレープ、アイスクリーム。スムージー。果ては、ケーキやパスタ、フラッペまで。
カフェが移転してきたかのような、女子好きな食べ物の充実っぷり。さすがお嬢様学校の生徒会。メニューチョイスがオシャレです。
ただし。
条件ハードルが高い!
女子にとっては、水着。見せたい!でも恥ずかしい...。でも、あのクレープ食べたい。乙女心が揺れ動きます。
男子はさらに苦難の道です。「水着女子のツレ」にならなければ、焼きそばさえ食べられない...。「あて」のない男子たちは、血涙です。
井尾玲は一人、砂浜に文字を書いていました。
「うーん、夏っぽさがうまく表現しきれてないですね...。」
砂浜に大きく書かれた「海」の文字。確かに、今一歩インパクトに欠けます。
「井尾玲〜。海の家行こうよ!」
四組の女子たちに誘われて、井尾玲は海の家へ。キャイキャイしていた女子たちも、いざ着いてみると、気持ちが揺れます...。
「やっぱりさあ、水着になるのは...。」
「ちょっと恥ずかしいよね。」
そんな女子たちの前で、井尾玲はするするとラッシュガードを脱ぎます。
「みなさん、これでオッケー。入りましょう!」
女子たちは顔を見合わせて頷き、Tシャツを青空に脱ぎ捨てます。
「井尾玲〜待ってー!」
ビーチは、彼の帰還にざわついた...。
彼の右には、スタイル抜群。長身の「二組のクイーン」。
彼の左で腕を取るのは、太陽の笑顔。天真爛漫「四組のアイドル」。
空玲須は、二人と一緒に「海の家バザー」へお昼を食べに行く、ただそれだけのつもりだったのです。
しかし。
「学年の美女二人を侍らせ」ているように見える...。
男子たちの視線も刺さります。羨望、嫉妬...。
空玲須自身も、内心ドキドキが止まりません。彼とて男子高校生。水着女子二人に挟まれては、平常心ではいられない...。
そして、いよいよ「海の家」が見えたとき、遠くから声をかけられました。
「あら、空玲須くん!」
ラッシュガードを脱ぎ、水着になった井尾玲です。
爽やかな水色の水着、夏の風になびく美しい銀髪。無防備な笑顔に、空玲須のドキドキは限界を超えそうになりました...。
「なんじゃ、あの女子たち。
わらわの空玲須に密着しおって!
...挑戦と受け取ったぞよ。
待っておれ、わらわもゆくぞ!」
ライフセーバーの物見台から、この様子を眺める女王様が、いよいよ参戦するようです。