義妹であるクロエの秘密を知ってしまっためぐみ王女。
007
砂漠、街の外、昼間......オフィスレディがクロエの体に転生する一日前のこと。
荷車を引いた馬車が街外れの砂漠へと向かっていた......最初は他の街から来た商人の馬車のように見えたが......馬たちが独特の鎧をまとっていたため、すぐにレギュラー王国の軍用馬車だとわかった......
馬車がしばらく走ったところで......あるゴミの山の前で止まった。
「......隊長!......」
ゴミの山にあるものを見た騎兵が叫んだ......
これまで見たことのないものばかりだったから......
王国の軍隊長グラハムの指揮のもと、馬車から降りた兵士たち......
「......なんということだ......」
もちろんこの世界にもゴミ捨て場はある......しかしここにあるゴミの山は、他とは別世界と言っていいほど違っていた......
奇妙な形の道具、映像を映し出す四角い鉄の板、鉄で作られた速い馬、鉄で作られた大きな船、見慣れない武器の数々......果ては、鉄で作られた巨大な鳥まであった......
「よし......ここが実在することは確認できた......むやみに触るな......」
グラハムは部下たちにグループごとにゆっくりと探索するよう命じた......
最初は、あの狡猾な司書の戯言に過ぎないと思っていた......しかしまさか本当のことだったとは......
彼らがここに来た理由は、王国第一位の魔法使いがここに"こちら側"の世界とはまったく異なるものが存在するという予知夢を見たからだった。
それでグラハムは魔法使いの依頼に応じて兵を率いてやって来た......ヘンリー国王もこのことは把握していた。
「......これは......何だ......」
一人の兵士が、鉄の棒と呼ぶには装飾が凝りすぎている細長い鉄の棒に気づいた。
「気をつけろ......」
その兵士は鉄の棒を拾い上げ......引き金に指を引っかけた......
次の瞬間、「パン!」という音が地面に向かって鳴り響いた......
「うわっ!?」
若い兵士はすぐに火縄銃を投げ捨てた......怪我人が出なかったことに全員が胸をなでおろした。しかしこれらのものには絶対に手を出してはいけないと、脳裏に深く刻み込まれた......
グラハムは探索を続けた......やがて鉄の箱を踏んでしまった......
慎重に拾い上げた。
「お前たち......」
他の兵士たちがグラハムの手にあるものを覗き込んだ......
「これは......国王陛下があの司書から手に入れた写真機ではないか......」
全員が確信した......ここは本当に青山池田の"秘密の宝庫"だと......
そのとき......地面が揺れ始めた......どんどん強くなっていく......
やがて、何かが突然、空間のどこかに開いた次元の扉から飛び出してきた......
夜......ルイスが盗賊の巣でクロエと出会う一日前のこと。
レギュラー王国の王族専用の食堂では......人間と名乗る生き物の中でも頂点に立つ者たちが......
王族の家族が、いつも通り夕食を囲んでいた......しかし他の日と違ったのは......現国王、ヘンリー国王が昼間に起きたことについて大騒ぎをしていたことだった......
「お前たちは役立たずだ!! たった一人の淫らな女も捕まえられないとは!! お前たちは本当に兵士なのか!!!????」
到底上流階級の口から出るとは思えない罵詈雑言が次々と飛び出し、屈強に見えた軍隊長でさえ首をすくめて地面に潜り込みたい気持ちになっていた......
「はっ......申し訳ありません......」
彼は中年の兵士だった。顔つきは多くの戦場をくぐり抜けてきた武人のそれで、黒髪にところどころ白髪が混じり始め、きちんと後ろに撫でつけた髪型はレギュラー王国の軍隊長に相応しく、きりりとした印象を与えた......
しかしその威厳は今、正反対のものになっていた......
「父上......グラハムを責めないでください......クロエを捕まえられなかったのは私の責任です......」
ヘレンが、グラハムと呼ばれた軍隊長をかばうように言い立てた。
「何を言っている?......お前は王子だ、兵士ではない。あの女を捕まえられなくても不思議はない......しかし彼は兵士だ!! 七王国同盟の首都の兵士だぞ!!!!」
グラハムはまだ頭を下げ続けていた......
「申し訳ありません......」
「謝ってばかりいてどうする! 謝れば......」
ヘンリー国王がグラハムの顔めがけて受け皿を投げようとした......しかし、一人の少女の冷ややかな声がそれを遮った......
「もうお止めになってください、父上......そんなふうに叫んでもクロエは捕まりませんよ......」
「はあ!?......」
淡いピンク色の真っ直ぐな髪に赤い瞳を持ち、何事にも無関心そうな顔をした少女がお茶を一口飲みながら言った......
「グラハム、もういいわ......二、三日休んでから、またクロエを探しにいきなさい」
「は......はっ! ご配慮いただきありがとうございます......メグミ様......」
彼女は手を上げて制すると......グラハムを王宮から追い払うように手を振った......
「お前......わしに口答えするか! 所詮お前は他腹の子に過ぎないというのに......」
メグミは以前にも増して無表情なままヘンリー国王を見た。
「母上の前でそのようなことをおっしゃるとは......随分と大胆ですね......」
ヘンリー国王は自分の言葉にしばらく固まった......そして王妃が悲しそうな顔をしているのを目にした......
「あのときは感情的になっていただけだ......」
言えば言うほど悪くなっていく......
「......もうお腹いっぱいです......」
王妃はすぐに席を立ってしまった......
「私の母をどのように蔑んでいただいても構いません......でも母上を侮辱したことは許せません......」
「くっ......」
ヘンリー国王は強くテーブルを叩き......すぐに食堂を出ていった......
「ねえ......メグミ......父上にそんな言い方をしないで......」
ヘレン王子が妹をたしなめた......二人は母が違ったが......本当の兄妹のように仲が良かった......
「お兄様こそ......使用人と父上が、クロエが他の男と寝ているとひと言言っただけで婚約破棄したじゃない......」
クロエの話が出ると......ヘレン王子はすぐに顔色を変えた......
「少し黙れ......わしはかつてあの女を信じたことがあった......それでどうなったか見ろ......わしを裏切り、逃げ回り、街を破壊して......」
「お兄様は本当に馬鹿ね......口コミだけであっさり信じてしまうなんて......」
「今すぐ言葉を取り消せ......」
「なぜ取り消さなければならないの......本当のことなのに」
そんなことを言われて、彼は拳を固め、妹のメグミの顔を殴ろうとした......しかしメグミは拳が届く前に魔法の杖を彼の顔に突きつけていた......
「それと......感情を少しはコントロールしなさい......お兄様......」
「ちっ......」
ヘレン王子はすぐに食堂を出ていった......残ったのは彼女一人だけだった......
「ユイスカ......」
自分付きの侍女を呼んだ......
「はい?」
「今夜の夕食、とても美味しかったわ......」
「ありがとうございます......」
メグミは食事を終えてフォークを置き、口を拭いた......
「でもねえ......みんなあまり食欲がなかったみたいで......せっかくのご馳走がずいぶん残ってしまったわね......他の使用人たちに分けてあげてちょうだい......」
「よろしいのでしょうか?」
ユイスカは主人の言葉に戸惑いながら尋ねた......
「テーブルを見てみなさい、ユイスカ......これだけのお料理を作るのにお金と時間がかかっているのよ......しかも使っているお金は私たちのものですらない......税金が無駄に消えていくのは嫌なのよ......」
「さようでございますか......でもその......」
「でも、何?」
ユイスカはもじもじしながら少し恥ずかしそうに身をよじった......
「実は......これはずっと前から、こっそりやっていたことなんです......」
「そう......」
彼女は立ち上がった......
「今話してくれたことは咎めないわ......でも今後は何かあれば先に報告しなさい。父上に直接言いにくいことがあれば私に言って......」
「かしこまりました......」
「そして今回の件は、残った料理を他の使用人たちに分けることを私が認めたということにしておくわ......」
「はい!......」
メグミの寝室で......
「はあ......」
彼女は化粧台の前にぼんやりと座り......クロエという名の金髪の少女の写真を眺めていた......
「まったく......みんなして、私の義妹が他の男と何かあったなんて言って......馬鹿げてる......」
彼女はその写真に優しくそっとくちづけた......
この写真はジェポンネ出身のある司書から手に入れた"写真機"というもので撮られていた。
彼はその品々を、自分だけが知っている"秘密の宝庫"から手に入れたと言っていた。
「あの馬鹿たち......私の義妹はあんなに心根の良い子なのに......」
クロエが兄の婚約者として王宮に来た最初の日から......メグミは彼女のことを本当の妹のように感じていた......
身分の上では義姉にあたるはずなのに......いつも義妹と呼んでいた......
普段のメグミは顔も性格も冷たそうに見えた......しかしクロエが王宮に来てからというもの、宮中の人々は彼女の笑顔を前より多く見るようになった......
そしてある日突然、ヘンリー国王がクロエは兄を裏切ったと宣言した......証人として十数人もの使用人を用意して。
証人たちは、クロエが密かに別の男を王宮に連れ込み、深い関係を持ったと証言した......
しかしメグミは父である国王の言葉を一切信じなかった......クロエは心根が優しく、性格は可愛らしく、素直で礼儀正しい子だったから......
あの子がそんなことをするはずがない......絶対に......
きっと何か不審なことが裏にある......
大切な妹のように思っているその少女の写真を引き出しにしまうと......彼女はベッドに戻った......
「?」
枕元に......いつもとは違う見慣れないものがあることに気づいた......
「これは......」
それは本だった......変わった表紙の......
「右から左に読むの?」
よく見ると......表紙に誰かの絵が描かれていた......
絵は少し変わった感じだったが......じっと見てよく考えると、見覚えのある顔に思えた......
「クロエ?......ルイス?......それにお兄様まで......」
しかし文字が読めなかった......魔法のある世界ではそれは問題にならなかったが。
メグミは両手のひらを合わせた......魔法の杖が現れた......
「トリックスター☆チェンジ!」
杖の魔法を発動させると......体が光り輝き......衣装が変わった......
純白の魔法少女の衣装に......まるで女神のような姿だった......
彼女の魔法は、魔法少女に変身すると魔法を無制限に使えるようになり、人間の姿に戻るまでその状態が続くというものだった......
「さあ......」
本の言語を全部翻訳する魔法を使った......文字が少しずつ形を変え、やがてメディア大陸の言語へと変わっていった。
「なるほど......読んでみましょう」
「タイトルは......クロエの婚約破棄後の生活......原作:サク、作画:サクラバ・サクラ......」
砂漠、一日前......
地面に激しい衝撃が走った......
「地震だ!!!」
全員が急いで身を隠した......するとその瞬間、空の隙間に奇妙な次元の扉が開いた......
兵士たちは呆然とその光景を見つめていた......
「あれは......何だ......」
扉はさらに激しく揺れ始めた......
まるで何かがその扉の向こうから出てこようとしているかのように......
そしてそれが出てきた......
鉄でできた巨大な虫......つまり地下鉄だった......
謎の次元の扉から飛び出してきた......そしてどしんと地面に落ちた。
直後に扉は消えた......
兵士たちは本能的にすぐさま地下鉄の様子を確かめに走った。近づいてみると、ドアが取り付けられているのがわかった。これは生き物ではなく物体だとわかった......
ドアがあるなら、中に人がいるはずだ......
互いに頷き合った......全員で力を合わせてドアを破って中に入った......
しかしどれだけ探しても、人も生き物も一切見当たらなかった......
見慣れない荷物だけがあるばかりだった......
みんなそれぞれ車両の中を探索し始めた......そしてグラハムが最前部の車両を探索していたとき......一冊の本が床に落ちているのを見つけた......
「?」
拾い上げてみると......表紙にクロエ、ルイス、ヘレン王子に似た絵が描かれているのがわかった。
この本の文字は奇妙だったが......翻訳できそうな人物が一人思い当たった......
「隊長! 人はいませんでした......しかし見慣れないものばかりです......」
兵士たちが車両の前に集まってグラハムに報告した......
グラハムは全員に本を開いて見せた......
そのページには......そのマンガのヒロインであるクロエが、国王と一部の人間だけが密かに進めている赤任務の秘密を偶然知ってしまう場面が描かれていた......
「これは......」
全員が顔を見合わせた......
「今すぐ国王陛下にお知らせしろ!......」
「はっ!!!」
メグミの寝室で......
クロエが自分の父親の暗い秘密を知ってしまう場面まで読んだとき......彼女は目を見開いた......
急いで本を閉じ......魔法の檻を作ってそれを中に封じ込め、杖とともに収納した。そして元の姿に戻った......
「これは......まずい......」
そして瞬時に全ての点と点がつながった......
国王が何を企んでいたのか......そしてクロエは兄を裏切ってなどいなかったということが......
「ルイスに連絡しなければ......」