第参話 擬神在月
気絶した進清を乗せた車は、繁華街を通っていた。
久美子は窓を見ながら、言う。
「頭悪そうなガキしかおらんな」
数分、繁華街を通ると、車は『スナック☆磐座』,ギラギラと光った看板の付いたスナックの駐車場に停まった。
後部座席の扉が開けられる。気絶した進清は、寝ていた。
「まだ寝とる」
久美子はあきれたように言い、運転手に向き直る。
「ちょい、あんた、水買うてきて」
「は、はい」
運転手は近くの自販機へ走っていく。久美子は進清の頬をぺちぺちと叩いた。
戻ってきた運転手が、水を差し出す。
「こ、買うてきました」
「ありがと」
水を受け取り、蓋を開け。
「ほい」
進清の顔に、水がかかった。
進清の目が覚める。すぐに、声を荒げた。
「おめぇ!」
「そないな声を荒げんといて、耳痛いわぁ~」
久美子が指を鳴らす。すると、進清の首を絞めていた鉄筋が、今度は手首を縛るように締め上がった。
「今すぐ解け!」
「もう嫌や、この人怖い」
久美子は呆れたように手を振った。地面に落ちていた100円玉が浮き上がり、進清の額に当たる。
「ついてきてくれへん?」
「アタシがその気になったら、その100円玉、ぐり~って頭、貫通さすこともできるんやで?」
......進清は、渋々久美子に付いて行った。
スナックの扉を開ける。中は、何も変哲も無いスナックだ。
進清は口を開く。
「で、何がしたかったんじゃ?」
「う~ん、スカウト?」
困惑の声が、進清から漏れる。
そんな進清の目の前で、久美子が,お酒の置いてある棚の端を、通り抜けるように通っていった。
背中を、運転手に押される。
「入っちょください」
進清も、通り抜ける。
その先には、高級そうで、和風なバー内の空間が広がっていた。若いバーテンダーもいる。バーテンダーと久美子を入れて、10人。
奥の掛け軸には、『疑神在月』と書かれている。
すると、奥の扉から、老人が出てきた。
老人と言っても、老いぼれてはいない。しっかりと背筋を伸ばし,どこかで、見たことがあるような老人。