教育係
「またミフネか」
STSMAの副理事長である、おとめ座銀河団の代表理事スルマールは報告書を眺め、ため息をついた。ゴツゴツとした岩を組み合わせたような姿をした、四本の足と二本の腕を持つ外骨格系の人種だ。全身暗紫色の無機質な姿をしながら、その顔面は地球人種とよく似ており非常に表情豊かである。
報告書によればミフネは大規模な宇宙海賊の集団を掃除し、一つの宙域に平和をもたらしたとある。素晴らしい成果だ。しかしスルマールが問題視しているのは、その掃除をする過程で発生した様々な損害である。
「良いではないか、無辜の民に死者は出なかったのだろう? 大掛かりな掃除をすれば、衛星の一つや二つ吹き飛ぶぐらいの影響が出るのは仕方ないことだ」
鷹揚な態度でライトを擁護してみせるのはSTSMAの理事長、キンパだ。アンドロメダ銀河の代表理事であり、その姿は巨大な一つの目から無数の触手が伸びた姿をしている。(ライトが彼のことを『目玉ウニ』と呼んでSTSMAの職員を震え上がらせた事件はあまりにも有名である)
「理事長、確かに我々はこの宇宙の平和を守るため汚れ仕事をする掃除人を必要悪として設置しました。それでもSTSMAの執行官として最低限の品位は保ってもらわなければなりません。見てください、行く先々で女を口説き、酒に酔って大喧嘩、地元の名士を殴り飛ばした等、品性の欠片もないミフネの行いに対する苦情の数々が報告書の倍の情報量で添付されているんですよ!」
スルマールが提示した報告書のデータには幾つもの惑星から送られてきたSTSMAへの文句がびっしりと貼り付けられていた。それを見たキンパはひとしきり大笑いしたあとで、冷たく言い放つ。
「掃除人に求めるのは掃除の腕だけだ」
「......」
突然見せた理事長の有無を言わさぬ冷酷な威圧感に、スルマールも言葉を失う。
「苦情の処理なぞ、そこらの尻で椅子を磨いておる事務職員にでもやらせておけばいい。まあ、そうだな。あやつに大人の振る舞いを求めるなら人を導く仕事でもやらせてみたらどうだ、ちょうど期待の新人が入ってきたのだろう?」
「......クライス・ガートマンですか。彼は品行方正、正義の男ですよ。変に感化されてしまったら」
「バランスが取れて良いかもしれんぞ」
こうしてライトをクライスの教育役に任命するSTSMA指令が発出されたのだった。