星海の掃除人
宇宙には大量のゴミが散らばっている。
星々の合間を漂う無数の宇宙ゴミ、かつて惑星として無数の生命を育み、その役目を終えて瓦解した土くれの数々......そして、恒星間移動が当たり前となった現代に於いても未だ消えることのない、宇宙を旅する人々を襲撃して金品や航宙船そのものを奪っていく特大の生きたゴミども。
複数銀河から代表者が集まって結成された航宙安全管理協会(Space Travel Safety Management Association:略称STSMA、天の川銀河代表国家で使われている呼称。人によって適当に母音を加えてサツマとかセツマとか言われている)は星海のゴミ掃除をする掃除人を募り、この大宇宙の大掃除をすることに決めたのだ。
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「あーぁ、せっかくの初掃除なのに、あんな問題児と組まされるなんて」
男が一隻の航宙船を前にしてぼやいた。彼の名はクライス・ガートマン。弱冠23歳でSTSMAの公認掃除人採用試験を突破した若きエリートである。
掃除人は基本的に一人で活動し、必要に応じて仲間と共に掃除をするが、新人には教育役としてベテランの掃除人が一人つくことになっている。教育役が一人前と認めて初めて単独行動が許されるのだ。
金髪に青い目、白い肌を持ち彫りの深い顔立ちをしたクライスは天の川銀河でも比較的少数派であるアングロサクソンの血を色濃く容姿に残している。その彼の前にやってきたのは、黒い髪と茶褐色の目、薄い茶色の肌を持つ中年男性だ。
筋肉質で細面の顔は精悍な印象を与え、スラリとした長身(宇宙を飛び回る掃除人はだいたいスマートな体型だ)の彼は、一見とても優秀な掃除人に見える。いや、実際に優秀なのだが......クライスは彼の噂を何度も耳にしてきた。
「やあ、クライス。俺が君の指導教官になったミフネ・ライトだ。ミフネがファミリーネーム、ライトがファーストネームな」
そう言ってライトが見せてきた掃除人の身分証には『第一級掃除人・三船来翔』と書かれていた。天の川銀河において人種の大多数を占めるモンゴロイド、その中では珍しい日本(なんとこの国はまだ存在しているのだ)の民族であることがうかがえる。
「よろしくお願いします、ミフネさん」
「ライトでいいよ。さっそく出発しようか、新人研修なんてさっさと終わらせて自由に宇宙を飛び回りたいだろ?」
挨拶と共に差し出した手を握り返し、ライトは悪戯っぽく笑ってウインクをするのだった。