掃除人は掃除をする
クライスとライトは同じ航宙船に乗った。一人前の掃除人は単独行動をするため小回りの利く小型の戦闘機を使用するが、それでも一隻に十人くらいは乗ることができる。掃除の過程で民間人を保護することも想定されているからだ。
「まずは俺達の主任務である、本当のゴミ掃除だ。宇宙空間には一般人が想像するよりもずっと多くの宇宙ゴミが漂ってる。民間船の航路を綺麗にしてやらんと、思いがけない事故が起こるからな」
操縦席に座るクライスに、助手席に座るライトが最初の任務を説明した。意外とまともだな、とクライスは発進準備をしながら内心胸をなで下ろした。いきなり宇宙海賊相手に暴れまわったり、星々の酒場をめぐることになるかと心配していたのだ。ライトの〝武勇伝〟はそんなものばかりだったから。
とはいえ掃除人に期待される最大の任務はあの無限に広がる星々の海を縦横無尽に飛び回って悪さをする宇宙海賊どもの退治だ。そういう意味ではライトが宇宙海賊を退治するのは宇宙の民にとって好ましい行動と言える。だからといって無闇に海賊船を破壊して回れば、その残骸が宇宙に散らばり民間船の衝突事故を誘発するだろう。
だから、掃除人が宇宙を旅して回る期間の九割ほどは宇宙空間を漂うゴミの回収に費やされるのだ。
「発進する前に集塵バッグの在庫は確認しとけよ」
「はい、確認済みです」
「いいぞ、さすが期待のエリート新人だな」
「このぐらいは基本でしょう」
当たり前のことをしただけで褒めてくるライトにクライスはわずかばかりの苛立ちを覚える。育成機関に入りたての学生じゃあるまいし。だがライトは笑みを浮かべたまま、何も知らない新人に言い聞かせるように付け加えた。
「基本を忘れないのが大事なんだ」
宇宙ゴミを収納する集塵バッグは伸縮式の袋になっていて、普段は手で持てるほど小さく折りたたまれているが宇宙空間で広げるとその大きさは彼等が乗る航宙船と同程度まで広がる。ゴミを詰めたバッグは各地にSTSMAが設置した集塵ステーションで回収されるのだ。
「では発進します」
とんでもない問題児だと聞いていた教育役が、想像していたのとは別のベクトルで鬱陶しそうだと思いつつ出発の報告をするクライスである。
「オーケイ、宇宙を隅々まで綺麗にしてやろうぜ!」
二人を乗せた航宙船は、滑らかに加速しながら離陸し空へと飛び上がっていくのだった。