第六十七話 魔導剣士ロイ、南海の大決戦をする
さて、どうしたものか。
......まずは、ディープ・ワンと、フォルネウスを切り離したい。
「ヘイ、フグ野郎! シャックスをぶっ殺したのはこの俺よ! 黒い血しぶき上げて、ど派手に逝ったぜぇ!! こっちに来いよ! 派手に殺ろうぜぇ!」
左人差し指をおっ立てて、海兵隊と反対方向にシロンに向かってもらう。
黒いゴーグルを着けてるのでよくわからんが、「ギヌロ」というオノマトペを発する勢いで、こちらを睨むフォルネウス。
「てめええかあああ!! コロス! ぶっ殺し尽くゥゥゥすッ!! ついてこい! ディープ・ワンども!!」
挑発には成功したが、速い! ディープ・ワンを連れて、こっちに向かってくるものの、海兵隊がディープ・ワンを背後から襲撃! ディープ・ワンも応戦体勢となり、フォルネウスとディープ・ワンの切り離しに成功する! サンキュー、隊長!
問題はフォルネウス。流線型と程遠い体型のくせに、速い速い。ここで追いつかれたら、なんのためにディープ・ワンと千切ったのかわからん。
「シロン! 頼む!」
「あいっ! 頑張りますっ!!」
よし! 少しずつ、本隊と引き離せている。
今のうちに、作戦を考えよう! とにかく、意外な展開の連続で、ノープランときてる。俺も頑張れ!
繰り返しになるが、全身を海水でコーティングしてるフォルネウスに電撃は効果が薄い。十八番の雷王撃砕嘯が使えないのはキツイ。
残る手は、火炎か、氷結か。......よし、無理やり再現の見様見真似だが、あれを試してみよう。
「水精水上浮!!」
まずは、三次元の動きを封じさせてもらう! こいつは、沈めなくなる魔法だ。アドバンテージを奪わせてもらうぜ!
「各自、フォルネウスを包囲! クコは後方待機! 全方位から攻撃!」
五方向から斬る・殴る・刺すすりゃ、誰かは当たるわけだが......。
「させるかよォ! クソ○ッチどもぉぉぉッ!!」
津波を起こすフォルネウス! くそ! バランスが!
「水精水上浮!!」
これで、沈まなくなる。とりあえず、海にドボンだけは避けよう。
「小賢しいなァ! これならどうよォッ! 水抉穿槍撃!!」
今度は、水の槍が多数襲いかかってくる!
「シロン、頼む!」
「あいっ!」
見事な体捌きで、水槍を避けていく。頼もしい相棒だ。
なんとか接敵した! 燃え盛る魔剣で斬る!
こいつ、ブヨブヨでうまく斬れない!? 特に打撃攻撃のナンシアとフランが辛そうだ。
賦術火炎刃の熱傷で地味にダメージは入ってるが、相性がどうにも悪い!
「ヘェン? 大口叩いといて、そんなもんかよ、○ィィィィィッチ!!」
フォルネウスのヒレが、サン、ナンシア、パティを打つ!
、一発あたりのダメージ量が、不公平にも程がある!
「強撃渦水流ァァァッ!!」
フォルネウスの魔法で、渦潮が我々を襲う!
水精水上浮のおかげで沈まないのは幸いだが、回転で身動きが取れん!!
この状態で、あのヒレをもらうのはキツイ!
「助けてくださいいいい! 目が回りますううう!!」
クコ、耐えてくれ! 俺も無策ではない!
「氷獄......殲滅嵐ォッ!!」
あのシャックスが、最後の方にぶちかました氷結魔法だ!
こいつらの魔法は理学魔法とは構成が違うが、見様見真似で復元してみた!
「てめ......え......それは......シャックス......の......」
そして、効果はテキメンのようだ!
こいつが魚の仲間かどうかは知らんが、そうであれば急激な温度変化に弱いはずだ。そして、ビンゴ!!
氷獄殲滅嵐による冷却に、力をひたすら注ぐ!
「やってくれ! みんな!」
渦が弱まっている。
「超力賦活草!」
まずは、クコのバフ! 力がみなぎる!
みんなにも冷気のダメージが入るが、ノーダメージで勝てるほど、イージーな相手じゃない!
ナンシアの燃え盛る拳のラッシュが、やつを焼き魚にしていく。冷却と、炎熱のダブルパンチだ! これはキツイだろう、変温動物!
そこに、フランのモーニングスターがストライク! ぶよぶよの体にも、徐々に効いている。
サンも、ダガーによる手数でダメージを稼いでいる。頑張れ!
そして、パティの長槍が、我々では手の届きづらい上部を攻めていく。
氷獄殲滅嵐の力が、臨界点に達したらしい。体力も限界だ。水上に倒れ込む。
「せめて......」
フォルネウスが水抉穿槍撃を行使しようとしたようだが、不発に終わる。
皆が、燃え盛る武器で、叩き、刺しまくると、霜がかかったフォルネウスの体に、ヒビが入っていく。そして、ナンシアの渾身の力を込めた一撃で、フォルネウスは砕け散った!!
「優勝した!!」
シロンが歓声を上げる。
「地獄で会おうぜ、ベイビー......」
一方こちらは、元気なシロンと正反対に、意識が飛んだ。
◆ ◆ ◆
なんだろう。頭を撫でられている......?
うっすらと目を開けると、心配そうな表情のパティ、そして皆の姿が視界に映る。
「ここは......?」
「砂浜です。ロイさん、昏倒しちゃって......無茶しすぎですよ」
パティの声は、どこまでも優しい。
やはり、見様見真似とはいえ、凶鳥王の奥義魔法。相当スタミナを削られたようだ。
「これ、飲めますか?」
クコが、コップを差し出してくるので、それを飲む。甘い。砂糖水だ。
ワイト王の城を思い出すな。あのとき、俺を膝枕していたのは、ナンシアだったが。
「冒険者、ロイ・ホーネット。貴公の協力に感謝する。城にて歓待したいと、女王様の仰せだ。回復したら、来てくれ」
兵長に告げられ、立ち去る彼を見送る。
「アイツの、ゴーグルとヘッドフォンは、回収できたか?」
「あの、よくわかんない装飾具ですよね? ロイさんが必要とするだろうと思って、そこまで曳航してきました」
さすがだ、気が利くな、パティ。
まだ少しだけ、こうしていよう。とにかく、疲れた......。