第六十六話 魔導剣士ロイ、海魔王と相対する
敵は、魚の頭に鱗の生えたグロテスクな人型の魔物だ。それがまた、槍持って、グロい魚に乗っている。
「あれはなんだ? シロン!?」
「ハイッ! ディープ・ワンです! よく船を襲ったりしてます! シロンたちも、手を焼いてます! もうね、○しますよ。死は救済なんで」
最後に物騒なこと言ったぞ、このイルカ。
それはともかく、接敵だ。海兵隊と一緒になって、突撃!
得意の重武装が使えないパティは、辛そうだ。代わりに、あまり使う機会のない長槍が大活躍しているが。
実は、この状況がやりにくいのは、パティだけではない。というか、俺が負けず劣らず辛い。
奴らは、全身が海水で濡れている。そこに、こやつらへ雷王撃砕嘯を叩き込んでやるとする。
どうなるか?
電撃のエネルギーは、表面の海水を伝って海に流れてしまい、ただの無駄撃ちで終わる。
フェイバリット魔法が使えないとは、実にやりづらい。
とりあえず、賦術火炎刃で友軍を支援だ。
こいつの炎は、水中でも炎上し続けるスグレモノ。焼き魚を作りまくってやろうじゃないの。
人馬一体ならぬ、人イルカ一体となって、怪魚野郎どもを斬り伏せていく。
ほんとに、シロンのコントロールは上手いな。とても安定して戦える。
しかしこいつら、倒しても倒しても湧いてくるな。海中の連中はマーメイドに任せて、水上に出てきたのを、もぐら叩きだ!
◆ ◆ ◆
かなりの戦闘時間が経った。水上は、敵味方の死体で大変凄惨な有様となっている。
そこに、身長二メートルはあろうかという、ボス格っぽいディープ・ワンが、護衛を多数連れて浮上してきた。
手にした石版をなぞりながら、魔法の詠唱をするボス。すると、敵味方の死体が、黒い光 (矛盾した表現だが)となって石版に集まり、嫌な予感のするエネルギーを蓄えていく。
なんかな。なんか嫌な予感しかしないんだ。しかも、不思議と既視感を強く感じる。
ボスの詠唱しているのは、理学魔法......俺のような魔導書持ちが使うやつで、その内容の禍々しさから、間違いなく禁術・暗黒魔法。しかも、詠唱を必要とするということは、儀式魔法だ。大量の死体が、生贄として集まるのを待っていたのだろう。
「散開! みんな散開しろォ! なにか、とてつもないやつを呼び出すつもりだッ!!」
この、背筋を伝う嫌な感じ。あの凶鳥王を彷彿とさせる。
詠唱完成前にボスを殺れればいいが、手下の数が多すぎて、届かない。
クソッ、雷王撃砕嘯を、使えさえすれば!
「海魔王召喚儀!! ギギッ!」
手をこまねいているうちに、詠唱が完成してしまった!
フォルネウスだと!? 何が出てくるんだ!?
ディープ・ワンどもの後ろに、渦潮が発生する。散開を呼びかけ、部隊長がそれを信用してくれたから良かったものの、包囲を続けてたら、かなりの味方が、あれに飲み込まれていたはずだ。
渦潮から、ひれのついた、巨大な球体がせり上がってくる。シャックスの同類だと、カンが告げている!
「お~ハロ~。楽しそうなこと、やってんじゃねェか。いっちょ、混ぜろよ~」
ディープ・ワンどもが、「フォルネウスサマ! フォルネウスサマ!」と歓喜の声を挙げる。
どうやら、このデカブツが、フォルネウスで間違いなさそうだ。
「おれっち、最近、兄弟を殺られて機嫌わりーからよォ、暴れさせてもらうぜェ~!」
殺されたという、こいつの兄弟。まさかな。いや、義兄弟ってやつか!
「シャックスのぶんまで、暴れて暴れて、暴れまくってやるぜェ~ッ!!」
異界知識でいうならば、シュノーケル付きの水中ゴーグルと、ショッキング・ピンクのヘッドフォンを装備した、シャックスに負けず劣らず、ふざけた風体の大怪物。
その海魔王フォルネウスが、戦場に響き渡る大声で吠えた!!