第六十八話 魔導剣士ロイ、女王のもてなしを受ける ―前編―
「姉貴~。女王サマのパーティーに行こうぜ~」
「郵便の手配をしてからな」
現在、パティと一緒に、急ピッチでベイシック卿への手紙を書き進めている。
パティはイラスト担当だが、元から丸っこいやつだったので、そう実物と変わらないデキになるだろう。
「ベイシック卿に報告する」「女王様の歓待にも応じる」
「両方」やらなくっちゃあいけないってのが、「冒険者」の辛いところだな。
「ロイさん出来ました!」
「サンキュー! こっちもフィニッシュだ! みんなは、一番早い馬車を手分けして手配してくれ!」
「わかりましたわ!」
フランを筆頭に、皆が外へ出ていく。
「おつかれ-」
手紙を書き終えたので、パティと、手のひらをぺしっと打ち合う。
「いえ、ボク大したことは」
「しかしなんだな、この状態の俺だと平気なんだな」
「あ、そうですね......。やっぱり、女性だというのが重要なんでしょうか」
複雑な心境だな。
「ロイくん、ルンドンベアまで六日で行ける馬車が見つかったよ!」
おっと、戻ってきたナンシアから吉報が。
「でかした! 素性は信用できるのか?」
「馬車ギルドのAクラス証持ってた!」
「よし、そいつに依頼だ!」
さっそく、フォルネウスのゴーグルとヘッドフォン、そして手紙を預ける。
卿への要求は、シャックスの報酬と同じだから、嫌とは言うまい。
「さて、女王サマの歓待に応じる用意ができたぞ」
「ロイさん、まさかその出で立ちで出席なさるつもるじゃありませんよね?」
「え......?」
フランが、ジト目で見つめてくる。
「やーっておしまい!」
「ほいほいさー!」
しゅびっと、敬礼するサン。
フランの号令の下、身ぐるみ剥がされる俺でした。あーれー。
◆ ◆ ◆
「ほんとに、この格好で出席するのか......?」
「当たり前でしょう」
フラン師匠の有無を言わせぬ言葉に。とほほ。
「お初にお目にかかります。『スティング・ホーネット』のリーダー、ロイ・ホーネットでございます」
階段を上がり、女王様の眼前で、黒いパーティードレスに身を包み、カーテシーをする。いつの間に、こんなの用意してたんだ、こやつら。
以下五名、観劇の際に用いたドレスで、女王に礼をする。
「いや、しかし。女ばかり六人のチームとは、女性を尊ぶパルピアとしては、愉快な限りよ。着席せい」
齢三十半ばと思われる陛下が、微笑みながら、促す。
陛下の命で、一同着席。人魚姫たちも、高きに満たされたプールで、シロンたちとともにくつろいでいる。地上から、宮殿まで水を満たす仕組みがあるのだろう。
しかし、女性にカウントか......。まあ、無駄に場を乱す必要もあるまい。
「ありがたきお言葉に存じます。パルピアは、女性の地位が高いのでありますか?」
「うむ。古来より、ロード・カナロアと心を通わせる存在だとされている。本祭も無事終わり、一息吐いておるところだ。さて、英雄殿たちをもてなさなくてはな。持って参れ」
女王の言葉とともに、料理と酒が運ばれてくる。
女性を尊重とはいうが、兵長は男性であったし、女尊男卑ではなく、男女平等の国なのだろう。
この国に感じる、開放的な感じは、きっとそのおかげだ。
それはさておき、卓上の料理を見ると......?
「城下町でいただいた料理とは、ずいぶんと趣が異なるようですが?」
なんというのか、いかにも土着の料理と言う風情。
「左様。よく気づいたの。城下町で好まれているのは、ラドネスブルグやバーブルなどとの国交から生まれた、比較的新しい料理でな。今回は、英雄殿たちに、古典的なパルピア料理を愉しんでもらおうと思っての。さて、前口上はこんなものかな。愉しもう」
まず運ばれてきたのは、なにかの肉を細かく割いたものと、紫のペースト。
肉は......豚だ!
「それは、バナナの葉ごと食べてくれ」
葉も......。しかし、しょっぱいな。
「その、紫の『ポイ』と一緒に食べるのだ」
ほうほう。......これは、芋のペースト? なるほど、塩辛さが中和される。