第六十九話 魔導剣士ロイ、女王のもてなしを受ける ―後編―
「最近はロコモコ人気で牛肉に押されつつあるが、パルピアでは豚のほうが伝統的食材での。こうして、吉事に振る舞われる」
「なるほど。これは良い味わいです」
なんだろうな。やはり土着。現地で親しまれてきた味を感じる。特に、このポイなんかそうだ。ほかではちょっとお目にかかれない。珍しい体験ができたなあ。
「紅い珊瑚亭」の食事も良いが、こういうのも、まさにオツ。
ここで、酒をいただく。......カクテルではなく、ココナッツそのものの酒だ!
「お気に召したかな?」
「はい。どれも、ラドネスブルグでは味わうことのないもので......。大変美味しいです」
続いて出てきたのは、緑色のペースト。
「こ、これは......」
フランが固まってるが、こちらは構わずいただく。
......なにかの葉を蒸したものと、タコやイカ。それをココナッツミルクで和えている。
見た目のわりに、コリコリしてて美味い。酒が進むな、これは。
躊躇していたフランも、美味そうに食べる我々を見て意を決したか、えいやっ! と口に運び、その美味を理解したようだ。
「陛下、こちらはなんという料理ですか?」
まさしく、食いついたフラン。
「スクイッド・ルアウという。ルアウ......タロイモの葉を蒸して、柔らかくしたものだな。それにタコやイカの細かく切ったのを入れ、ココナツミルクで和えたものだ。見た目の割に美味かろう?」
「こほ......はい。正直、最初躊躇しましたが、食べ物は見た目で判断してはいけないと理解いたしました」
フランさん、すっかり気に入ったようだな。
次に出てきたのは、何かの葉包み。
「それは、一枚目の葉だけを除いて、全部食べてくれ」
中には、更に葉包みが。鶏肉に豚肉、後は、カツオか? これを、先ほどのルアウ......こちらはペースト化してないが、それで包んでいる。
シンプルに、肉の三重奏が美味い。しかし、このルアウというのはいい香りがするな。
「それは、ラウラウという。外国人にも食べやすいと思うぞ」
「はい。実に美味しいです。城下町の新興料理もいいですが、伝統食も良いものですね」
「そうだろう、そうだろう。私は、この味が失われつつあるのが、悲しくてな」
少し、座がしんみりする。
「いや、これは失敬。盛り下げてしまったな。まだまだ、料理は続くぞ」
こうして我々はパルピアの伝統料理を堪能していく。どれも美味い。たしかに、これが喪われるとしたら、悲しいことだ。
人魚姫たちのほうに目をやると、我々と同じものを愉しんでいた。なにか食べさせてもらうたび、シロンと仲間たちが、目を椎茸の切り込みのように十字に輝かせ、喜んでいる。
こうして、王城での一夜は楽しい夜会となった。
◆ ◆ ◆
しばらくパルピアで沈没船探検などの冒険に明け暮れていると、ベイシック卿よりの報酬とともに、「ルンドンベアに戻って欲しい。西のアハ=イシュケに同行してもらいたい」という書簡を受け取った。
西か。そろそろルンドンベアも寒さが和らぐ頃か。
「というわけだ、諸君。故郷を経由して、西へ行くぞ」
「いやー、パルピアから離れるのがもったいないっすね~。でも、女将さんの手料理も恋しいっす」
などと言いながら、旅支度を整える。
「お姉サン、行っちゃうノ......?」
精算を終えて出ていこうとする我々を見て、ヒカタが悲しそうな顔をする。
「そう、悲しそうな顔をしないでくれよ。また、冬に来ようと思っているからさ」
「じゃア、チョット顔を下げテ」
言われた通りにすると、不意打ちでキスされてしまった。唇同士で。
「また会えル、オマジナイ! 元気でネ!」
寂しいだろうに、気丈な子だ。しかし、ファーストキス、奪われてしまったな。
後ろで、サンとナンシアが、なんかブツブツ言ってて怖い。
「やれやれですわね。その体も、元に戻しませんと」
フランが、呆れたように言う。
「ボクは、今のロイさんのほうが、親しみやすいかなあ」
「わたしは、どっちでもイケますよ?」
クコは黙っててくれ。
さーて、クコはさておき、ラドネスブルグに帰還だ!