第四十七話 魔導剣士ロイ、一夜を共にする?
......はっ!
あたり一面の、雪景色。雪に埋もれて、意識を失っていたようだ。寒い。何より力が出ない。ベルトポーチに砂糖水があったはずだ。まずはそれを飲んで、少しでも体力を回復させねば。
水袋があった。横になったまま一気に飲み干し、人心地つく。
体を起こし、状況を確認する。あたりは夕焼けに染まり、ロッジは埋もれたのか、見当たらない。
仲間は無事だろうか。「おーい!」と呼びかけてみるが、返事はない。
不安に押しつぶされそうになるが、少し周囲を探してみよう。
防寒具を再度身にまとい、目印に長剣を突き立てる。この剣も、ぼろぼろになってしまったな。パティの槍があれば目立ってよかったのだが、彼女もろとも、どこへ行ったのやら。
ざくざくと周囲を探していると、雪に埋もれている毛むくじゃらの何かを見つけた。近寄ってみると、犬の鼻と口だ。いや、これはひょっとすると......!
急いで掘り起こすと、埋もれていたナンシアを発見した!
「ナンシア! 起きろ! 起きてくれ!」
体を必死に揺すると、彼女がうっすら目を開けた。
「ロイさん......?」
「そうだ、俺だ! とりあえず起きよう。こんなところに、埋もれたままでいるものではない」
力を合わせて助け起こすと、ぶるぶると犬のように体を震わせて、体毛の雪を払う。
「助かったんですね。ほかの皆さんは?」
「わからん。あそこに目印の剣を刺した。あれを見失わない範囲で捜索しよう。今、君の分の防寒具を出す」
防寒具を手渡し、山頂に向かって左へ歩いて行く。
「俺はこっちをぐるっと探す。君は、反対側を頼む」
「はい!」
着替え中の彼女を残し、再度雪面を眺め回して歩く。
......芳しくないな。我々が随分下の方に流されたのか、あるいはその逆か。
そのまま、目印の剣から離れないように、右回りにぐるりと周回してみるが、やはり手がかりはない。
そして何よりまずいのが、もう陽が沈みかかろうとしている。
「ナンシア!! 剣のところに戻ってくれ!!」
剣の下に戻りながら、近くを捜索しているはずの彼女に呼びかける。
「呼びましたか、ロイさん? あら、それは......」
雪のブロックを作っているところに、彼女が戻ってきた。
「今日はここで。イグルーを作ってビバークする。手伝ってくれ」
「でも! まだみんなが......」
「俺だって、断腸の思いだ。だが、陽が沈んでから動くのはとても危険だ。そのような愚を犯すわけにはいかない。無念だろうが、無事だと信じよう」
そう言うと、彼女は無言でブロック作りを手伝い始める。気持ちの整理は付かないが、俺の言葉が正論だと理解してくれたのだろう。
こうして陽が沈み切る前に、なんとか二人入れるイグルーを作り上げた。
中に入り、松明の束をベルトポーチから取り出し、燃やす部分を付き合わせて中心に火打ち石で点火する。
火は程良く燃え、我々はやっと暖を取ることができた。
二人で、人心地ついたため息をふうと漏らす。ナンシアは半獣状態のままだ。毛深い状態のほうが、多少暖かいのだろう。
とにかく戦闘からの雪崩泳ぎ、そして捜索、イグルー作りと、昏倒しないのが不思議なぐらい力を使い果たしているので、まずは体力を回復させるために、干し肉を焼く。
火が通ったので、ナンシアにポーチから取り出したフォークを渡す。しゃべるのも疲れるので、互いに無言で食む。
干し肉など取り立てて美味いものでもないが、この極限状態で食うと、至上の美味に感じられる。ゆっくり咀嚼し、そのありがたみを、しかと味わう。
鍋を取り出して、雪からお湯も作り、白湯で肉を流し込む。なんてことのない湯だが、疲労困憊の果てに飲むと、滋味深い。
「とりあえず、早めに休もう。俺たちは、体力を使いすぎた」
さらに、ポーチから毛布を四枚取り出す。
「そうですね。あの、ロイさん。私と一緒に寝ませんか?」
「はァッ!?」
唐突な発言に、思わず裏返った大声を上げてしまう。