第四十六話 魔導剣士ロイ、凶鳥王と相対する ―後編―
「グ......グムッ!?」
シャックスが、背中のボンベから炎を吹き出し推力を得ようとするが、こちらも負けじと、やつを引きずり下ろしていく。そこに二発目の聖王曙光輪の押し潰す力が加わり、ついに巨鳥は文字通り地に堕ちた!! 賭けに勝ったぞッ!
「うおおおおッ! 接近戦に持ち込めッ!!」
号令を下し、皆の得意武器に再び賦術火炎刃をかけ、突撃する。やつも氷刃を飛ばし応戦するが、俺たちの歩みは止まらない。クコから超力賦活草もかかり、力がみなぎる!!
「やっと、至近距離でこんにちはだな! お前にはロングソードッ!!」
力の限りを込めた斬撃を叩き込むと、やつの土手っ腹から、謎の黒い液体が飛沫のように上がる。これがこいつの血か? こんなやつにも血が通っているのだな。いや、そんなどうでもいい感心をしている場合ではない。
「やぁっ!」
パティが長槍でやつの目を突き刺し、ゴーグルをぶち抜く。激しい悲鳴! 先ほどまでの陽気さは、もうないようだな!
「やるねぇ......やりやがるねェ......ッ! 氷獄殲滅嵐!!」
やつが自爆覚悟で範囲魔法をぶちかましてくる。細かい氷の刃が吹き荒れ、全身を引き裂かれるが、回復はとにかくクコに任せて、シャックスをひたすらに切り刻む。防戦に回ったら負ける! 互いに防御などかなぐり捨てた、全てを攻撃につぎ込んだ総力戦だ!
「うおおおおおおおっ! 墜ちろよおおおおおッ!!」
この地上よりも、さらに奈落に叩き落としてやる!
全力で燃え盛る剣を振り抜くと、シャックスが黒い血飛沫を吹く。
サンも死角から、ダガーでダメージを与えていく。チリも積もればなんとやらだ!
そしてフラン。不器用な彼女でも、この巨体相手にはモーニングスターをぶちかまし放題だ! シャックスのガワが、ベコベコに変形していく。
ナンシアも拳を乱打し、シャックスを文字通りボコボコにする。
「やられっぱなしじゃよォ! いらんねえよなァーッ!! 結晶氷乱舞ィィッ!!」
巨大な雪結晶が、再び出現!
「致命傷だけは避けろ! クコを信じて、攻勢に出ろ!」
結晶に体を切り刻まれるが、クコの回復が、ガンガン追いつく。
「ええぃ!」
今回、魔法相手で盾役になれないパティは、俺たちの手が届かない、頭部を集中攻撃してくれている。
「いい加減墜ちろよ! クソバードォッ!!」
渾身の一撃を放つと、シャックスが漆黒の血飛沫を大量に吹き出す。
「コキュートス......」
シャックスが魔法を行使しようとするが、それは不発に終わった。ついに、やつの体力、いや生命力を削りきったのだ!
「おめーら強えなァ......敗けちまったなァ......おれ、死ぬなァ......だが、タダでは死ねねぇなァァ~ッ!!」
やつが今まで耳にしたことがない、凄まじい轟音で雄叫びを上げ、その巨体を崩した。
「やったのか......?」
剣を突き刺すが、ピクリともしない。シャックスは生命活動を停止、死んだのだ。だが、喜びの声を上げる気力も体力もねえや。
「皆さん、やったん......ですね?」
背後から、クコが確認してくる。彼女も、魔法の連発でへろへろだ。
「そうだよ。こいつは死んだ」
この未知の魔物は、結局どういう存在だったのか。とりえず、今は何も考えたくない。
「待ってください。何か、変な音がしませんか......?」
半獣状態のナンシアが、不穏な事を言う。しかし、確かに何か、地鳴りのような音がこちらに近づいてくる。
視線を音源の方に向けると、白い波のようなものが、こちらに高速で近づいて来ていた。雪崩だ!! あの断末魔のせいか! ふざけた置き土産して逝きやがって!!
「みんな、上流に向かって泳げぇーッ!!」
なにかの本で知った知識の一つだ。雪崩に巻き込まれたら上に向かって泳げと!
一難去って、また一難。必死に泳ぐ! くそッ! 泳いでも泳いでも、キリが......。