第四十五話 魔導剣士ロイ、凶鳥王と相対する ―前編―
「呼ばれて、飛び出て、ジャンジャカジャーン! おれ、シャックスってんだ。ヨロシクなァ~!」
怪鳥が、その見た目にふさわしい大きな、そして逆にふさわしくない、陽気な声でシャウトする。
「なんだよ、契約者のやつ、おっ死んじまったのか。まァいいや。なァ~お前ら、最高のグルメってなんだと思う?」
「......知るか」
好き勝手なことを言っているシャックスに、言葉を返す。何がしたいんだ、こいつは。
「ハラワタだよ、ハラワタ! 人間のハラワタほど、ジューシィでソソるもんはないんだぜェ?」
疑う余地がないな。誘拐殺人事件の教唆犯にして、悪魔教団の守護者はこいつだ。そして、これから俺たちを喰らうという宣告に他ならない!
「あんたは早く逃げろ! 賦術火炎刃! フラン、聖王曙光輪を!!」
拘束から解放された被害者に退避を促し、速攻で全員の飛び道具に、いつものやつをかける。
「聖王曙光輪!!」
聖光の輪がシャックスをすり潰す! しかし、効いていないわけではないようだが、ワイト王のときほどのクリティカルさは感じられない。
......あれで、悪魔の類ではないのか? ダイアーは、暗黒魔法を使っていた。
ああいうので呼び出せるとしたら、悪魔のはずだが......。
「あはァ! 悪くねェなァ! こいつァ楽しめそうだ!! 氷獄滅殺刃ァァァッ!!」
グォォンと重苦しく響き渡る、聞いたこともないような音とともに、シャックスの頭上に、不気味な赤黒い光を放つ、漆黒の不均等な形状の多面結晶体が現れ回転し、虚空に鋭利な氷の刃が無数に出現して、一斉に襲いかかってくる!
氷刃に切り刻まれ、ダメージで膝をつきそうになるが、なんとか持ちこたえる。冷たすぎるゆえか、逆に傷口が灼ける感触に襲われた。
サンやナンシアが、ひどい怪我を負いつつ飛び道具で応戦する中、命活癒術草が飛んでくる。助かる!
「雷王撃砕嘯ァァッ!!」
せっかく賦術火炎刃をかけたところだが、チマチマやってもしょうがない相手と判断し、速攻で必殺魔法を叩き込む。激しい雷光がシャックスを灼く! お前も灼けつくって感覚を体験しやがれ!!
「熱いぜェ! 熱くて死ぬぜェェェェッ! たまんねェなァ、おい!」
くちばしとゴーグルのせいでよくわからないが、やつは恍惚としているのだろう。雷王撃砕嘯を食らわせてこの余裕は、屈辱的だ。
「あァ~ッ! おれの昂りを受け止めてくれよォーッ! 結晶氷乱舞ィィィッ!!」
再びあの不気味な音が響き渡り、シャックスの頭上に、不規則な多面結晶体が現れる。そして、虚空に扁平な六角形に、派手な飾りのついた透ける物体......俺はあれが異界脳で、巨大な氷の結晶と理解できるが、回転するそれを、あらゆる角度から飛ばしてきた!
雪に埋もれた悪路故に、回避が困難を極める。
「ぐぅッ!!」
腕を深く切られた! すかさずクコから回復魔法が飛んで来るが、このままではジリ貧だ。
やはり、向こうが飛んでおり、こちらは深雪に埋もれているという、アドバンテージの差が大きい。飛び道具に賦術火炎刃をかけたものの、俺たちは正直あまり飛び道具は得手ではない。
あいつを地上に引きずり下ろしたい。そうすれば、互角の戦いができるやもしれん。
アレが使えるか? やつの飛行力に勝てなければ体力の無駄、分の悪い博打だが、試す価値ありと見た!
「フラン! やつを墜とすのを手伝ってくれ! 強重結縛糸!!」
魔導書がバラバラとめくれ、シャックスの真下に黒円が広がっていく。円からさらに、黒い直糸が幾本も無数に伸びていき、巨鳥を捕らえる。いけるか!?