第四十二話 魔導剣士ロイ、作戦を立案する ―前編―
雪山の登山ということもあり、まずは本格的な装備を整えることになった。話を聞くぶんには、それほど険しい山ではないようだが、雪山をなめるのはよくないことだ。これで、いささか時間を食ってしまい、アタックは翌日に回すことに。
昨日の店でさらに一晩明かし、早朝からアジト目指して登山である。
山は雪が積もっており、一面の銀世界と化していた。アジトと目されるでかいロッジを発見したが、見張りと思しき、黒尽くめのフードを被ったローブ姿のやつが、四人ほど確認できる。岩陰に隠れて様子を見ているものの、どうしたもんかな。
「構成員すべてがあそこに集結しているとも思えないが、百人とかいたら厄介だな。強行突破は避けたいところだが、何かアイデアはないだろうか?」
皮手袋を外し、温かい吐息をかけて、再度はめながら皆に問う。
「オレがいっちょ行って、火ィ点けてこよっスか?」
物騒な発想だな、マイシスター。
「いや、それは誘拐された者がいた場合、問題がある。仮に点け火をするにしても、生存している被害者の有無を確認してからだな。だが、ひとまずスニーキングによる偵察には賛成だ。もっとも、この見開きのいい場所で、どう忍び寄るかという問題はあるが」
「あの格好に変装......とかどうでしょう?」
「服を、どうやって調達するんですの?」
クコの提案に、フランがダメ出しする。変装か......変装なあ。
「ひとつ、方法がないでもない。俺が幻覚魔法で、信者の姿をみんなに被せるというものだが」
腹案を述べると、一同注視してくる。
「声でバレません?」
「どうだろうな。百五十人いる構成員の声の違いに、気づくとも思えないが。まあ、これが幹部会とかだったらまずいが。そのためにも、まずは偵察だな」
不安視するパティに、安心材料と懸念、そして、さしあたっての方針を告げる。
「あの......偵察なんですけど、私が狼になって、見てきましょうか?」
声を上げたのはナンシア。一同、彼女を見る。
「私が狼になって見に行った方が、サンちゃんより目立たないと思うんです」
なるほど、その手があったか。便利だな、人狼。
そのようなわけで、まずはナンシアの偵察報告を待つ運びとなった。
◆ ◆ ◆
視点は、ロイからナンシアへ移る。
「皆さん、行ってきますね」
狼に姿を変え、やや遠回り気味にロッジに近づいてみる。見張りがこっちを一旦見たけれど、興味なさげに視界から外す。どうやら、「怪しまれない」という部分はクリアできたみたい。
ぐるりと裏手に回ってみると、そちらには小さめのドアと、見張りが一人。うーん、いまいち隙がない......。狼状態なら聴力を最大限に発揮できるから、可能な限り近づいて耳を澄ませてみよう。
何か、大人数による詠唱のようなものが聞こえる。感覚で判断すると、ざっと数十人。これ以上のことは、よくわからないな。風下に行けば、何か匂いと音で、もっとよくわかるかも?
目立たないように遠回りしようと、結構な距離をてくてく歩いていると、突然足元の感覚が消滅! きゃー! なにごとー!?
◆ ◆ ◆
うう~ん。私は特殊な条件でしかダメージを受けないけど、どうも結構な高さを落ちたみたい。頭上の穴の向こうに、青空が見える。
暗くてよく見えないけど、周囲を触った感じで、はしごのかかった穴なのだとわかる。そして、はしごの反対側には、横穴が続いているらしい。
一度人の姿に戻ってここから上がるべきか、奥に進んでみるべきか......。
奥の方から、かすかに人の匂いと、何かの音を感じる。
先に進むべきだと、私のカンが告げている。そもそも偵察に来たのだから、このまま戻るという選択肢はないと思うし。
人の匂いを感じる方に進んでいくと、行き止まりに突き当たった。正確には上に縦穴が伸びていて、はしごがある模様。
ここは、チャレンジでしょ!