第十四話 魔導剣士ロイ、運命的な出会いをする!
村人総出で夜中の広場に集まり、人狼兄の処遇についての話し合いとなった。
篝火の光に、厳しい表情の人々が映る。人狼兄の名はタクラム・ルガールというらしい。てことは、妹さんのフルネームはナンシア・ルガールか。
当のタクラムはといえば、俺たちの手で厳重に束縛されても半獣化を解かず、不敵な表情を浮かべながら地べたに転がされている。
ナンシアさんはタクラムの肉親ではあるが、今しがた闘ったこともあり、発言力はないが連座は免れているといったところ。彼女の方は半獣化を解き、村娘モードに戻っている。
村人とナンシアさんの話、そして当のタクラム本人の自白を総合すると、タクラムとナンシアさん、そして彼らの父は去年村にやってきた入植者らしい。
兄の内面はこのように粗暴であったが、対外的には善人を演じていたようだ。そんな彼を、父娘はよく抑えていたそうな。
そんな折り、一週間前に父が他界した。ストッパーが外れたタクラムは人狼としての本性を顕にし、人食いに及んだとのことだ。
一回目の凶行は、ナンシアさんが不審に思いつつも、証拠がなかったので発覚せず、二回目の犯行の前には、ナンシアさんは行方不明になっていたという。戻ったのはなんと今日だとか。
そんな彼女を、共に人食いの道へ誘ったことから、連続殺人事件の真相が露見し、先ほどの壮絶な殴り合いに至った次第。間抜けといえば間抜けな話ではあるが、笑い話にはとてもできない。
「お前らだって、豚や牛を食うだろう! 俺が人を食って、何が悪い!」
とはタクラムの弁だが、哲学的な話はさておき、人のコミュニティで人食いに及んだら、それは罰されるというもの。
村民の一部から、死刑を求めるコールが沸き起こる。その声を聞き、ナンシアさんは顔を背けた。両者の心中を思わざるを得ない。
「みんな落ち着いてほしい。タクラムは官憲に引き渡す。我々は暴徒であってはならない」
村長が凛とした声で皆を抑え、私刑を阻止する。ナンシアさんの表情は顔を背けたままなので伺えないが、苦渋の表情であることは明白で、わざわざ覗き込んで確認する悪趣味もない。
しばらく村長と過激派の問答が続いたが、なんとか引き渡しの方向で話がまとまったようだ。
タクラムの処遇の話が終わると、今度はナンシアさんの扱いについて議題は移った。侃々諤々に意見が飛び交い、強硬派の村人からは追放せよという主張が出る。
「待ってほしい。ナンシアが何をしたというのだ」
村長が無茶な追放論者を諭すが、それに異を唱える声が上がる。
「いいえ、村長様。私が村に残っては、軋轢や禍根が生じます。お気持ちだけありがたく受け取らせていただき、私は村を出ます」
声の主は、他ならぬナンシアさんである。その表情は、しっかりとした決意に満ちたものだった。
「しかしナンシア、君は何も......」
押し留めようとする村長に、黙ってゆっくり横に首を振る彼女。この決意は覆せぬと悟ったか、村長はそれ以上、説得を試みようとはしなかった。
一連の流れに関しては俺も思うところがあるが、よそ者が村の自治に踏み入るのはよろしいことではない。ここは彼らの判断に任せるのみだ。
ともかくもここに事件は解決し、報酬が支払われた次第である。
◆ ◆ ◆
翌早朝、王都に帰るために村を出立すると、木漏れ陽差す森の中で、見覚えのある後ろ姿に遭遇した。
「ナンシアさん!」
彼女が振り向く。予想に反し、コンパクトな手荷物だ。
「皆さん。その節は、お世話に......」
深々と礼を返してくる。
「行く宛てはあるんですか?」
不躾かも知れないが、思うところがあり、直球で尋ねてみた。
「村長様が、かさばるものはお金に変えて引き取ってくださいましたので、これを元手に王都で職を探そうかと思っています」
本当に村民想いの人だなあ。
「その、ナンシアさん。あなたさえよかったらですが、俺たちと一緒に冒険者になりませんか?」
予想外の申し出だったのだろう。目を丸々と見開く彼女。戦力としてもそうだが、なにより控えめな性格がいたく気に入った。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします」
再び深々とお礼をする彼女。かくして新たなメンバーが加わった。堅い握手を交わしたのち、我々は再度王都に歩を向けた。
「よろしく、ナンシアさん......いや、ナンシア!」
◆ ◆ ◆
視点は、ロイからナンシアへ移る。
「その、ナンシアさん。あなたさえよかったらですが、俺たちと一緒に冒険者になりませんか?」
ロイさんからの、思ってもみなかった申し出に、思わずびっくり。私と彼は、運命のようなもので繋がっているのかも知れないと考えるのは、乙女過ぎ?
うっかり狼の姿で森林浴をしていたら、四肢を罠に挟まれてしまった。どうすることもできず、途方に暮れていた私を助けてくれたのが彼。なにかこう、胸がかぁっと熱くなるものを感じてしまいました。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします」
もちろん、私の返事はYESです!