第八十三話 魔導剣士ロイ、未確認生物を探しに行く ―後編―
ルンドンベア北東にある森林地帯にやって来た我々。
昨日も話にでたが、全長三メートルだったり、小さかったり、鱗でびっしりだったり、あるいはもふもふだったりと、目撃証言が一致しない。
ではどうやって「ラドニー」を特定するかというと、ベイシック卿の脳内事典に載ってなかったらそいつがビンゴだ。
とはいえ、相手は未確認生物。まず、折良くでてきてくれるかどうか......。
「いましたぞ!」
出たのかよ! 早え!
前方を見ると、藪の中で、なにか白い物体が蠢いているのが見えた。
大きさは......よくわからない。皆に、飛び道具を渡していく。幸い、こっちは風下だ。
一斉射! 命中!
するとやつが、心臓が握りつぶされるような、強烈な悲鳴を上げる!
や、やばい......心臓が......はぁっ......はぁっ......。
はー......。逃がしたかと思ったが、まだ白い影が見える。
「追うぞ!」
幸い、我々の方が足が早いようだ。追いついた!
観念したのか、やつがでかい図体を持ち上げる。
「卿、これは......!」
「巨大マンドラゴラですな!」
人型をした、白い植物。しかし、うろついてるとは何事だ。普通は土中に埋まってるもんだ。
これがラドニーかどうかは知らないが、こんなでかいマンドラゴラは初めて見る!
「狩りますか!?」
「よろしくお願いしますぞ!」
問題は悲鳴だ。こいつを食らうと、最悪死ぬ。さっきはかろうじて耐えたが......。
いや、険しきを冒さずして、何が冒険者か! 依頼人からのOKもでた!
「賦術火炎刃は使わずにいくぞ! 素材としての価値がなくなる!」
くそ! こんなのを相手するんだったら、耳栓を用意してくるんだったな!
「こいつは、手足さえ切ってしまえば無力化できる! 頼むぞ!」
ナンシアが、飛びつき腕十字を極める。勢いで倒れる彼女とマンドラゴラ。
マンドラゴラに関節なぞないが、とりあえず左手の自由は封じた!
「うおおおお!」
左手に刃を入れると、おぞましい絶叫を上げる!
はぁっ......はぁっ......! よし! 左手もらった!
左手を失ったが、逃げようとするマンドラゴラ。逃がすか!
「やあっ!」
パティが後ろから槍で串刺しにする。
とにかく負傷するたびに悲鳴を上げるのがキツイ! なるべく手早く片付けるしかない!
今度は、ナンシアが左足を極める!
「いただき!」
サンが、ダガーでえぐり切る。
これでマンドラゴラはほぼ行動不能だが、四肢を切り落として完全な形にしたい。
「私たち......」
「やることないですねえ......」
所在なさ気なフランとクコ。すまんな! モーニングスターでぐちゃぐちゃにされてはかなわん!
ともかくも、ナンシアが四肢を封じ、それを切断することさらに二回。マンドラゴラは行動不能になった。
「はぁ~っ......。なんとか犠牲が出なくてよかったですね」
息絶えたマンドラゴラを、ベルトポーチにしまう。こいつは、非生物......アンデッドも負の生命力で動いているので、生物に入るが、それはさておき。非生物ならなんでもしまえるので、大変便利。切り落とした手足も、きちんと持って帰る。
「卿、いかがしましょう。これはラドニーにあたるのでしょうか?」
「ふぅむ......。ラドニーかはわかりませぬが、大変珍しい! 手足のどれかを一本いただけますかな?」
「わかりました」
かくして、ひとまず引き返すことに。
明日早く発表する予定との卿と別れ、セイブル商会へ。
「まあ、これはご立派な......!」
たいへん太ましいマンドラゴラに、うっとりするベル嬢。
「ロイさん」
「黙れ」
なにごとか言おうとするクコを制する。どうせ、ろくでもないことだ。
「これで、いかがでしょうか?」
「十分すぎます! ぜひ、買い取らせてください!」
依頼完了! やれやれだな。
その後はモロオさんにも面会して、その旨を告げた。
しかし、ラドニーか。このマンドラゴラだったのか、あるいは......。
今考えても、せんもないか。宿に帰投して、祝おう。