第八十二話 魔導剣士ロイ、未確認生物を探しに行く ―前編―
今日は、モロオさんにお茶に呼ばれている。彼が家に招くというのは、なにか厄介事の種を感じるな。
あと、そこにガッツリ飾られてるメイド俺の萌え絵、外してもらえませんかね......。
「君たちにきてもらったのは、ちょーっとした頼み事があってね」
ほらきた!
「セイブルさんのとこが、ちょーっと怪しいらしい」
「ええと。まず、セイブルさんとやらから話していただけませんか?」
茶を一服。
「そうだね。一言で言うと、僕の取引先の一つでね。魔物素材を扱っている結構な大店なんだけど、最近いい素材が入ってこなくて焦げ付きそうなんだ。セイブルさんとこが倒れると、僕も結構なダメージを受ける」
「つまり、なにか上質な魔物素材が欲しいと」
「話が早くて助かる。受けてくれるなら、紹介状を書くよ」
皆の様子を見る。不服なさそうだ。
「では、まずは先方で話を伺ってからということでよろしいですか
?」
「もちろん。じゃあ、一筆したためさせてもらうよ。失礼」
書斎に向かったであろう彼。しかし、魔物素材か。何がいいだろうね?
◆ ◆ ◆
「ここか」
商業地区の一角に、セイブル商会はあった。
「失礼します」
断りを入れて中に入ると、様々な魔物素材が陳列されていた。さすがに、ユニコーンの角といった禁制品はないが。
「いらっしゃいませ。何をお求めでしょうか?」
「あ、いや。モロオさんからの紹介で......こちらを」
店員に書状を渡す。一度礼をし、奥に立ち去ると、ややあって戻ってきた。
「こちらへどうぞ」
奥に案内されると、赤髪ツインテールの少女が佇んでいた。書き物の途中だったようだ。
「はじめまして。ベル・セイブルです」
「はじめまして。ロイ・ホーネットです」
皆で、自己紹介していく。
「ベルさんが、お一人で切り盛りを?」
「いえ。恥ずかしながら、父母は金策に走り回っておりまして」
うーむ。本当に台所事情が厳しいのだな。
「お茶をどうぞ」
まだ幼さの残るメイドが、お茶を配膳してくれる。
「いただきます」
ほう......芳醇な香り。いい茶葉だな。台所事情は苦しいようだが、客人に失礼はできないという配慮か。
「不躾ですが、さっそく話に入らせていただいてよろしいでしょうか」
「はい」
「魔物素材が必要とのことですが、どのようなものをお求めで?」
彼女が、ティーカップをソーサーに置く。
「ドラゴンは討てますか?」
「さすがに、まだそこまでの自信はないです」
こちらも、カップを置く。
「しかし、シャックスやフォルネウス、ダンタリオンといった、奇怪な敵を倒されたとか」
「そうですね。強敵でした。あのレベルなら......といってもピンとこないでしょうが、かろうじて討てると思います」
「そうですか。珍しい素材なら、なんでも良いのですが」
ざっくりとしたリクエストだなあ。
「そういうことでしたら、詳しそうな人物に心当たりがあります」
「ベイシック卿でしょうか」
おや、察しが良い。
「はい。彼とは懇意にしていますので、頼ろうかと」
「私も、職業柄懇意にしております。一筆したためましょう」
そう言うと、机に戻り、手紙を書く彼女。
「こちらをお持ちください」
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
手紙を預かり、退店する。
さて、ご在宅だといいのだが。
◆ ◆ ◆
「これはこれは。セイブル嬢の件ですか」
幸い、ご在宅であった。
「はい。なにかお知恵を拝借できればと」
「ふむ。珍しい魔物......」
考え込む卿。
「おお! ちょうど、新鮮なのがありますぞ!」
「新鮮」
「ラドニーという魔物なのですが、やれ身の丈三メートルもあるとか、あるいは逆に、極小の生物だとか。まあ、様々な噂のある魔物でしてな」
ジェスチャーを交えて語る彼。
「要するに、未確認生物である、と」
「左様。吾輩もぜひ、捕獲して研究したいところ。一緒にいかがですかな?」
渡りに船だ。
「では、契約を」
こうして、滞在費は卿持ち、素材になりそうなものは我々のものという話になった。
当たりがでるか、外れがでるか。あまり時間をかけてもいられない。どうなることですやら。