第七十五話 魔導剣士ロイ、話に乗る
「その......」
「単刀直入に言おう。もしかすると、生き返らせられるかもしない」
ステルベンさんの言葉に、心が揺らぐ。
「本当......ですか?」
「百%は保証できない。それでよければ」
「......ぜひ!」
「ロイさん!」
ガタンとつい立ち上がると、フランに裾をつままれた。彼女を見ると、首を横に振る。
言わんとすることはわかるよ。君は神官だ。
でも君には、あんな酷い死に方をした家族はいないだろう。その遺族の悲しみはわからないだろう。
不意に、鐘が鳴った。
「おっと。講義を開かねば。三日後は、完全にオフでね。その時に、蘇生を行おう」
「よろしくお願いしますっ!」
深々とお辞儀。退出する。
◆ ◆ ◆
「ロイさん、しっかりなさいませ。死者が蘇るなど、神の摂理に反していますわ」
「黙っててくれ。君に横合いから口を挟まれるいわれはない」
「なっ......!」
さすがにちょっと、言葉がきつかったかもしれない。けど。
「兄貴......ちょっと雰囲気怖いぜ」
サンが、心配そうに見上げる。
「まあな。訳アリなんだ」
「それ、お姉ちゃんに話したら、少しは楽になる? 受け止めるよ?」
「楽にはならないだろうな。でも、パーティーに秘密があるのは、よくないことだと思う。宿で話そう」
緑の森亭に帰投すると、幼少期の凄惨な出来事を話して聞かせる。皆、血の気が引いていた。パティだけは、兜でわからんが。
「その......そこまでの体験をしているとは思いませんでした。でも......」
「やめよう、フラン。平行線だ」
コーヒーカップを傾ける。
会話が途絶えてしまった。
「とりあえず、あと二日あるんだろ! 依頼受けようぜ!」
「ですね! ボク、頑張ります!」
「ああ、そうだな。悶々としているより、いいかもしれない」
コーヒーを呷り切る。
「依頼所、行ってみようか」
◆ ◆ ◆
店主に教えてもらい、アハ=イシュケの依頼所に向かう。
「それにしても、邪教の教会が多いですわね......あた!」
フランの頭にチョップを入れる。この国では、太陽神オルナウより、智神イクナビュタの方が、篤く信仰されている。
「宗教戦争の火種になるようなことを、言うんじゃないよ」
「あたた......ふふ、少し調子が戻ってきたようですわね」
フランなりの、気遣いだったのか。やり方は、非常によろしくないと思うが。
「やれやれだな。着いたぞ」
依頼は......。おなじみゴブリン退治。パスでいいな。
ドラゴン退治。ここでも依頼があるのかよ。パスパス!
バンパイア退治。だから、どうしてここでもあるんだよ! 神官サマに見せないようにガード。
郊外の古い共同墓地での、アンデッド退治。種類は、ゾンビだの、スケルトンだの。物足りないが、報酬額がそこそこいいし、長期に及ぶとも思えない。フランの欲求不満を晴らすのにちょうどいいだろう。あと、俺の気分転換にも。
「これとかどうだ?」
「やりましょう! やりましょう! 今すぐやりましょう!」
鼻息も荒い、エスソシスト系バーサーカー。
「皆は、どうだろうか?」
......特に、異議はないようだ。
「では、受けるとしよう」
墓地を管理している教会に向かうと、件の墓地に案内される。郊外ゆえ、そろそろ日が暮れそうだ。早めに片付けたい。
日が沈むと、待ってましたとばかりに亡者どもが地の底から湧いて出る。
「ヒョホォッ! キェェェェェェアァァァァァッ! 死霊浄化術ォォォォォッ!!」
奇声を上げながら、亡者を浄化するフラン。
「続くぞ! 雷王撃砕嘯!!」
多量の亡者を殲滅していく。
なにぶん弱いモンスターなので、いくら数がいても、あっという間に全滅させてしまった。
「ありがとうございます! いや~、急にアンデッドが出没するようになりましてね」
カンテラを手にしたイクナビュタ教会の神官が、ホッとした様子で話しかけてくる。神官といえども、郊外の教会なら特に強いというわけでもない。
しかし、急にか。ゾンビもスケルトンも、自然発生するアンデッドではない。暗黒魔法によって生み出される。暗黒魔法の使い手がこのあたりにいるということか......。よろしくない話だな。
「では、引き上げましょう」
彼の先導で、帰路につく。