ホーム›女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!›第五十八話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―後編―
← 前の話目次次の話 →

第五十八話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―後編―

「副団長殿。自分も、青軍に加わってもよろしいですか?」

「......いいだろう。ただし、魔法はなしだ」

「わかりました」

 青軍の円陣に走り寄る。

「助太刀に来ました」

「や。これは意外だな」

「まあ、気まぐれというやつです」

 魔法を禁じられているので、軽装の必要はない。パティほどごつくないが、プレートメイメイルに身を包む。

「ハイプライド卿、手強いでしょうね」

「無論だ。私の尊敬する、最高の騎士だぞ」

 兜で見えないが、きっと自慢げな表情だろう。

「作戦は?」

「臨機応変!」

 やれやれ。ノープランか。

 天を見上げる。もうすぐ、陽が頂上に登る。木刀を構え、試合開始を待つ。

「はじめ!」

 副団長殿の掛け声で、両軍が雄叫びとともに突撃する。

 しかし、ハイプライド卿、ここで左右に軍を展開してきた! 包囲する気か!

「包囲されます!」

「わかっている! 中央突破! やられる前にやれだ!」

 青軍は、そのまま中央突破を目指す。

 しかし、中央が固い。パティのような、重装戦士ヘビー・アームで固めている!

 騎士団長だものな。自軍兵の特徴は把握しているか!

 そして、まずいことに包囲されつつある。

「うおおお!」

 何を思ったか、単身突撃する総大将クッコロさん。

 あっというまに、叩きのめされるが、それでも立ち上がる。副団長から試合終了の宣言はない。続行だ!

「諸君! 愛するものはいるか! 守りたいものはあるか! 今、君らのそれが、危機にさらされている! 立ち向かえ! 敵は一点、ダディーノ・ハイプライド! 殺到せよ! 諦めるな! 大将首を取れば、すべてが終わる!」

 混乱していた青軍が、立ち直った! ハイプライド卿めがけて、雲霞のように突撃する! あと少し! あと少しで壁・に穴が開く!!

 しかし、赤軍は優秀であった。鬼気迫る青軍の復活に一度怯んだものの、ハイプライド卿の叱責で、包囲と殲滅を再開した。

「そこまで! そこまでー!!」

 副団長からの制止。

 青軍の多くは地面に打ち倒され、明らかに赤軍有利であった。

「赤軍の勝利!」

 項垂れるクッコロさん。心中、察するまでもないだろう。彼女の挑戦は、終わった。

「父上、完全敗北です」

 兜を脱ぎ、父に頭を垂れる。

「クッコロ」

「はい」

「たしかに、お前自身に、戦才も軍才もない」

 悔しさを飲み込むように、「......はい」と応える彼女。

「だが、唯一つ。士気高揚には、輝ける物があった。優秀なヒーラーを後方につければ、しぶとく戦う指揮官になるだろう」

 ハッとして、卿を見上げるクッコロさん。

「騎士に推薦しよう。国のため、存分に働いてくれ」

「ありがたきお言葉......!」

 涙する彼女の肩を、優しく叩く父。

 父娘のわだかまりは、ここに氷解した。


 ◆ ◆ ◆


「依頼未達成ゆえ、約束の報酬は払えないが」

「はい。自分たちで選んだことですから」

「代わりといっては何だが、私たち父娘のわだかまりを取り払ってくれたこと、感謝に堪えない。よって、宝物庫から、好きなものを一品ずつ持っていってくれたまえ」

 意外な言葉に、一同顔を見合わせる。

「......よろしいので?」

 静かに頷うなずく卿。その隣には、微笑むクッコロさんが佇んでいる。

「ありがたく、頂戴いたします」

「では、案内しよう」

 宝物庫には、武器から装飾品、美術品まで、様々な宝があった。......モロオさんの絵も。

「自分はこれを」

 魔力を感じる、一振りの剣を選ぶ。

「いい目をしているな。それは、魔剣だ。良い切れ味をしているぞ」

「ありがたく、いただきます」

 刃を確かめ終わると鞘にしまい、下男に預ける。

 ほかの皆も、各々気に入った品を手に入れたようだ。

 こうして、モロオさんの茶話から始まった、奇妙な依頼は、幕を閉じた。

 ハイプライド父娘に、いつまでも幸せのあらんことを。
シェア
← 前の話
第五十七話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―前編―
次の話 →
第五十九話 魔導剣士ロイ、デエトする
女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!作者:みなはらつかさ
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

第五十八話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―後編―

「副団長殿。自分も、青軍に加わってもよろしいですか?」

「......いいだろう。ただし、魔法はなしだ」

「わかりました」

 青軍の円陣に走り寄る。

「助太刀に来ました」

「や。これは意外だな」

「まあ、気まぐれというやつです」

 魔法を禁じられているので、軽装の必要はない。パティほどごつくないが、プレートメイメイルに身を包む。

「ハイプライド卿、手強いでしょうね」

「無論だ。私の尊敬する、最高の騎士だぞ」

 兜で見えないが、きっと自慢げな表情だろう。

「作戦は?」

「臨機応変!」

 やれやれ。ノープランか。

 天を見上げる。もうすぐ、陽が頂上に登る。木刀を構え、試合開始を待つ。

「はじめ!」

 副団長殿の掛け声で、両軍が雄叫びとともに突撃する。

 しかし、ハイプライド卿、ここで左右に軍を展開してきた! 包囲する気か!

「包囲されます!」

「わかっている! 中央突破! やられる前にやれだ!」

 青軍は、そのまま中央突破を目指す。

 しかし、中央が固い。パティのような、重装戦士ヘビー・アームで固めている!

 騎士団長だものな。自軍兵の特徴は把握しているか!

 そして、まずいことに包囲されつつある。

「うおおお!」

 何を思ったか、単身突撃する総大将クッコロさん。

 あっというまに、叩きのめされるが、それでも立ち上がる。副団長から試合終了の宣言はない。続行だ!

「諸君! 愛するものはいるか! 守りたいものはあるか! 今、君らのそれが、危機にさらされている! 立ち向かえ! 敵は一点、ダディーノ・ハイプライド! 殺到せよ! 諦めるな! 大将首を取れば、すべてが終わる!」

 混乱していた青軍が、立ち直った! ハイプライド卿めがけて、雲霞のように突撃する! あと少し! あと少しで壁・に穴が開く!!

 しかし、赤軍は優秀であった。鬼気迫る青軍の復活に一度怯んだものの、ハイプライド卿の叱責で、包囲と殲滅を再開した。

「そこまで! そこまでー!!」

 副団長からの制止。

 青軍の多くは地面に打ち倒され、明らかに赤軍有利であった。

「赤軍の勝利!」

 項垂れるクッコロさん。心中、察するまでもないだろう。彼女の挑戦は、終わった。

「父上、完全敗北です」

 兜を脱ぎ、父に頭を垂れる。

「クッコロ」

「はい」

「たしかに、お前自身に、戦才も軍才もない」

 悔しさを飲み込むように、「......はい」と応える彼女。

「だが、唯一つ。士気高揚には、輝ける物があった。優秀なヒーラーを後方につければ、しぶとく戦う指揮官になるだろう」

 ハッとして、卿を見上げるクッコロさん。

「騎士に推薦しよう。国のため、存分に働いてくれ」

「ありがたきお言葉......!」

 涙する彼女の肩を、優しく叩く父。

 父娘のわだかまりは、ここに氷解した。


 ◆ ◆ ◆


「依頼未達成ゆえ、約束の報酬は払えないが」

「はい。自分たちで選んだことですから」

「代わりといっては何だが、私たち父娘のわだかまりを取り払ってくれたこと、感謝に堪えない。よって、宝物庫から、好きなものを一品ずつ持っていってくれたまえ」

 意外な言葉に、一同顔を見合わせる。

「......よろしいので?」

 静かに頷うなずく卿。その隣には、微笑むクッコロさんが佇んでいる。

「ありがたく、頂戴いたします」

「では、案内しよう」

 宝物庫には、武器から装飾品、美術品まで、様々な宝があった。......モロオさんの絵も。

「自分はこれを」

 魔力を感じる、一振りの剣を選ぶ。

「いい目をしているな。それは、魔剣だ。良い切れ味をしているぞ」

「ありがたく、いただきます」

 刃を確かめ終わると鞘にしまい、下男に預ける。

 ほかの皆も、各々気に入った品を手に入れたようだ。

 こうして、モロオさんの茶話から始まった、奇妙な依頼は、幕を閉じた。

 ハイプライド父娘に、いつまでも幸せのあらんことを。
シェア
次の話第五十九話 魔導剣士ロイ、デエトする
女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!作者:みなはらつかさ
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません