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第五十九話 魔導剣士ロイ、デエトする

 今日も、芳しい依頼なし。

 そんなわけで、「青い三日月亭」でコーヒーなど飲んで茶話していると、からんからんとドアを開けて、珍客が訪れた。

「やあやあ! やはり、この店にいたか、ロイ君!」

 その人こそ、いつもの訓練着ではないが、お嬢様然とした衣装に身を包んだ、クッコロさんだ。

「これはどうも、こんにちは。いかが致しました?」

「うむ! デエト・・・しよう!」

 あまりに突飛な提案に、しばし固まる。

「......はい?」

 我ながら、きっと相当間抜けな表情をしていたに違いない。

「デエトだよ、デエト! まさか、知らぬのか?」

「いえ、デートぐらいは存じておりますが、そのまた、どうして急に」

「君に惚れた! それ以上の理由がいるかい? ぜひ、婿に迎えたいと思っている!」

 な、なんですとー!?

「いえ、あの、その......。そうだ、ハイプライド卿のお許しが......」

「父上なら、大変乗り気だ! 『彼は見込みがある。将来性に素晴らしいものを感じる』とのことだ!」

 ひょええええ! 退路を塞がれた!

「しかし、その、心の準備というものがですね......」

「私では、不服か? 私は、そこまで魅力がないか?」

 入店し、前かがみになり、視線を同じ高さにするクッコロさん。

 吸い込まれそうな、美しい碧い瞳。化粧も施しており、近くで見ると、この上もない美人だ。その清楚なお嬢様スタイルと相まって、ドキッとしてしまう。

「いえ、魅力がないということは、決して......」

「ふふっ。顔が紅いぞ。どうやら、私の出で立ちは合格のようだな。入店して、何も頼まないのも失礼だな。ロイ君と、同じものを頼む」

 「かしこまりました」と、厨房に消えていくバーシ。

 クッコロさんは対面に腰掛け、にこやかにこちらを見ている。

「で、返事はYESかな? NOかな?」

 ......困った。断る理由がない。そもそも、彼女とのデートが嫌なわけではない。ただ、唐突すぎで焦っているだけで。

「兄貴、オレ、ちょーっと一緒に、買い物してほしいんすよね」

 唐突に、義妹いもうとが会話に割って入ってきた。

「なんだ、サン。何を買うんだ?」

「そ、それは......出かけてから決めるっす!」

 何がしたいんだ、この子は。

「ロイくん。私も、お洋服の買い物に付き合ってほしいかな」

 ナンシアも、会話に乱入してくる。

「その、見ての通り、取り込み中だ。明日ではダメか?」

「む......明日ではダメなの!」

 やあ、困った。何なんだこの状況。

「ロイ君、君も罪作りな男だねえ」

 首を横に振るクッコロさん。なんなの、ほんとに。

「お二人とも、一番最初に切り出したのは私だ。私に優先権があるだろう?」

 彼女がそう言うと、二人とも、「ぐ......」と黙ってしまった。

「さて、横やりが入ったが、改めて訊こう。YESかな? NOかな?」

「......ではYESで」

 やはり、どうひねり出しても、断る理由がない。それに、デートしたからといって、イコール、ゴールイン一直線というわけでもあるまい。

 サンとナンシアが、深くため息を吐く。何なんだ。そんなに今日でかけたかったのか? さらに、それを見て深い溜め息を吐くフラン。クコはほくそ笑んでるし。何なんだよ、ほんとに。

 クッコロさんは、「美味いコーヒーだな!」と言いながら素早く飲み、会計を済ませると、「さあ、行こう!」と爽やかに促してくる。

 やれやれだな。


 ◆ ◆ ◆


「ロイ君。ずばり訊きたい。私は、君にとって、女として魅力があるか?」

 アクセサリーショップを、ウィンドゥショッピングしていた我々。またもや直球かつ唐突な質問に、「はい!?」と固まる。

「どうかな」

「その......率直に、大変魅力的だと思います」

 正直な気持ちだし、何より今は、デート中だ。......どう見ても、ハイプライド卿の寄越した見張りが、多数いるのがアレだが。

「そうか、そうか! 私は、侍女こそいたものの、男手一つで育てられ、訓練に明け暮れてきて、色気の一つもないのではないかと自信がなかったが、捨てたものではないようだな!」

 嬉しそうな彼女。本当に、年頃の女の子そのものの姿だ。

「いえ。偽りなく、大変魅力を感じています」

「ロイ君」

 ちょっと、不満げな視線を向けてくるクッコロさん。

「はい」

「デエト中に、ですます調はないと思うぞ。もっとフランクに接してくれ」

「わかりまし......わかった。これでいいかな?」

 少し、肩の力を抜く。

「うむ、よろしい。さん付けもなしだ。今は、クッコロでいい」

「わかった、クッコロ」

「うむ、いいぞいいぞ。次は、服を見よう。市井の服が、どんなものなのか、大変興味がある」

 手を差し出してくる彼女。

 さすがに、意図がわからんほど、鈍感ではないつもりだ。手をつなぎ、街を歩いて行く。


 ◆ ◆ ◆


「ふふ。楽しいな、デエトというものは。生まれて初めてしたが、実に心が弾む」

「楽しんでもらえているようで、何よりだ」

 カフェテラスで、揃いのアイスティーを飲む我々。

「私も、女なのだな。殿方とのデエトに、ここまで夢中になるとは思わなかった」

 微笑みを向けてくる彼女。思わず、ドキッとする。彼女の顔も紅い。

「今まで、縁談の話はなかったのか?」

「あったとも。だが、すべて断った。騎士になるのが、まずすべてに優先していたからな。だから今、肩の荷が降りた思いだ」

「そうか。君の荷物を降ろすのが手伝えて、良かったよ」

 茶で喉を潤す。俺も、デートなど初めてだな。こんなにも、気持ちがフワフワするものなのか。

「もうすぐ、夕暮れだな。日が沈むまでには帰ると、父上と約束している。残念だ。また、デエトしてくれるかな?」

「手が空いていれば」

 互いに微笑む。

「あの......お花、いかがですか?」

 不意に、花売りの少女が話しかけてきた。

「今日の記念に、一輪もらおうか」

「ありがとうございます!」

 代金を支払うクッコロ。うっとりと、美しい花を見つめる。

「ロイ君。今日はありがとう。では、今日はここで帰らせてもらうよ」

「送っていくよ」

「ふふ、エスコートとはありがたいな。では、厚意に甘えるとしよう」

 再び、手を差し出す彼女。その手を取り、ハイプライド邸へと向かうのであった。


 ◆ ◆ ◆


「サン~、ナンシア~。なんか、言ってくれよ~」

 帰ると、一言も口を聞いてくれない二人がいた。

「ロイさん。今ばかりは、怒りが解けるのをお待ちなさいな」

 フランが、紅茶を飲みながら、しれっと言う。

 やれやれ。どうしたらいいんだ、俺は。
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第五十八話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―後編―
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女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!作者:みなはらつかさ
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第五十九話 魔導剣士ロイ、デエトする

 今日も、芳しい依頼なし。

 そんなわけで、「青い三日月亭」でコーヒーなど飲んで茶話していると、からんからんとドアを開けて、珍客が訪れた。

「やあやあ! やはり、この店にいたか、ロイ君!」

 その人こそ、いつもの訓練着ではないが、お嬢様然とした衣装に身を包んだ、クッコロさんだ。

「これはどうも、こんにちは。いかが致しました?」

「うむ! デエト・・・しよう!」

 あまりに突飛な提案に、しばし固まる。

「......はい?」

 我ながら、きっと相当間抜けな表情をしていたに違いない。

「デエトだよ、デエト! まさか、知らぬのか?」

「いえ、デートぐらいは存じておりますが、そのまた、どうして急に」

「君に惚れた! それ以上の理由がいるかい? ぜひ、婿に迎えたいと思っている!」

 な、なんですとー!?

「いえ、あの、その......。そうだ、ハイプライド卿のお許しが......」

「父上なら、大変乗り気だ! 『彼は見込みがある。将来性に素晴らしいものを感じる』とのことだ!」

 ひょええええ! 退路を塞がれた!

「しかし、その、心の準備というものがですね......」

「私では、不服か? 私は、そこまで魅力がないか?」

 入店し、前かがみになり、視線を同じ高さにするクッコロさん。

 吸い込まれそうな、美しい碧い瞳。化粧も施しており、近くで見ると、この上もない美人だ。その清楚なお嬢様スタイルと相まって、ドキッとしてしまう。

「いえ、魅力がないということは、決して......」

「ふふっ。顔が紅いぞ。どうやら、私の出で立ちは合格のようだな。入店して、何も頼まないのも失礼だな。ロイ君と、同じものを頼む」

 「かしこまりました」と、厨房に消えていくバーシ。

 クッコロさんは対面に腰掛け、にこやかにこちらを見ている。

「で、返事はYESかな? NOかな?」

 ......困った。断る理由がない。そもそも、彼女とのデートが嫌なわけではない。ただ、唐突すぎで焦っているだけで。

「兄貴、オレ、ちょーっと一緒に、買い物してほしいんすよね」

 唐突に、義妹いもうとが会話に割って入ってきた。

「なんだ、サン。何を買うんだ?」

「そ、それは......出かけてから決めるっす!」

 何がしたいんだ、この子は。

「ロイくん。私も、お洋服の買い物に付き合ってほしいかな」

 ナンシアも、会話に乱入してくる。

「その、見ての通り、取り込み中だ。明日ではダメか?」

「む......明日ではダメなの!」

 やあ、困った。何なんだこの状況。

「ロイ君、君も罪作りな男だねえ」

 首を横に振るクッコロさん。なんなの、ほんとに。

「お二人とも、一番最初に切り出したのは私だ。私に優先権があるだろう?」

 彼女がそう言うと、二人とも、「ぐ......」と黙ってしまった。

「さて、横やりが入ったが、改めて訊こう。YESかな? NOかな?」

「......ではYESで」

 やはり、どうひねり出しても、断る理由がない。それに、デートしたからといって、イコール、ゴールイン一直線というわけでもあるまい。

 サンとナンシアが、深くため息を吐く。何なんだ。そんなに今日でかけたかったのか? さらに、それを見て深い溜め息を吐くフラン。クコはほくそ笑んでるし。何なんだよ、ほんとに。

 クッコロさんは、「美味いコーヒーだな!」と言いながら素早く飲み、会計を済ませると、「さあ、行こう!」と爽やかに促してくる。

 やれやれだな。


 ◆ ◆ ◆


「ロイ君。ずばり訊きたい。私は、君にとって、女として魅力があるか?」

 アクセサリーショップを、ウィンドゥショッピングしていた我々。またもや直球かつ唐突な質問に、「はい!?」と固まる。

「どうかな」

「その......率直に、大変魅力的だと思います」

 正直な気持ちだし、何より今は、デート中だ。......どう見ても、ハイプライド卿の寄越した見張りが、多数いるのがアレだが。

「そうか、そうか! 私は、侍女こそいたものの、男手一つで育てられ、訓練に明け暮れてきて、色気の一つもないのではないかと自信がなかったが、捨てたものではないようだな!」

 嬉しそうな彼女。本当に、年頃の女の子そのものの姿だ。

「いえ。偽りなく、大変魅力を感じています」

「ロイ君」

 ちょっと、不満げな視線を向けてくるクッコロさん。

「はい」

「デエト中に、ですます調はないと思うぞ。もっとフランクに接してくれ」

「わかりまし......わかった。これでいいかな?」

 少し、肩の力を抜く。

「うむ、よろしい。さん付けもなしだ。今は、クッコロでいい」

「わかった、クッコロ」

「うむ、いいぞいいぞ。次は、服を見よう。市井の服が、どんなものなのか、大変興味がある」

 手を差し出してくる彼女。

 さすがに、意図がわからんほど、鈍感ではないつもりだ。手をつなぎ、街を歩いて行く。


 ◆ ◆ ◆


「ふふ。楽しいな、デエトというものは。生まれて初めてしたが、実に心が弾む」

「楽しんでもらえているようで、何よりだ」

 カフェテラスで、揃いのアイスティーを飲む我々。

「私も、女なのだな。殿方とのデエトに、ここまで夢中になるとは思わなかった」

 微笑みを向けてくる彼女。思わず、ドキッとする。彼女の顔も紅い。

「今まで、縁談の話はなかったのか?」

「あったとも。だが、すべて断った。騎士になるのが、まずすべてに優先していたからな。だから今、肩の荷が降りた思いだ」

「そうか。君の荷物を降ろすのが手伝えて、良かったよ」

 茶で喉を潤す。俺も、デートなど初めてだな。こんなにも、気持ちがフワフワするものなのか。

「もうすぐ、夕暮れだな。日が沈むまでには帰ると、父上と約束している。残念だ。また、デエトしてくれるかな?」

「手が空いていれば」

 互いに微笑む。

「あの......お花、いかがですか?」

 不意に、花売りの少女が話しかけてきた。

「今日の記念に、一輪もらおうか」

「ありがとうございます!」

 代金を支払うクッコロ。うっとりと、美しい花を見つめる。

「ロイ君。今日はありがとう。では、今日はここで帰らせてもらうよ」

「送っていくよ」

「ふふ、エスコートとはありがたいな。では、厚意に甘えるとしよう」

 再び、手を差し出す彼女。その手を取り、ハイプライド邸へと向かうのであった。


 ◆ ◆ ◆


「サン~、ナンシア~。なんか、言ってくれよ~」

 帰ると、一言も口を聞いてくれない二人がいた。

「ロイさん。今ばかりは、怒りが解けるのをお待ちなさいな」

 フランが、紅茶を飲みながら、しれっと言う。

 やれやれ。どうしたらいいんだ、俺は。
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