第七十七話 魔導剣士ロイ、死闘する
浮遊する、巨大なサイコロが出現する。これまた巨大な手甲と魔導書を持ち、いつぞやのワイト王を思い出させる。
しかし一層奇妙なのは、サイコロの各面に、喜怒哀楽、あとは裏で見えないが、おそらく六種の「表情」があることだ。
「我を呼び出して、何の用だ」
正面を向いている「怒」面が、鬱陶しそうに言う。
「前衛が頼りないので、御大にお力添えいただこうかと。恐縮です」
すると、「怒」から「哀」にくるりと変わり。
「そんなことで呼び出さないでほしいなあ......悲しくなっちゃうよ」
「贄は弾みますので」
今度は「喜」に変わり。
「そーゆーことなら、いいよお! 瞬閃輝眩光!」
巨大魔導書がバラバラとめくれ、閃光がほとばしる。
「うおっ! まぶし!!」
まずい! 視界を奪われた!
「そこに、追い火葬炎上獄!」
熱い! くそ! こいつ、さっきから俺ばかり!
「命活癒術草!」
クコの声。痛みが引いていく。いち早く、スタンから立ち直ったか。
こちらも視界が戻ってきたが、ゾンビに殴られた。痛え! こいつら、力とタフさだけはあるからな!
「雷王撃砕嘯!!」
とにかく、数を減らす!
「死霊浄化術!!」
フランの追い打ち! かなり削ったぞ!
人狼化したナンシアも、敵を見事蹴散らしている。さっきは迷惑かけた!
「火葬ゴフッ!」
ステルベンが魔法を繰り出そうとするが、喉を一閃される。
「兄貴の気持ちを、よくも踏みにじったな......!」
サン! いつの間に!
「馬鹿な......あっけなさゴボッ!」
倒れるステルベン!
「ええっ! ステルベンくん、死んじゃったよ!」
「驚」ダンタリオンが、文字通り驚く。しかし、くるりと回転して「悩」になると。
「仕方がない......。死霊転屍術|」
巨大魔導書から黒色光がほとばしる!
すると、ステルベンがむくりと起き上がった。
「おお......負の生命力が満ち溢れる......!」
「この!」
サンが再び喉笛を掻っ切るが、ピンピンしてる!
「無駄無駄ァッ!」
「うぐっ!」
そのまま、サンを裏拳で殴り飛ばす!
「どうやらあいつ、アンデッドになったようですわね! ならば! 聖王曙光輪!!」
ステルベンの頭上にまばゆい光の輪が現れ、やつをすり潰す!
「うごごごご......ごおっ!?」
やったか!?
しかし、あっという間に削れたステルベンが復元していく。
「フゥゥゥゥ~......! 貧弱貧弱ゥ!」
「サン! こっちに合流しろ!」
「させませんよお」
逃げようとしたところを、ステルベンに襟首を引っ掴まれてしまう。
「離せよ!」
「離しません。その細い首、へし折ってあげましょう」
サンの首に手をかける。まずい!
「雷王撃砕嘯!!」
ステルベンを粉砕する。こちらのスタミナと、やつの負の生命力、どっちが先に尽きるか勝負だ!
「無駄だと言ってるでしょう~」
「加勢しますわ! 聖王曙光輪!!」
再び粉砕されるステルベン。
「我も忘れてもらっては困る。憤怒爆獄炎!」
爆風に吹っ飛ばされる!
「命活癒術草!」
助かる!
ゾンビやスケルトンが、かなりきれいに吹っ飛んでいた。敵味方お構いなしか!
「ゾンビはボクに任せて、ステルベンとダンタリオンを!」
「おう! 賦術火炎刃!」
パティがゾンビどもを引き受けてくれるので、ステルベンめがけてフラン、ナンシアとともに突撃する。待っていろ、ステルベン! そして、ダンタリオン!
「おっと、この小娘がどうなってもよろしいかな?」
サンの首に手をかけ、突き出してくる。卑劣な!
「兄貴! オレはいいからこいつを!」
「うるさいですね......。さあ、どうする? ど・う・す・る?」
くそっ! ほんとにどうする!?