第七十八話 魔導剣士ロイ、再び涙する
「わかったよ。武装解除するよ」
剣を下に置く。顔を愉快そうに歪めるステルベン。
「次に......」
魔導書をつまむ。
「雷王撃砕嘯」
電撃がほとばしり、やつを粉砕する! 魔導書には、触れているだけでいい!
剣を拾うと、ダッシュ!
復元したステルベンを、斬り伏せる。
「憤怒爆獄炎!」
「見切ったァッ!」
サンを抱えて、転げて回避!
「ステルベンへの攻撃は無駄だ! ダンタリオンを先に仕留める必要がある!」
ステルベン、いくらなんでもタフすぎる! ダンタリオンが復活させてるんだ!
「強重結縛糸!」
「グムッ!?」
ダンタリオンの真下の黒円から、黒い直糸が幾本も無数に伸びていき、地に引きずり落とす。
「ステルベンは私が! ヒョホォッ!!」
奇声はともかく、助かる!
「なんてひどいことをするんだ......。悲しいなあ......。氷獄殲滅嵐ぉ......」
ごろんと転がり「哀」になると、ステルベンやゾンビを巻き込んで、氷結魔法を繰り出してくる! 痛え! 灼ける! くそ! シャックスを思い出すな!
しかし、そこにクコの命活癒術草と追い超力賦活草! 力がみなぎる!
「くたばれサイコロ野郎!」
剣で斬りつけるが......手応えがまるで無い!?
「私も!」
ナンシアも殴りかかるが、やはり手応えがなさそうだ。
なんなんだ、こいつは!?
何度斬りつけても、やはり手応えがない。なのに、こちらはやられっぱなしだ。まずい。
俺が持っているのは魔剣だ。ついでに、賦術火炎刃もかかっている。だから、ワイトのような相手にも効く。
すると、こいつがノーダメのからくりはなんだ?
ありうるのは、影が本体か!?
影に刃を突き刺してみるが、平気で転がっている。外れか!
ふと、上を見る。手甲と魔導書。もしや。
「雷王撃砕嘯!」
「ギャアアアムッ!!」
魔導書に電撃を食らわすと、ダンタリオンがおぞましい悲鳴を上げる。こっちが本体か!
「強重結縛糸!」
魔導書を地上に引きずり落とすと、燃え盛る剣で切りつける!
「ゲバァッ! やめて......お願いだから......」
「やめるわけねーだろ! みんな! 魔導書を攻撃だ!」
皆、ターゲット変更。サンなど、お返しとばかりにザクザクダガーを突き立てている。賭けだったが、お前が無事で何よりだ。
「御た」
「アンデッド野郎は黙って殴られてやがれですわ!」
フランはフランで、ステルベンをモーニングスターで殴打しまくる。
「ゾンビ、片付きました!」
パティもこちらに駆けてきた。
「とどめだ!」
魔導書を焼き尽くすと、壮絶な悲鳴を上げながら、サイコロが崩壊していく。
「体が! 私の体がァァァァッ!」
ステルベンも同じく。
「最後に一発、ぶん殴らせろ!」
「ぶげぁッ!」
やつを、思いっきり殴り飛ばす。ダンタリオンは粉々になり、ステルベンも、ゾンビやスケルトンも、灰になった。
「はぁっ......はぁっ......。すまない、少し泣く。姉ちゃん、父さん、母さん......」
すすり泣きが、墓地に響く。こうして、ステルベン・ダンタリオン事件は幕を閉じた。
ダンタリオンの情報は、朝イチでベイシック卿に売り渡した。物証は、ダンタリオンの破片と手甲。
これが、なかなかの収入になった。
そして、青い三日月亭で遅い朝食を取っていると。
「......貴、兄貴!」
もっそもっそ。
「兄貴ーッ!」
「うお! うるせえ!」
耳に、大声が直撃する。
「全然、心ここにあらずじゃないっすかー」
「家族を改めて喪うと、こう、な」
「オレにはピンとこねっす。物心付く前に、天涯孤独なところを、じっちゃんに拾ってもらったから」
「そうか。そうだな......」
思えば、サンだけではなく、ナンシアも天涯孤独の身だ。
「家族、か......」
サンドイッチを、コーヒーで飲み込む。
今は、師匠と兄貴。そして、彼女らが家族だ。それでいい。