第二十三話 魔導剣士ロイ、祭を楽しむ ―前編―
「兄貴ー、一緒に祭を見に行こうぜー」
「すまんな、ちょっと図書館で調べ物がしたい。誰か、他の者と行ってくれ」
朝、皆でアジの干物に加え、味噌汁なる謎の液体と米の飯を食んでいると、義妹が祭見物に誘ってきたが、申し訳ないけど断らせてもらった。
というのも、いつぞやの幽魔族なる謎種族の男と、ついでに「黒魔の宝玉」のことが気になったからだ。
「えぇ~......兄貴が行かないなら、オレも行かないっス。一緒に図書館行くっスよ」
ううむ、仔犬のようなやつだな。まあ、余暇をどう過ごそうと、俺が口出しすることではないが。
「そうか、じゃあ一緒に行こう。他の皆はどうする?」
「何について、調べるんですか?」
「幽魔族と、『黒魔の宝玉』についてだな」
「確かに、ちょっと気になりますわね。私も一緒に調べますわ」
パティが質問して、フランが同行の意を示す。結局、皆それに付和雷同して、全員で図書館へ行くことになった。
◆ ◆ ◆
というわけで、バーブルの図書館にやって来た。外側は石造りで、内部の書架には種々様々な巻物や本が置かれている。
調べものの描写などしても退屈なだけなので、結果だけ述べると、以下のようなことがわかった。
まず、幽魔族はバーブルのさらに東、海を超えた地域「オウカ」に住むレアな種族で、半霊体とでもいうのか、体重がないという大変変わった存在らしい。
魔力を"視る"ことができるそうで、俺らの車両の近くにあった「黒魔の宝玉」を収納した車両を、一直線に目指してきたことに得心がいった。
ただ、なぜあの隊商が、目当ての物を輸送していると把握できたのか、それはわからない。
次に「黒魔の宝玉」だが、やはり魔王の魂を封印したものらしい。どこでこんなもん手に入れたんだ、モロオさんは......。
魔王の名は、「ザファー」。補助的な宝具、「天魔の杖」と「降魔の書」が揃えば、儀式によって魔王が復活するらしい。縁起でもない。
ついでに、いつぞやの遺跡で入手した巻物の情報でもないかと調べてみたが、これに関しては芳しい結果は得られなかった。
調べ終わって伸びをすると、午後六時の鐘の音が聞こえてきた。
「兄貴ー、閉館時間っスよ」
「おお、もうそんな時間か」
「祭は夜でもやってるらしいっスよ、行きましょうよー」
へえ、それなら今から祭ってのも悪くないな。
「よし、行こうか。みんなも行くか?」
本を書架に戻し、退館しながら皆に問う。
「いいですね、行きましょう行きましょう! ボク、もう座りっぱなしで、体ゴワゴワですよ」
年寄りみたいなことを......。そんな重い鎧、着けてるからだよ。
「そういえば、パティとサンは別のものを読んでいたようだが、ありゃ何だったんだ?」
「恋愛小説ですよ。最近ハマってて」
義妹も首をうんうんと振っている。恋愛小説、そういうのもあるのか。というか、サンがハマるとはなあ。占いといい、パティの乙女チック波動の影響でも、受けてるんだろうか。