第七十一話 魔導剣士ロイ、茶話する
「やあやあ、久しぶりだな! ......ロイ君、また雰囲気が変わった気がするな?」
おや、宿に戻るとクッコロさんが、茶を飲んでいるじゃないか。
「はい。めでたく男に戻れまして」
「僥倖だな! ではさっそく、夜のデエトと洒落込もうじゃないか!」
なんであなたは、そう色々と猪突猛進なんですか。
「兄貴は疲れてるんだ! 明日、アハ=イシュケに行かなきゃいけないんだよ!」
「そうです! 明日も早いんです!」
「おいおい。サン、ナンシア。無礼な口を利くもんじゃない。とはいえ、明日が早いのも事実でして」
二人とも、どうしてしまったんだ。
「ふーむ。では茶話として、南方の話でも軽く聞かせておくれよ。それぐらい構わないだろう?」
「それぐらいでしたら......」
「茶菓子代は、私が出そう。土産話代だと思ってくれ」
「では、ありがたく」
南方での、様々なできごとを話して聞かせる。様々な冒険の数々に、目を丸くして輝かせる彼女。とくに、フォルネウスに関しては......。
「それは、ぜひとも一戦交えたかったな! イルカに乗った騎士というのも面白い!」
やめてください。死んでしまいます。
「騎士といえば、叙勲の方はどうなりましたか?」
「うむ! 正式に任ぜられたぞ!」
胸をそらし、ドヤ顔するクッコロさん。
「おめでとうございます。我々も、お役に立てたようで何よりです」
「はっはっはっ。君たちには、感謝してもしきれんな! 今度、うちに寄ってくれたまえ。歓待するぞ!」
「ありがとうございます。機会がありましたら、ぜひに」
茶を口に含む。
「ところで、めでたく男に戻ったことだし、うちに婿入りする気はないか?」
茶を吹く。
さっきもやったぞ、このリアクション。
「失礼しました。いえ、まだまだ修行中の身でありますし、見聞を広めたいとの思いもありまして」
テーブルを拭いながら、丁重にお断りする。いや、好きか嫌いかでいえば、好ましい女性だとは思うんだが。
「ふーむ。騎士でなければ、パーティーに入りたいところだが。今は、騎士であることが悩ましいな。焦がれに焦がれた騎士の身になって、贅沢ではあるが」
やめてください。死んでしまいます。
このリアクションも、さっきやったな。
「クッコロさんにおかれましては、風来坊より、ラドネスブルグの剣となり盾となるのがふさわしいかと」
「ふむ。そうか。そうだな」
うんうんと頷く彼女。
「茶話にしては、ずいぶんと話し込んでしまった気がします。失礼ながら......」
「そうだな。名残惜しいが、また会おう」
茶を呷り切ると、精算を済ませ、彼女は出ていった。
明日も早い。この茶菓子を片付けたら、我々も湯浴みして床に入ろう。
◆ ◆ ◆
「おはようございます。卿のご準備は、よろしいでしょうか?」
「待たれよ。伺ってくる」
翌朝、ベイシック邸前で門衛に尋ねると、邸内に確認しに行く。
「おお、時間通りですな」
ビシッと決めた卿が、出てこられた。
「おはようございます」
「では、行くとしましょうかな」
ぞろぞろと、門の外へ。
すると、なにやら魔法陣の描かれたプレートが新設されていた。
「これが、テレポーターですぞ」
さすがに、門内には置かんか。
「では、こちらを」
卿が係員に代金を支払うと、係員がなにやら台を操作する。すると、眼の前の景色が歪んだ!
うお、目が回る!
気づくと、ラドネスブルグの城壁と門とは異なるところに、我々はいた。足元には、魔法陣。ただし係員やら、人も変わってる。
「これは......あまり快適とはいえませんね」
「同感ですな」
頭を振って、変な感覚を吹き飛ばす。
ふう。ちょっとは、マシになったかな?
「大丈夫ですかな? では、行きましょうぞ」
卿が、門衛に書状を見せると、我ら一同、門内に通される。
石畳と、三角屋根が目立つ街並みが、視界に映る。ここが、アハ=イシュケか!
遠目には、塔のようなものも見える。位置的に、王城だろうか?
初めて訪れる都市、学都アハ=イシュケ。なんとも、心躍るな!