第七十二話 魔導剣士ロイ、発表する
「ささ、こちらですぞ」
あの、でかい塔に向かっていく卿。
「まさか、王城で発表を?」
「まさか。あれは、アハ=イシュケの誇る王立学院です。王城は別にありますぞ」
ほえー。すごいな、アハ=イシュケ。
「着きましたぞ」
槍持った門衛に、書類を見せる卿。ここでも、門衛は没個性なのだなあ。
そして、中に通された。もちろん、得物は預かられている。
すると、いかにも学者貴族でございという人々が、円状にカーブしたテーブルにつき、壇を囲んでいた。
「我々は、こちらですぞ」
明らかに下座。嫌でも、立場をわからせられるな。ベイシック卿でも、この扱いなのか。
やがて、議長らしき人物の宣誓とともに、学者たちが発表や質疑をしていく。
ベイシック卿も、盛んに質問している。
俺も、知識を蓄えるべく、必死にメモを取っていく。
議題は魔物だけではなく、理学魔法の新たな知見や、星の運行、発明などなど、盛りだくさんだ。この場に招いてくださった卿に、感謝しかない。
一方で、横のサンは大あくびしていた。
「こら、静聴しなさい」
小声でたしなめる。
「だってよー。キョーミないもんよ」
うーむ。困ったな。
「進行の邪魔にだけは、ならないようにな」
「へーい」
そんなこんなで、ラストにやっとベイシック卿の番だ。切ないね、外様。俺も、補助として脇につく。
「此度、冒険者チーム、スティング・ホーネットが、シャックスならびに、フォルネウスと名乗る魔物と遭遇、討ち果たしました。お手元の、資料一を......」
卿が、淀みなく説明していく。体長や、得意とする魔法などなど。
この世界では、活版印刷というものが発明されていて、先進国では普及している。おかげで、こうした場で大量の資料を刷ることができる。
「では、詳細については、こちらのスティング・ホーネット代表、ロイ・ホーネット君から」
卿から、バトンタッチ。
「ご紹介に預かりました、ロイ・ホーネットです。まず、シャックスですが......」
卿の説明の、足りていない部分。ナマの戦闘の様子を話して聞かせると、皆興味深げに耳を傾ける。
質問も飛んでくるので、それに答えていく。
一介の冒険者が、高度な学術問答をするものだから、ちょっと感心されている様子だ。師匠の教育は、伊達じゃない。
「以上となりますが、ほかにご質問は」
皆、ないようだ。こっちも知ってることは、語り尽くしたしな。
「では、以上をもって閉会とする!」
議長の締めの言葉とともに、皆起立。
ふう。肩の荷が下りたな。
「君、なかなか素晴らしいスピーチだったね」
帰り支度をしていると、ヒゲを湛えた中年男性から声をかけられた。
「ありがとうございます」
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はルベン・ステルベン。蘇生魔法について、研究をしている」
蘇生魔法! あらゆる系統の魔法でも、未だなし得ない、奇跡じゃないか!
右手を差し出してくるので、握り返す。
「それはまた、大変なことにチャレンジなさってますね」
「ああ。だが、やりがいを感じているよ。生と死は表裏一体。死を研究することで、生もまた研究できるというのが持論でね」
目を細める彼。
「深淵ですね」
「ふふ。私は、人類誰もなし得なかったこの奇跡を、実現してみせるよ」
「陰ながら、応援しています」
「おっと。そろそろ上がらなくてはだな。君が気に入った! いつでも訪ねてくれたまえ。住まいは......」
住まいまで、教えてもらってしまった。えらく気に入られたものだな。彼は、去って行った。
「吾輩にも、声をかけてもらいたかったものですな。まあ、若い才能が気に入ったのでしょう。さて、宿に案内しましょう」
「そうですね。もう、昼時を回っています」
「うおー! メシにしようぜー!」
腹ペコマイシスターが、シャウトする。
かくして、学院をあとにする我々であった。