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第六十一話 魔導剣士ロイ、己を売る

 さあ、困ったことになった。

 困った事態だが、金は稼がにゃいかんし、腹だって減る。

 そんなわけで、軽い依頼をこなして、いつもの「蒼い三日月亭」でラムステーキなど食べていると、馴染みの人物が、扉を開けて入ってきた。

「探したよ、ロイ氏ー! てか、噂通りのイケメンガール、キタコレ!」

 なんで、俺の噂広まってんすか。

 何となくクコを見ると、目をそらす。......犯人は、お前か。

 しかし、イケメンガールキタコレと言われても、どう返したものか。

「ありがとうございます。ところで、俺を探していたとのことですが?」

 とりあえず、愛想は返しておこう。

「うんうん。なーんか間が悪くて、いっつも君ら外出中なんだもん。でさ、ロイ氏。絵のモデルやってみない?」

 モロオ邸応接室の、やたらシナを作ったメイドさんが想起される。

「お断りします」

「金貨で、これだけ出そう」

 と、卿が指で提示したのは、かなりの額。

「え? モデルするだけで、こんなもらえるんですか!?」

「もちろん!」

 ここで、ハッとなる。

「......いかがわしい絵じゃ、ないでしょうね?」

「ノンノンノンノン! 極めて健全! ちょーっと、ポーズには凝ってもらうけどね」

 まあ、あのメイドさんぐらいのシナは作らされるということね。

「......やっぱり、メイド服だったりしますか?」

「もちろん!」

 モロオさん、サムズアップ。

「モロオ家特有の、あの?」

「もちろん!!」

 さらに、サムズアップ。

 今、俺の両耳で、それぞれ天使と悪魔が囁いている。

「......ぬ~! じゃあ、これでどうだ!」

 額を上げるモロオさん。

 悪魔が、勝った。


 ◆ ◆ ◆


「モロオさん、その、動かないというのも、しんどいですね......」

「喋らないで。絵がおかしくなっちゃう」

 注意され、無言になる。

 いやはや。格好だけでも恥辱だが、長時間同じポーズを取り続けるのが、ここまでしんどいとは。

「いやー、ロイ氏みたいな、イケメンメイドさんを描くのは、初めてだよ。僕、そっち系に目覚めちゃうな、これ。こういう感じの子、新しく雇おう」

 彼は好き勝手に喋るが、動くなと言われてるので、言葉を返せない。

 やれやれ。


 ◆ ◆ ◆


「フィニッシュ!」

 筆を置く。

「もう、動いていいよ。どう?」

 イーゼルの向こうに回り込み、自分自身を見てみる。

 ......美人だ。凛々しい美人がいる。

 いや、ナルシストか俺は。

「これは、目立つところに飾ろう」

「飾るんですか!?」

 トンデモ宣言に、手をワキワキさせる。

「飾るよー。そのために描いたんだもん。いやー、会心のデキだね!」

 うう......俺のあられもない姿が、この屋敷の目立つところに......。

「あ、約束の報酬ね」

 ずしりと、重い袋が渡される。この重みと引き換えに、とても大事なものを失った気がする......。


 ◆ ◆ ◆


 懐は重いが、心も重い。なんとも沈んだ気持ちで帰ると、クッコロさんがコーヒーを飲んでいた。

「クッコロさん? いかなご用で?」

「おお、その声。君が女子になったという噂は、本当だったか!」

 コトリと、コーヒーカップを置き、こちらにやってくる。両頬を手で支えられ、ドキドキしてしまう。

「君に伝えておきたいことがある。たとえ君が女になろうとも、私の気持ちは変わらん! 私は、君の内面に惚れたのだからな」

 吸い込まれそうな、純粋な碧い瞳で見つめられる。

「む......。しかし、跡取りを残せないのだけが問題だな......。まあ、それは養子でも迎えるとしよう!」

 パッと手を離し、好き勝手な持論を展開しながら、カラカラ笑う彼女。

「ええと、それだけでしょうか?」

「うむ、それだけだ! なんなら、父上との約束を破ることになってしまうが、夜のデエトと洒落込むかい?」

 いい笑顔で、こちらを見る。

「いや! いやいや! 色んな意味でまずいでしょう、それは!」

「ははっ! 冗談だ! いつでも、我が家に来てくれたまえよ!」

 カラカラ笑いながら、台風娘二号・クッコロさんは帰っていった。

 やれやれ。女になってからというもの、余計な気苦労が増えた気がするな。
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女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!作者:みなはらつかさ
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第六十一話 魔導剣士ロイ、己を売る

 さあ、困ったことになった。

 困った事態だが、金は稼がにゃいかんし、腹だって減る。

 そんなわけで、軽い依頼をこなして、いつもの「蒼い三日月亭」でラムステーキなど食べていると、馴染みの人物が、扉を開けて入ってきた。

「探したよ、ロイ氏ー! てか、噂通りのイケメンガール、キタコレ!」

 なんで、俺の噂広まってんすか。

 何となくクコを見ると、目をそらす。......犯人は、お前か。

 しかし、イケメンガールキタコレと言われても、どう返したものか。

「ありがとうございます。ところで、俺を探していたとのことですが?」

 とりあえず、愛想は返しておこう。

「うんうん。なーんか間が悪くて、いっつも君ら外出中なんだもん。でさ、ロイ氏。絵のモデルやってみない?」

 モロオ邸応接室の、やたらシナを作ったメイドさんが想起される。

「お断りします」

「金貨で、これだけ出そう」

 と、卿が指で提示したのは、かなりの額。

「え? モデルするだけで、こんなもらえるんですか!?」

「もちろん!」

 ここで、ハッとなる。

「......いかがわしい絵じゃ、ないでしょうね?」

「ノンノンノンノン! 極めて健全! ちょーっと、ポーズには凝ってもらうけどね」

 まあ、あのメイドさんぐらいのシナは作らされるということね。

「......やっぱり、メイド服だったりしますか?」

「もちろん!」

 モロオさん、サムズアップ。

「モロオ家特有の、あの?」

「もちろん!!」

 さらに、サムズアップ。

 今、俺の両耳で、それぞれ天使と悪魔が囁いている。

「......ぬ~! じゃあ、これでどうだ!」

 額を上げるモロオさん。

 悪魔が、勝った。


 ◆ ◆ ◆


「モロオさん、その、動かないというのも、しんどいですね......」

「喋らないで。絵がおかしくなっちゃう」

 注意され、無言になる。

 いやはや。格好だけでも恥辱だが、長時間同じポーズを取り続けるのが、ここまでしんどいとは。

「いやー、ロイ氏みたいな、イケメンメイドさんを描くのは、初めてだよ。僕、そっち系に目覚めちゃうな、これ。こういう感じの子、新しく雇おう」

 彼は好き勝手に喋るが、動くなと言われてるので、言葉を返せない。

 やれやれ。


 ◆ ◆ ◆


「フィニッシュ!」

 筆を置く。

「もう、動いていいよ。どう?」

 イーゼルの向こうに回り込み、自分自身を見てみる。

 ......美人だ。凛々しい美人がいる。

 いや、ナルシストか俺は。

「これは、目立つところに飾ろう」

「飾るんですか!?」

 トンデモ宣言に、手をワキワキさせる。

「飾るよー。そのために描いたんだもん。いやー、会心のデキだね!」

 うう......俺のあられもない姿が、この屋敷の目立つところに......。

「あ、約束の報酬ね」

 ずしりと、重い袋が渡される。この重みと引き換えに、とても大事なものを失った気がする......。


 ◆ ◆ ◆


 懐は重いが、心も重い。なんとも沈んだ気持ちで帰ると、クッコロさんがコーヒーを飲んでいた。

「クッコロさん? いかなご用で?」

「おお、その声。君が女子になったという噂は、本当だったか!」

 コトリと、コーヒーカップを置き、こちらにやってくる。両頬を手で支えられ、ドキドキしてしまう。

「君に伝えておきたいことがある。たとえ君が女になろうとも、私の気持ちは変わらん! 私は、君の内面に惚れたのだからな」

 吸い込まれそうな、純粋な碧い瞳で見つめられる。

「む......。しかし、跡取りを残せないのだけが問題だな......。まあ、それは養子でも迎えるとしよう!」

 パッと手を離し、好き勝手な持論を展開しながら、カラカラ笑う彼女。

「ええと、それだけでしょうか?」

「うむ、それだけだ! なんなら、父上との約束を破ることになってしまうが、夜のデエトと洒落込むかい?」

 いい笑顔で、こちらを見る。

「いや! いやいや! 色んな意味でまずいでしょう、それは!」

「ははっ! 冗談だ! いつでも、我が家に来てくれたまえよ!」

 カラカラ笑いながら、台風娘二号・クッコロさんは帰っていった。

 やれやれ。女になってからというもの、余計な気苦労が増えた気がするな。
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