第三話 魔導剣士ロイ、パーティを結成する ―前編―
「ふあああぁぁぁ......」
翌朝大あくびをかましながら、俺たちは女将さんに教えてもらった、街の中央にある大きな商館隣の告知所へ向かい、依頼の内容が書かれた紙 (通称『依頼票』)の貼られた掲示板の前にいる。俺みたいな冒険者たちは、ここで依頼を手にする。
サンの方は、久々にいい食事と寝床にありつけたからか、スッキリ爽やかって感じの、好対象な顔をしていやがる。
当然ここには、都市中の冒険者が集まってくる。都市中の冒険者といっても、その数は百と少しというところ。まあ、俺らみたいのが千人ぐらいいたら、色んな意味で一大事だわな。俺たち冒険者以外には、見張りの衛兵が二人いるだけだ。
その昔、冒険者同士でギルドを作ろうなんて動きもあったらしいが、何ぶん自由人の集まりなのでうまくいかず、空中分解してしまったらしい。
「兄貴、どんな依頼取るんスか?」
「いや、まずはパーティーを組むのが先だ。剣と攻撃魔法は俺が使えるから、盾役と治癒魔法の使い手が欲しいところだな」
そう言って告知所を見回すと、いかにも盾役ですと言わんばかりの、重装戦士が目に止まった。
フルフェイスの兜を被り、体にはガチガチのフルプレートメイル。大盾に長槍、腰には予備武器の小剣、上背も百七十センチをちょっと下回るかぐらいでなかなかと、いかにもこいつは漢! って感じだ。
しかもしめたことに、パーティーに所属していることを示す、徽章を着けていない。つまりフリーだ!
「なあ、そこのフルプレートと長槍のあんた! 俺たちと、パーティー組まないか!?」
右親指で自分を指し示し、アピールする。
「ボクですか? よかった、ボクも入れそうなパーティー、探してたんです!」
返ってきたのは、鈴の音のような可愛い声。異界風に言うと萌え声だった。内股で愛らしいポーズまで取っている。
「......あんた、女?」
「あ、はい。こんな格好だから、よく間違われますけど......」
なんてこった! 俺の漢パーティーがあああああ!
じゃあ別の人に改めて声をかけたらいいだろうと思うだろうが、実はそうもいかない事情があるのだ。
冒険者の間では、よほどのことがなければ声をかけた側が、「やっぱりなし」などと言ってはいけないという、しきたりがある。なぜならば、それは自分の人の見る目のなさを、露呈するようなものだからだ。
それをやったが最後、この業界では、一生白眼視されることになる。同様に、一度仲間にしたら死に別れでもしない限り、仲間を外すことも許されない。かなりシビアかつ、特殊な世界である。
「ロイ・ホーネットデス......ヨロシクオネガイシマス......」
「パトリシア・サンキストです。気軽に、パティって呼んでください」
「オレ、サン・ホーネット! よろしく、パティ姉!」
半分魂が抜けながら握手を交わし、新たな仲間を加えることになりましたとさ。
気を取り直そう。次は治癒術師だ。神官とか薬師とか、そういう感じのがいないかと再び当たりを見回す。
やはり治癒術師は競争率が高いのか、これは! と思うやつを見つけても、もれなくパーティー徽章をつけている。それでも目を皿のようにして見回していると、いた! いかにもって感じの僧衣を着た......女が。
また女か。俺は、漢パーティーを組めない運命にあるのか。だが、治癒術師抜きでの冒険は、どう考えても自殺行為だ。ここは、選り好みしている場合ではないのかもしれない。
「ねーちゃん、ねーちゃん! オレたちのパーティーに入らねえ?」
ってオイ、サァァァァァン! 何、勝手に声かけちゃってくれてんのォッ!? ああいけない、ここで俺がNOと言ったら、サンのメンツを潰すことになる。これも運命か......。こんなしょーもないことで、運命を感じるとはなぁ......。
「有り難いお申し出、感謝いたします。私は、フランシスカ・セルティス。フランとお呼びくださいませ」
おお、お上品なお嬢さんだこと。容姿を改めて見ると、身長は百五十五センチほどで、白基調の僧衣にゆるいウェーブのかかったブロンドのロングヘア。
鎚鉾と聖印の刻まれた小盾に、ブレストプレートという出で立ち。コテコテの神官姿だ。歳のほどは、俺と同じぐらいだろうか。この世界の女性が皆そうであるように、バストは慎ましやか。
いや、いかん俺! どこに注目している! 硬派硬派!
「俺はロイ・ホーネット。こいつが義妹のサンで、こっちがパティ。今後ともよろしく」
まあ、こうなっては是非もない。フランとも握手を交わし、ここにパーティーが成立した次第である。
「さて、なにか適当な依頼を選んで、余裕がありそうなら徽章を作って、結成式でもやるか。......ゾンビ退治か。急ぎの依頼ではないようだな。これなんかどうだ......!?」
バイオでハザードな依頼を選んだところ、一瞬異様な殺気が背筋を貫く。なんだ、この圧は......? 依頼票を取って振り返ると、特に殺気を放っている人物はいない。気のせいか?
「ぜひその依頼にしましょう! 神官としては、不浄の者は放っておけませんので!」
やたら、にこやかなフラン。まあアンデッド退治は、神官が一番輝く仕事だしな。しかし、さっきの殺気 (駄洒落じゃないぞ)は、何だったのだろうか。むむむ。