第七話 魔導剣士ロイ、新たな仲間と出会う ―中編―
「兄貴ーまだっスか~?」
依頼人の自宅に向かうべく、高級住宅街の石畳の上を歩いていると、サンから苦情が飛んできた。もう体感三十分以上、この辺歩き回ってるからなあ。
「まあ待て。ええと......この建物の角を右に曲がれば、すぐのはずだ」
それにしても、どいつもこいつも、いい家に住んでんなあ。俺たちも、目指せセレブ。
「お、多分ここだ」
高級住宅街の中では、比較的質素 (あくまでも比較。それでも十分大きい)な作りの邸宅に、『ベイシック』の表札を確認する。今回の依頼人だ。
「冒険者グループ、『スティング・ホーネット』です。まだ徽章ができあがってませんが......。こちらにお住まいの、依頼人のベイシック卿にお話を伺いにまいりました」
依頼票を二人の門衛に見せる。しかし、どうして門衛ってのはどいつもこいつも、二人組で槍持ってんのかね。
「確かに、ご主人様の依頼書だ。通っても良いが、腰の物は一応預からせてもらう」
そりゃそーですな。得物を門衛に預け邸内に入ると、両開きの玄関の扉をノックする。
少し間をおいて、いかにもって感じの執事服を着た、白髭禿頭の老人が扉を開ける。
「ようこそおいでくださいました。冒険者の方ですね? どうぞこちらに」
いでたちを見ただけで、依頼を受けにきた冒険者と理解したようで、てきぱきと応接間に通された。
外観も比較的質素なら、内装も比較的質素で、華美ではないが上品な感じだ。ソファー、テーブルは素人目にも上物とわかる。
主人を待つ間、執事と入れ替わりに入ってきた若いメイドが、お茶を出してくれた。いい香りが応接室に立ち上る。
これはミルクティーか。まずは一口。うむ、うまい! 鼻腔をくすぐる豊かな香り、深いコクにミルクのまろやかさと砂糖の甘味。温度も丁度いい。
財を成して冒険者を引退したら、本を読みながら日向でゆったりと楽しみたい、そんな味だ。
美味い茶を堪能していると、依頼人と思しきいい身なりをした、カイゼル髭の五十代ほどと受け取れる、ローブの男性が入室してきた。皆で立ち上がり、お辞儀して挨拶をする。
「初めてお目にかかります。『スティング・ホーネット』の、ロイ・ホーネットです」
皆も続けて自己紹介していく。
「ほっほっほ。そう、畏まらなくてもよいですぞ。吾輩はログ・ノイマン・ベイシック。王立学院で、学者をしとります」
着席を促すベイシック卿。おお、気さくな御仁のようで助かる。
「遺跡探索のご依頼、とのことですが」
「うむ。この間、古地図を買ったところ、吾輩の持っていた古書と照らし合わせたら、古代遺跡があるのではないかという推測が立ちましてな」
「”当たり”の可能性は、どのぐらいでしょう?」
「吾輩、自慢ではないですが遺跡をずいぶん見つけてきました。その経験から言って八割」
八割か......まあ悪くない数字だが。
皆を見渡すと、パティ以外はやる気のようだ。まあ、パティは兜のせいで、どんな顔してんのかわからんだけだが。
「では条件を詰めましょうか。今回の件は、学術調査の側面が強いという理解でよろしいですか?」
静かにうなずく卿。
「では、必要なぶんの保存食を持っていただくのと、護衛費として銀貨を百枚。学術的価値の無いものは、我々の取り分......ということでいかがでしょう」
「歴史的資料価値があるもの......たとえば美術品や貨幣、装飾品に武具魔導書は学術的価値のあるもの、とさせていただきますぞ。ただし、そういった物でも、うち五割は報酬として保証しましょう。ただし、選別の優先権はこちらに」
五割か、悪くない。
皆を見渡すと、パティとフラン以外はまずまずの表情。
パティは、相変わらず表情がわからんが、頷いてるからOKの模様。
フランは、よほど死霊をしばき倒したいのだろう、俄然やる気だ。俺のでまかせを、信じ切っちゃってるよこの人。
「では、合意ということで。ご出立は?」
「明日早朝を考えていますぞ。六時の鐘で、街の南門に来てくだされ」
握手と契約書を交わす。時間の余裕ができたか。帰り際にクコの徽章を発注して、あとは歓迎会だな。
「あの......ああ、やっぱり何でもないです」
帰路、またクコが妙な素振りを見せる。一体、何なのだろうか。