第六話 魔導剣士ロイ、新たな仲間と出会う ―前編―
冒険者の朝は早い。雀の声を聞きながら、四人で告知所に向かうと、早くから人だかりができている。
フランを除く俺らは、宿からずっと気を放っていた。「今度こそ、何が何でもマトモな治癒術師をゲットする」という決意である。
でも、パティだけは、なんだかファンシーオーラを放ってる気がしないでもない。
ざっと場の冒険者たちの品定めをする。やはり、どいつもこいつも徽章を着けている。
まあ、あそこで唯一運良くというか、運悪くというか残ってたのがフランだしな......。
諦めかけたそのとき、珍しいものが目に入った。長い尖った耳の女、エルフだ! エルフが人の街に出てくるとは、珍しい。
そうそう何度も外れを引くとも思えないが、うかつに話しかけてまた外れというのではいけない。
まずは人間観察。背丈は百七十センチほど。肩甲骨の下辺りまで伸びているブロンドのロングヘアを、ローポジション・ポニーテールにまとめている。
スタイルはエルフらしく華奢で、緑基調の上着と白のロングスカートを履いており、どこぞのバーサーカーとは異なる、真に清楚な印象を受ける。
しかし、さらに真に注目すべきは、腰に装着している様々な草や種がぶら下がったハーブホルダーだ。
これは、薬師独特の装備で、イコール治癒魔法を使えることを示している。見たところ徽章も着けていない。これは優良物件。俺たちは運がいい!
「俺はロイ・ホーネット、こいつらは俺の連れ。見ての通り、冒険者だ。頼りになる治癒術師を探している。そこのエルフの姉さん、仲間にならないか!?」
ビシッと右親指で自分を指し示し、ドヤ顔でキメる。どうよ!?
「ありがとうございます。わたしも都に出てきたばかりで、右も左もわからなくて......。クコ・ハーバロイエといいます。よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀する彼女。おお、好感の持てる娘さんだ。一同自己紹介を行い、明日の糧を稼ぐために依頼票を吟味する。
まず目についたのはスケルトン退治......まだ心の傷が癒えてないので、鼻息の荒い神官サマを見なかったことにしてスルー。
ゴブリン退治。ベタだなー、保留。
ドラゴン退治。死ぬわ、次。
遺跡探索......ほう、これなんか面白いんじゃないか? ただ、遺跡探索というのは結構博打だ。まず、遺跡の情報を持っている人物の護衛という形で探すわけだが、当然依頼人がガセネタを掴まされている場合がある。
また、依頼人の取り分というのが当然ある。ただ、それを差し引いても当たるとでかい。
「問題なければ、これにしたいのだが」
皆に依頼票を見せる。
「異議あり! スケルトンを放っておくなんて、道外れなことができますでしょうか!?」
ゾンビ相手に人の道を外してたやつが、何か言ってるぞ。
「まあ聞け。もし、遺跡に死霊のような、より悪しきアンデッドがいたら? 正義の神官としては、そちらを先に倒すべきではないのか?」
「......一理ありますわね」
考え込んで、黙ってしまう神官サマ。チョロい。
一番の問題児を言いくるめてしまえば、特に反対が出るでもなく、話はトントン拍子にまとまった。
あとは依頼人に会って詳しい打ち合わせをし、時間の余裕があればクコの徽章を発注してから、歓迎会というところか。
「あの......いえ、何でもないです」
クコが不意に、もじもじして何か言おうとしたが、発言を取りやめてしまった。
「依頼のことか?」
「いえ、そういうわけではないのですけど......」
何だろう? 妙にクコの態度が引っかかったが、まあ、きちんと言いたくなったら言うだろう。