緑の河童
河童を見ました。
その子は水面上に、目から上だけを出して、私を橋の下から見ていました。私は恐くて奇妙で、好奇心を奮い立てられました。ずっと見ていました。
夕方、あたりは真っ赤に染まり、河童は緑。水面は夕日の赤を反射し、水面下の仄暗い黒を湧き出し、赤黒く染まっていました。
その中にポツンと緑。
まだ目を離しません。私はいつの間にか橋の端に進んでいました。身を乗り出し、眺めました。赤い赤い橋の手すりに手を置き、全体重を乗せ、覗き込みました。河童は動きません。緑のままです。血走った目だけがこちらを向いたままでした。その時、私は何を思ったのか、前のめりに倒れこみました。自分の意志で、身を乗り出しました。そして、そのまま、頭から落ちていきました。ザパンっと音が鳴り、水中で一回転して目を開け、そして凝らし、前を見ました。
その瞬間、私の肺から空気が一気に溢れ出て上に登り、水面上の空気と混ざり合いました。
私は見ました。
目の前に緑。
血走った目。
私が橋の上から見た河童がそこにいました。河童には目から下がありませんでした。顎も、首も体もありませんでした。目と鼻の間を鋭い綺麗な刃物で切られ、鼻より上だけが離された状態で......まさに水面に出ていた目から上だけの状態で、そこにいました。
赤黒く染まった水中に明らかに違う鮮明な赤が広がっていました。その赤はまるで水の中に広がる墨汁のように、異端な存在でした。すぐに、どこからその赤が出ているのかわかりました。河童の、目の下からでした。スパンっと綺麗に切れた切断面から赤い物が流れていました。
河童の目を再度見ました。まだ私を凝視していました。血走った暗い灰色の白目が怖かったです。私はすぐに目を閉じ、水面に顔を出し、川岸に上がりました。急いで、一目散に橋の上に這い登り、また下を見ました。
河童はいました。
水中にいた河童の顔は水面上に出ていて、やはり、私を凝視していました。そこでふと気づいたことがあります。
ここの川は水深が私の膝ぐらいの深さなのです。水中で一回転した私は......?私はくるりと踵を返し、橋を渡りきろうと橋の上を見ました。
そこには、居ました。
河童は血走った目だけで私を見ていました。
緑でした。
夕日は沈みかけていて辺りは薄暗く、藍色と灰色でした。
そんな中、緑でした。