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しゅうまつ、プールの宇宙にて



「......つづいてのニュースをお伝えします。ただいま、日本全土に、『ノストラダムスの大予言警報』が発令されております。現在、隕石は大気圏への突入コースを進んでおり、二十時から二十一時頃、ペルセウス座流星群と共に上空を通過する可能性があるということです。屋外での活動を控え、速やかに建物の内部へ避難してください。なお、現在のところ、落下地点については確定しておりません。繰り返します......」

 静かなリビング。スマホ画面から、ニュースサイトの動画の声だけが響く。窓から差し込む夕陽が、いつも通り食卓を窓枠の分だけ赤く染め上げていた。スマホから流れる音声AIの無機質な声を聞き流しながら、宇野(うの) 魁星(かいせい)は粛々と出かける準備をしていた。

 『ノストラダムスの大予言警報』とは、数年前から度々発令されているものだ。
 近年、天文学者の間で小惑星の破片が地球へ衝突することが懸念されており、その破片群が衝突する可能性が年々、数パーセントずつ上がってきていた。僅かな確率の上昇だったが、それは宇宙規模で考えると、僅か、と言うにはあまりに大きな確率の変化ではあった。
 そして、その予測は見事的中し、小惑星の破片は次々と地球上のあちこちに降り注ぐようになった。しばらくすると、その現象は自然災害のように処理され、『ノストラダムスの大予言警報』という名称で各メディアが発表するようになった。「天より王が降りる」という言葉から、この名称が付けられた当該現象は、広い地球上のどこかに数十センチから数メートルの隕石が落ちてくるというものだった。大きく外れた予言の名称をつけてしまうことに些か懐疑的ではあったが、政府が決めたことに異を唱えられるはずもない。

「......それでは、良きしゅうまつをお過ごしください」

 スマホの中から、音声AIの無機質な声が聞こえてきた。金曜日の今日であれば、『良き週末を』と言われてもおかしくは無い。今は終末に近いが。
 そんなことを思いながら、宇野はスマホから垂れ流しの動画を閉じ、肩掛け鞄を持って誰もいない家から出た。
 歩き出してすぐに、スマホが鳴る。

『宇野くん、私そろそろ学校に向かうよ』

 メッセージを確認して閉じる。

 目指すは学校。高校生の宇野にとって、人生の中で一番長く過ごしてきた、親しみ深い概念。そして、手っ取り早く『宇宙』を感じることができる場所。

(学校......プールへ、行こう)

 登下校で使っている道を歩く。警報が発令されているからか、皆、家の中や避難所でいつもの道が酷く静かだった。人の活動全てが静止し、街灯や自販機だけが生命のように光っていた。
 足早に街を歩いていく。ここの曲がり角を曲がれば、学校に着く。そうやって角を曲がった時だった。学校の前に誰かが立っている。思わず身を潜めて目を凝らすが、それが待ち合わせをしていた人物だと知って一つ息を吐く。
 きょろきょろと辺りを警戒するように門の前に立っていた彼女の名前は空知(ソラチ)咲輝(サキ)。彼女とはそこまで仲がいいと言うわけではないが、席替えの時に隣に座ったことがきっかけで喋るようになった女子生徒だ。その吸い込まれるような艶やかな闇色が綺麗だなと、揺れる髪を度々見ていた。いつもは制服姿の彼女が、今日はTシャツとショーパンを身につけている。珍しいなとは思うが、夏休みなのだから制服は着る必要もないかと、自身の私服を見下ろして頷く。
 体を乗り出して、歩いて近づくと、向こうも気がついたのか手を上げた。

「宇野くん」
「空知さん、ごめんね遅くなって」
「ううん、私も今来たところ」

 そうやって何気なくもない会話をすると、彼女は持っていた鞄を門の中に投げ入れた。その後すぐに、門をよじ登り、学校へ侵入していく。その姿を見て一度苦笑した後、宇野も同じように入っていく。門から飛び降りるのを確認すると、彼女は笑った。

「じゃ、行こっか」

 その言葉に頷き、鞄を持って二人で歩く。誰も居ない学校。先程まで橙色をしていた空に、藍色が混ざり始める。スマホで確認すると、時間は十九時過ぎ。流星群は二十時から二十一時頃に見えるはずだ。ちょうどいい頃合いだろう。

「どうしてプールに行くの?」

 彼女がおもむろに聞いてくる。歩く時にサラサラと揺れる髪が綺麗だと感じた。

「......宇宙を感じたいから」
「ふーん?」

 自身の返しに彼女が首を傾げる。そんな彼女に自身も問いかけた。

「プールに行こうって言ったら、行くって返した君もおかしいよ」
「ナイトプールかと思ってた」
「はっ......! 確かに!」
「そしたら学校に忍び込んで、学校のプールに行くって言うんだもん」
「途中で言ってよ、それは違うでしょって」
「面白かったから、つい......どこまで本気なんだろうと思って。そしたら、こうなった」

 彼女が肩を竦める。顔が少し熱くなりながらも、言葉を交わしてプールへと続く道を歩く。プールは校舎の裏側、一番奥にある。のんびりと運動場や校庭、校舎の窓を眺めながら進んだ。校舎内であれば、思い出の一つや二つ、拾えたかもしれない。まぁ、さすがに鍵がかかっているだろう。
 そうやって会話をしながらゆっくりと歩いていると、プールに着いた。正面の扉は鍵がかかっていたが、プールの裏口は鍵が壊れていて、いつでも開いていることを知っている。裏口のノブを捻ると、すんなりとまわった。彼女が少し驚いたように小さく声を上げた。

「へぇ? 開いてるんだ?」
「知らなかった? これで夜中忍び込んで遊んでる人たち結構いるよ」
「うっわ......」

 自身の返しに、彼女の顔が歪む。その顔に苦笑すると、彼女が目を伏せた。首を傾げながらも、ゆっくりと開けて中に入ると、プールの独特な塩素の匂いが漂ってきた。中に入り、彼女は女子更衣室へ。自身は男子更衣室へと向かう。
 SNSで情報をチェックしながら静かに更衣室へ向かうと、母親からメッセージが入った。

『父さんと母さんは今日は帰れないから、お家で過ごしていてね。ごめんね』

 その文言に頷いて、静かに、情報収集を再開した。今回の『ノストラダムスの大予言警報』を発令させた隕石は、どうやらペルセウス座流星群と共に紛れてやって来るらしい。日本近海から、日本全土を覆うように予報円が表示されている。
 更衣室に入り、水着に着替える。ラッシュガードの前を閉めながらも、スマホを見ていた。すると、画面に通知が表示される。

『先にプールに行ってる』

 彼女からのメッセージに、一度、頷く。着替え終わった後、更衣室を出て屋外プールに出ると、まだ外は少し明るかった。ちゃぽちゃぽと水が壁を打つ音がやけに大きく聞こえた。火照った体が吹き抜ける風で冷やされていく。スマホを見ると、二十時前。
 片手に持ったスマホで情報を確認する。スマホを見ながらもプールサイドまで歩き、腰を下ろした。濡れないようにスマホを少し遠くに置く。水に足をつけると、そこだけ亜空間に飛ばされたように、気持ちが良い。冷たい水の感覚と、塩素の匂いが肺を満たした。
 彼女はどこだろうと辺りを見渡すと、プールの中央から、女性が顔だけ出してこちらを見ていることに気がついた。

「うわっ!」

 そのあまりの光景に、思わず声が出てしまった。
 しばらく見つめ合った後、その女性が先程見た空知だということがわかった。彼女の水面に出した目元がニヤニヤと笑う。

「......宇野くん、びっくりした?」
「驚かさないで。幽霊かと思った」
「幽霊とか信じるタイプだっけ?」

 彼女がクスッと笑う。水面を揺らしながら、慣れたように軽く泳いでくると、プールサイドに座る自身のすぐそばまで来て、両手をプールの端に乗せてこちらを見上げてきた。
 先程までサラサラとなびいていた髪が今は濡れて艶やかな色を反射していた。彼女は顔の水を手で拭い、こちらに笑いかけた。

「で、なんで学校のプールなの?」

 彼女の高くか細い声が水の音と混ざり合いながら、星のように浮かぶ。その瞬きに、自身の脳内が焼かれる気がした。水中にゆらゆら揺れる体を見ると、しっかりとスクール水着を身につけていることに気がつく。彼女がこちらに向かって本当に小さく、首を傾げた。その機微ですら網膜に張り付く。思わず両手で顔を覆ってしまった。

「空知さんも、どうして来たの?」

 次の瞬間には言葉を返していた。脳内のシナプスが彼女の言葉に反応したように、制御できずに光っていた。自身の言葉に、彼女が笑う。初めて見たかもしれない。今まで、意識したことのない彼女の笑い顔に頭が揺れた。

「私から聞いた。二回。さっきの答えは意味わかんなかった」

 彼女がからかうようにプールサイドを掴む手に頬を乗せて笑う。その言葉に空を見上げた後、また彼女に視線を戻す。それから真っ直ぐに答えた。

「......宇宙を感じたいから」
「またそれ? 宇宙......流星群を見たかったの? ああ、隕石? それならもっと暗いところが良かったんじゃない?ここ、外灯ついてるし」

 そう言って、ざぱっと音を鳴らして手を上げると、彼女がプールに備え付けられた外灯を指さす。彼女の細い指の先を追って外灯を確認し、肩を竦めた。

「僕は答えた。君の番。人を驚かせたんだから、理由を教えてよ」
「驚かせるつもりはなかったよ?」
「あっそ。で、プールに来た理由は?」
「......本当に、単純に、面白そうだったからだよ」
「ふーん?」
「なんで、私を誘ったの?」
「仲良い人達にメッセージ送って、帰ってきたのが君だけ。警報が出てるから、外に出れないってさ」
「ああ、なるほど」

 ちゃぽんっと鳴る音と共に、波紋のように静かにその言葉が響いた。視線を下に向けて水につけた両脚を見る。彼女に嘘をついた自身の口を結ぶ。
 彼女のことは、ただ、ちょっと、気になっていただけだ。ほんのちょっと。髪が綺麗だなって思っていただけ。でも、このしゅうまつを孤独に過ごすより、彼女と過ごせたらと思って......僅かな希望を持って、メッセージを送っただけだ。プールに行かないか? と。
 そうやって希望的観測のもと、本当に来てしまった彼女を見る。目が合うと、彼女が首を傾げたあと笑った。水しぶきを上げながら潜ると、水中でプールサイドを蹴り、あっという間にプールの中央まで進んで行った。それから、水が空気を震わせる音を鳴らしながら、こちらに手を振る。

「宇宙を感じたいんでしょ! 宇野くん!」

 そう言いながら手招きをする彼女を目を細めて見つめた。先程とは笑みを変えて、彼女がケラケラと笑う。初めて見た。そんな風に笑うのかと、恒星がシナプスと共に光り、心臓に一つ落ちる。なんだか、心地よく、痛い。陽は落ち、地平線の彼方を僅かな橙と侵食する藍が染めていた。混ざり合った紫の空に、星が輝き始めている。マジックアワーと呼ぶには少し遅いその空の下、彼女が手招きをしていた。
 ペルセウス座流星群が本格的に見え始めるのも、あと少しだろう。しゅうまつに向かって進む時間が、空の色で分かる。腰を浮かせて、プールに降りると、空気と水が混ざる音とともに体が沈んだ。
 中腰になって、中央に向かうように、水中を泳ぐことなく歩く。彼女の作った引力に吸い寄せられるように。上手く動かせない身体を前に進ませようと、手足を揺らす。

(......まるで、宇宙だ)

 自身の僅かな経験からは導き出されるはずのない、ちっぽけな偽物の無重力を感じながら、小さく思う。冷たい水、仄暗い闇、それからほんの少しの孤独感に目を開ける。ぼんやりとした視界の中、黒い物体に近づいていく。プールの中央に立っていた彼女だろう。やがてそれが人の形のシルエットになったところで、呼吸をするために、水中から顔を出した。自身が空気を揺らす音を聞き流しながら、顔についた水を両手を使って拭う。そうしていると、目の前から声がかけられた。

「宇宙は感じられた?」
「......孤独と物体Xに出会った気分だ」
「ふーん?」

 意味がわからないと言いたげな返事を聞き流して、空を見上げる。濃い紫になった空に、星が次々と点滅し始めていた。瞬く生命のような星を見上げ、そのまま後ろに倒れ込むように、水に浮く。外灯が照らす、遠い闇に瞬く生命を見上げた。すると、彼女も少し離れて、同じように水に浮いた。しばらくの沈黙の後、彼女が口を開く。

「......しゅうまつは家族と一緒に過ごすのが普通じゃないの?」
「僕の両親は仕事中。今、ものすごく忙しいと思う。メッセージを送ってくれただけでもありがたいよ」
「ふーん、なるほど」

 実際、両親は今現在、馬車馬のように働いていることだろう。そんな中、メッセージを送ってくれただけでも、本当に愛されているなと感じていた。どこに隕石が降ってくるか分からない以上、どこにいたって変わらないだろう。家にいても、校舎にいても、プールにいても、宇宙規模で考えればすべて同じ地点だ。

「......で、君は?」
「うちは、元々、片親だし。お母さんは彼氏と一緒に過ごすって言ってたから」
「......なるほど」

 先程の言葉を反芻する。冷たい水の方が暖かいとはそういう事なのだろうと勝手に解釈して、目を伏せた。すると、彼女も笑った。

「宇野くん、勘違いしてるでしょ。お母さんは私と一緒に過ごしたがってたよ。ただ、私は邪魔になるだろうから、私から断ったの」
「じゃあ、君が愛していないと示したんだ?」
「言い方、すごい悪いよ。でも、そうなるかな。現に、着信とかメッセとか煩く来てたから、スマホはさっきプールに沈めちゃった。宇野くんに送ったメッセが最後のやり取り」
「うっわ......」

 その言葉に思わず水の中に一度沈んで、立ち上がった。水面に浮かぶ彼女を見て、問いかける。

「どの辺に沈めたの?」
「わかんない。適当に投げたから......これ、しゅうまつが来なかったら私、怒られちゃうかな〜」
「探してあげるから。どの辺? 防水機能ついてる?」
「いいよ、別に」

 ヘラヘラと笑いながらも冷たく短い言葉を返してきた。しゅうまつを望む彼女の顔を見る。探してあげようと思ったが、本人にその意思が無いようなので諦めてもう一度浮かんだ。

「......じゃあ、君はしゅうまつを望んでいるんだ?」
「そうだね」

 嘘か真か分からない肯定の返しに、空を見上げてどう答えようか悩んでいると、一瞬、光るものが短く通り過ぎた。

「あっ......!」

 彼女も同じものを見たのだろう。空に一本指を伸ばす。そのままバランスを崩して彼女はそのまま水に沈んだ。直ぐに顔を出して、顔の水を払いながら空を見上げた。そんな彼女に小さく笑いながら、自身も空を見る。
 一つ、流れてしまえば、次々と続く。
 光が流れていく。
 流れていく短い光が強く輝いては消える。
 隣にいた彼女がまた仰向けに浮き始めた。その様子を水の動きで感じながらも、酷く短命な流星を目を細めて見つめた。

「......綺麗」

 隣の彼女から、美しく細い琴の音のような声が聞こえた。弦を弾くように、水音と共に溶け、彼女の声が自身の脳に浸透する。途端に、先程と似たようにシナプスがチカチカと光った。自身の脳内を反映したかのように、夜空に流星群が降り注ぐ。どうしてだか、顔が熱い。水は冷たいはずなのに、体の奥から火照る気がする。
 悶々と考えていると、少し離れて浮いていた彼女といつの間にか近づいていた。水の表面張力に引かれる木の葉のように、肩が触れた。

「あ、ごめ......」
「見て、宇野くん。大っきいの、来る」

 彼女が目を見開きながら、小さく呟いた。
 自身もその言葉に思わず空を見上げる。
 確かに、今までとは違う、強く、大きな光が、飛んでいく。
 輝きが遠くに見える。そのまま大きく長く、そして鋭く。
 光の軌跡を作って、そして、消えた。
 まだ、流星群は止まらない。
 自身の呼吸が、短くなる。
 この美しい光景を瞳に焼き付けた。
 その時、ハッと我に返った。急いで体を翻してプールの端へと泳ぎ、水から上がった。重く怠い体を押し上げて、プールサイドに腰掛けてスマホを手に取る。どこに落ちたのか、リアルタイムの情報を取るために、誰でも投稿できるようなSNSを開いた。情報の精査は後に回せばいい。とにかく、多くの情報を集めることに専念した。

「......観測座標、飛来経路、落下地点、被害地域、状況......」
「宇野くん?」

 プールサイドまで泳いできた彼女の問いに沈黙で返す。じっとスマホの画面を見ていた自身の隣に座り、一緒に画面を覗き込んだ。彼女がつぶやく。

「日本近海......数十センチ程の隕石......津波の恐れなし......」

 彼女の言葉に頷いて笑う。
 改めて、ちっぽけな人生だったと思う。テストで満点を取ったことだって数回。最優秀賞なんかとったこともなければ、部活動で優勝なんて程遠い。息をしているだけの、ちっぽけな生命である自身が星に焼かれる瞬間に宇宙を感じたかった。ちっぽけな自身が虚勢を張るだけのちっぽけな偽物の宇宙を。
 ただ、その宇宙は、これからも続いていくのだ。

「......しゅうまつは、ただの週末になったみたいだね」

 暖色の安堵と寒色の遺憾が心に入り交じる。まるで、先程までの空みたいだ。隣の彼女の濡れたまつ毛を見下ろす。画面をのぞき込む彼女の濡れた体がぴったりとくっついていることに、今、気がついた。途端に、身体が熱くなる。そんな自身の二の腕を彼女が掴んだ。それから、泣きそうな顔でこちらを見上げた。

「まって、まってまって! これ、スマホ、プールの中に落としたの、怒られちゃう!」

 そう言って、彼女が慌ててプールの中に飛び込んだ。目をぱちくりとさせていると、ザプっと彼女が水の中から顔を出して叫んだ。

「宇野くん! お願い! 探すの手伝って! 防水だから、たぶん、大丈夫なはず! 大丈夫だと思いたい!」

 そう言ってそのまま潜り始める。静かになったプールに、水の中から泡だけが上ってきた。呆気にとられた後、苦笑する。
 彼女はどうやらノストラダムスの大予言に期待していたようだ。
 彼女のスマホを探すべく、自身も心地の良い偽物の無重力の中に降りた。

 このしゅうまつは、しゅうまつをむかえなかった。だが、どうやら彼女の介入により、自身の穏やかでちっぽけな宇宙にはしゅうまつが訪れたようだった。
 だって、これから先、プールに宇宙を感じる度に、彼女を思い出すのだから。

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しゅうまつ、プールの宇宙にて



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 静かなリビング。スマホ画面から、ニュースサイトの動画の声だけが響く。窓から差し込む夕陽が、いつも通り食卓を窓枠の分だけ赤く染め上げていた。スマホから流れる音声AIの無機質な声を聞き流しながら、宇野(うの) 魁星(かいせい)は粛々と出かける準備をしていた。

 『ノストラダムスの大予言警報』とは、数年前から度々発令されているものだ。
 近年、天文学者の間で小惑星の破片が地球へ衝突することが懸念されており、その破片群が衝突する可能性が年々、数パーセントずつ上がってきていた。僅かな確率の上昇だったが、それは宇宙規模で考えると、僅か、と言うにはあまりに大きな確率の変化ではあった。
 そして、その予測は見事的中し、小惑星の破片は次々と地球上のあちこちに降り注ぐようになった。しばらくすると、その現象は自然災害のように処理され、『ノストラダムスの大予言警報』という名称で各メディアが発表するようになった。「天より王が降りる」という言葉から、この名称が付けられた当該現象は、広い地球上のどこかに数十センチから数メートルの隕石が落ちてくるというものだった。大きく外れた予言の名称をつけてしまうことに些か懐疑的ではあったが、政府が決めたことに異を唱えられるはずもない。

「......それでは、良きしゅうまつをお過ごしください」

 スマホの中から、音声AIの無機質な声が聞こえてきた。金曜日の今日であれば、『良き週末を』と言われてもおかしくは無い。今は終末に近いが。
 そんなことを思いながら、宇野はスマホから垂れ流しの動画を閉じ、肩掛け鞄を持って誰もいない家から出た。
 歩き出してすぐに、スマホが鳴る。

『宇野くん、私そろそろ学校に向かうよ』

 メッセージを確認して閉じる。

 目指すは学校。高校生の宇野にとって、人生の中で一番長く過ごしてきた、親しみ深い概念。そして、手っ取り早く『宇宙』を感じることができる場所。

(学校......プールへ、行こう)

 登下校で使っている道を歩く。警報が発令されているからか、皆、家の中や避難所でいつもの道が酷く静かだった。人の活動全てが静止し、街灯や自販機だけが生命のように光っていた。
 足早に街を歩いていく。ここの曲がり角を曲がれば、学校に着く。そうやって角を曲がった時だった。学校の前に誰かが立っている。思わず身を潜めて目を凝らすが、それが待ち合わせをしていた人物だと知って一つ息を吐く。
 きょろきょろと辺りを警戒するように門の前に立っていた彼女の名前は空知(ソラチ)咲輝(サキ)。彼女とはそこまで仲がいいと言うわけではないが、席替えの時に隣に座ったことがきっかけで喋るようになった女子生徒だ。その吸い込まれるような艶やかな闇色が綺麗だなと、揺れる髪を度々見ていた。いつもは制服姿の彼女が、今日はTシャツとショーパンを身につけている。珍しいなとは思うが、夏休みなのだから制服は着る必要もないかと、自身の私服を見下ろして頷く。
 体を乗り出して、歩いて近づくと、向こうも気がついたのか手を上げた。

「宇野くん」
「空知さん、ごめんね遅くなって」
「ううん、私も今来たところ」

 そうやって何気なくもない会話をすると、彼女は持っていた鞄を門の中に投げ入れた。その後すぐに、門をよじ登り、学校へ侵入していく。その姿を見て一度苦笑した後、宇野も同じように入っていく。門から飛び降りるのを確認すると、彼女は笑った。

「じゃ、行こっか」

 その言葉に頷き、鞄を持って二人で歩く。誰も居ない学校。先程まで橙色をしていた空に、藍色が混ざり始める。スマホで確認すると、時間は十九時過ぎ。流星群は二十時から二十一時頃に見えるはずだ。ちょうどいい頃合いだろう。

「どうしてプールに行くの?」

 彼女がおもむろに聞いてくる。歩く時にサラサラと揺れる髪が綺麗だと感じた。

「......宇宙を感じたいから」
「ふーん?」

 自身の返しに彼女が首を傾げる。そんな彼女に自身も問いかけた。

「プールに行こうって言ったら、行くって返した君もおかしいよ」
「ナイトプールかと思ってた」
「はっ......! 確かに!」
「そしたら学校に忍び込んで、学校のプールに行くって言うんだもん」
「途中で言ってよ、それは違うでしょって」
「面白かったから、つい......どこまで本気なんだろうと思って。そしたら、こうなった」

 彼女が肩を竦める。顔が少し熱くなりながらも、言葉を交わしてプールへと続く道を歩く。プールは校舎の裏側、一番奥にある。のんびりと運動場や校庭、校舎の窓を眺めながら進んだ。校舎内であれば、思い出の一つや二つ、拾えたかもしれない。まぁ、さすがに鍵がかかっているだろう。
 そうやって会話をしながらゆっくりと歩いていると、プールに着いた。正面の扉は鍵がかかっていたが、プールの裏口は鍵が壊れていて、いつでも開いていることを知っている。裏口のノブを捻ると、すんなりとまわった。彼女が少し驚いたように小さく声を上げた。

「へぇ? 開いてるんだ?」
「知らなかった? これで夜中忍び込んで遊んでる人たち結構いるよ」
「うっわ......」

 自身の返しに、彼女の顔が歪む。その顔に苦笑すると、彼女が目を伏せた。首を傾げながらも、ゆっくりと開けて中に入ると、プールの独特な塩素の匂いが漂ってきた。中に入り、彼女は女子更衣室へ。自身は男子更衣室へと向かう。
 SNSで情報をチェックしながら静かに更衣室へ向かうと、母親からメッセージが入った。

『父さんと母さんは今日は帰れないから、お家で過ごしていてね。ごめんね』

 その文言に頷いて、静かに、情報収集を再開した。今回の『ノストラダムスの大予言警報』を発令させた隕石は、どうやらペルセウス座流星群と共に紛れてやって来るらしい。日本近海から、日本全土を覆うように予報円が表示されている。
 更衣室に入り、水着に着替える。ラッシュガードの前を閉めながらも、スマホを見ていた。すると、画面に通知が表示される。

『先にプールに行ってる』

 彼女からのメッセージに、一度、頷く。着替え終わった後、更衣室を出て屋外プールに出ると、まだ外は少し明るかった。ちゃぽちゃぽと水が壁を打つ音がやけに大きく聞こえた。火照った体が吹き抜ける風で冷やされていく。スマホを見ると、二十時前。
 片手に持ったスマホで情報を確認する。スマホを見ながらもプールサイドまで歩き、腰を下ろした。濡れないようにスマホを少し遠くに置く。水に足をつけると、そこだけ亜空間に飛ばされたように、気持ちが良い。冷たい水の感覚と、塩素の匂いが肺を満たした。
 彼女はどこだろうと辺りを見渡すと、プールの中央から、女性が顔だけ出してこちらを見ていることに気がついた。

「うわっ!」

 そのあまりの光景に、思わず声が出てしまった。
 しばらく見つめ合った後、その女性が先程見た空知だということがわかった。彼女の水面に出した目元がニヤニヤと笑う。

「......宇野くん、びっくりした?」
「驚かさないで。幽霊かと思った」
「幽霊とか信じるタイプだっけ?」

 彼女がクスッと笑う。水面を揺らしながら、慣れたように軽く泳いでくると、プールサイドに座る自身のすぐそばまで来て、両手をプールの端に乗せてこちらを見上げてきた。
 先程までサラサラとなびいていた髪が今は濡れて艶やかな色を反射していた。彼女は顔の水を手で拭い、こちらに笑いかけた。

「で、なんで学校のプールなの?」

 彼女の高くか細い声が水の音と混ざり合いながら、星のように浮かぶ。その瞬きに、自身の脳内が焼かれる気がした。水中にゆらゆら揺れる体を見ると、しっかりとスクール水着を身につけていることに気がつく。彼女がこちらに向かって本当に小さく、首を傾げた。その機微ですら網膜に張り付く。思わず両手で顔を覆ってしまった。

「空知さんも、どうして来たの?」

 次の瞬間には言葉を返していた。脳内のシナプスが彼女の言葉に反応したように、制御できずに光っていた。自身の言葉に、彼女が笑う。初めて見たかもしれない。今まで、意識したことのない彼女の笑い顔に頭が揺れた。

「私から聞いた。二回。さっきの答えは意味わかんなかった」

 彼女がからかうようにプールサイドを掴む手に頬を乗せて笑う。その言葉に空を見上げた後、また彼女に視線を戻す。それから真っ直ぐに答えた。

「......宇宙を感じたいから」
「またそれ? 宇宙......流星群を見たかったの? ああ、隕石? それならもっと暗いところが良かったんじゃない?ここ、外灯ついてるし」

 そう言って、ざぱっと音を鳴らして手を上げると、彼女がプールに備え付けられた外灯を指さす。彼女の細い指の先を追って外灯を確認し、肩を竦めた。

「僕は答えた。君の番。人を驚かせたんだから、理由を教えてよ」
「驚かせるつもりはなかったよ?」
「あっそ。で、プールに来た理由は?」
「......本当に、単純に、面白そうだったからだよ」
「ふーん?」
「なんで、私を誘ったの?」
「仲良い人達にメッセージ送って、帰ってきたのが君だけ。警報が出てるから、外に出れないってさ」
「ああ、なるほど」

 ちゃぽんっと鳴る音と共に、波紋のように静かにその言葉が響いた。視線を下に向けて水につけた両脚を見る。彼女に嘘をついた自身の口を結ぶ。
 彼女のことは、ただ、ちょっと、気になっていただけだ。ほんのちょっと。髪が綺麗だなって思っていただけ。でも、このしゅうまつを孤独に過ごすより、彼女と過ごせたらと思って......僅かな希望を持って、メッセージを送っただけだ。プールに行かないか? と。
 そうやって希望的観測のもと、本当に来てしまった彼女を見る。目が合うと、彼女が首を傾げたあと笑った。水しぶきを上げながら潜ると、水中でプールサイドを蹴り、あっという間にプールの中央まで進んで行った。それから、水が空気を震わせる音を鳴らしながら、こちらに手を振る。

「宇宙を感じたいんでしょ! 宇野くん!」

 そう言いながら手招きをする彼女を目を細めて見つめた。先程とは笑みを変えて、彼女がケラケラと笑う。初めて見た。そんな風に笑うのかと、恒星がシナプスと共に光り、心臓に一つ落ちる。なんだか、心地よく、痛い。陽は落ち、地平線の彼方を僅かな橙と侵食する藍が染めていた。混ざり合った紫の空に、星が輝き始めている。マジックアワーと呼ぶには少し遅いその空の下、彼女が手招きをしていた。
 ペルセウス座流星群が本格的に見え始めるのも、あと少しだろう。しゅうまつに向かって進む時間が、空の色で分かる。腰を浮かせて、プールに降りると、空気と水が混ざる音とともに体が沈んだ。
 中腰になって、中央に向かうように、水中を泳ぐことなく歩く。彼女の作った引力に吸い寄せられるように。上手く動かせない身体を前に進ませようと、手足を揺らす。

(......まるで、宇宙だ)

 自身の僅かな経験からは導き出されるはずのない、ちっぽけな偽物の無重力を感じながら、小さく思う。冷たい水、仄暗い闇、それからほんの少しの孤独感に目を開ける。ぼんやりとした視界の中、黒い物体に近づいていく。プールの中央に立っていた彼女だろう。やがてそれが人の形のシルエットになったところで、呼吸をするために、水中から顔を出した。自身が空気を揺らす音を聞き流しながら、顔についた水を両手を使って拭う。そうしていると、目の前から声がかけられた。

「宇宙は感じられた?」
「......孤独と物体Xに出会った気分だ」
「ふーん?」

 意味がわからないと言いたげな返事を聞き流して、空を見上げる。濃い紫になった空に、星が次々と点滅し始めていた。瞬く生命のような星を見上げ、そのまま後ろに倒れ込むように、水に浮く。外灯が照らす、遠い闇に瞬く生命を見上げた。すると、彼女も少し離れて、同じように水に浮いた。しばらくの沈黙の後、彼女が口を開く。

「......しゅうまつは家族と一緒に過ごすのが普通じゃないの?」
「僕の両親は仕事中。今、ものすごく忙しいと思う。メッセージを送ってくれただけでもありがたいよ」
「ふーん、なるほど」

 実際、両親は今現在、馬車馬のように働いていることだろう。そんな中、メッセージを送ってくれただけでも、本当に愛されているなと感じていた。どこに隕石が降ってくるか分からない以上、どこにいたって変わらないだろう。家にいても、校舎にいても、プールにいても、宇宙規模で考えればすべて同じ地点だ。

「......で、君は?」
「うちは、元々、片親だし。お母さんは彼氏と一緒に過ごすって言ってたから」
「......なるほど」

 先程の言葉を反芻する。冷たい水の方が暖かいとはそういう事なのだろうと勝手に解釈して、目を伏せた。すると、彼女も笑った。

「宇野くん、勘違いしてるでしょ。お母さんは私と一緒に過ごしたがってたよ。ただ、私は邪魔になるだろうから、私から断ったの」
「じゃあ、君が愛していないと示したんだ?」
「言い方、すごい悪いよ。でも、そうなるかな。現に、着信とかメッセとか煩く来てたから、スマホはさっきプールに沈めちゃった。宇野くんに送ったメッセが最後のやり取り」
「うっわ......」

 その言葉に思わず水の中に一度沈んで、立ち上がった。水面に浮かぶ彼女を見て、問いかける。

「どの辺に沈めたの?」
「わかんない。適当に投げたから......これ、しゅうまつが来なかったら私、怒られちゃうかな〜」
「探してあげるから。どの辺? 防水機能ついてる?」
「いいよ、別に」

 ヘラヘラと笑いながらも冷たく短い言葉を返してきた。しゅうまつを望む彼女の顔を見る。探してあげようと思ったが、本人にその意思が無いようなので諦めてもう一度浮かんだ。

「......じゃあ、君はしゅうまつを望んでいるんだ?」
「そうだね」

 嘘か真か分からない肯定の返しに、空を見上げてどう答えようか悩んでいると、一瞬、光るものが短く通り過ぎた。

「あっ......!」

 彼女も同じものを見たのだろう。空に一本指を伸ばす。そのままバランスを崩して彼女はそのまま水に沈んだ。直ぐに顔を出して、顔の水を払いながら空を見上げた。そんな彼女に小さく笑いながら、自身も空を見る。
 一つ、流れてしまえば、次々と続く。
 光が流れていく。
 流れていく短い光が強く輝いては消える。
 隣にいた彼女がまた仰向けに浮き始めた。その様子を水の動きで感じながらも、酷く短命な流星を目を細めて見つめた。

「......綺麗」

 隣の彼女から、美しく細い琴の音のような声が聞こえた。弦を弾くように、水音と共に溶け、彼女の声が自身の脳に浸透する。途端に、先程と似たようにシナプスがチカチカと光った。自身の脳内を反映したかのように、夜空に流星群が降り注ぐ。どうしてだか、顔が熱い。水は冷たいはずなのに、体の奥から火照る気がする。
 悶々と考えていると、少し離れて浮いていた彼女といつの間にか近づいていた。水の表面張力に引かれる木の葉のように、肩が触れた。

「あ、ごめ......」
「見て、宇野くん。大っきいの、来る」

 彼女が目を見開きながら、小さく呟いた。
 自身もその言葉に思わず空を見上げる。
 確かに、今までとは違う、強く、大きな光が、飛んでいく。
 輝きが遠くに見える。そのまま大きく長く、そして鋭く。
 光の軌跡を作って、そして、消えた。
 まだ、流星群は止まらない。
 自身の呼吸が、短くなる。
 この美しい光景を瞳に焼き付けた。
 その時、ハッと我に返った。急いで体を翻してプールの端へと泳ぎ、水から上がった。重く怠い体を押し上げて、プールサイドに腰掛けてスマホを手に取る。どこに落ちたのか、リアルタイムの情報を取るために、誰でも投稿できるようなSNSを開いた。情報の精査は後に回せばいい。とにかく、多くの情報を集めることに専念した。

「......観測座標、飛来経路、落下地点、被害地域、状況......」
「宇野くん?」

 プールサイドまで泳いできた彼女の問いに沈黙で返す。じっとスマホの画面を見ていた自身の隣に座り、一緒に画面を覗き込んだ。彼女がつぶやく。

「日本近海......数十センチ程の隕石......津波の恐れなし......」

 彼女の言葉に頷いて笑う。
 改めて、ちっぽけな人生だったと思う。テストで満点を取ったことだって数回。最優秀賞なんかとったこともなければ、部活動で優勝なんて程遠い。息をしているだけの、ちっぽけな生命である自身が星に焼かれる瞬間に宇宙を感じたかった。ちっぽけな自身が虚勢を張るだけのちっぽけな偽物の宇宙を。
 ただ、その宇宙は、これからも続いていくのだ。

「......しゅうまつは、ただの週末になったみたいだね」

 暖色の安堵と寒色の遺憾が心に入り交じる。まるで、先程までの空みたいだ。隣の彼女の濡れたまつ毛を見下ろす。画面をのぞき込む彼女の濡れた体がぴったりとくっついていることに、今、気がついた。途端に、身体が熱くなる。そんな自身の二の腕を彼女が掴んだ。それから、泣きそうな顔でこちらを見上げた。

「まって、まってまって! これ、スマホ、プールの中に落としたの、怒られちゃう!」

 そう言って、彼女が慌ててプールの中に飛び込んだ。目をぱちくりとさせていると、ザプっと彼女が水の中から顔を出して叫んだ。

「宇野くん! お願い! 探すの手伝って! 防水だから、たぶん、大丈夫なはず! 大丈夫だと思いたい!」

 そう言ってそのまま潜り始める。静かになったプールに、水の中から泡だけが上ってきた。呆気にとられた後、苦笑する。
 彼女はどうやらノストラダムスの大予言に期待していたようだ。
 彼女のスマホを探すべく、自身も心地の良い偽物の無重力の中に降りた。

 このしゅうまつは、しゅうまつをむかえなかった。だが、どうやら彼女の介入により、自身の穏やかでちっぽけな宇宙にはしゅうまつが訪れたようだった。
 だって、これから先、プールに宇宙を感じる度に、彼女を思い出すのだから。

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0622-5385作者:水無月 にに
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