第2話〜忘れ去られた龍神と生意気な小娘〜
時は満ちた。さて、あの小娘の夢におじゃまするとするか。我の神気に当てられぬように、力は抑えておかなくてはならぬな。このぐらいでいいだろうか?久しぶりだから加減が分からぬ。まぁ、あの小娘ならば大丈夫であろう。
「ぐーすぴー。もう。なんでみんな大浴場行かないで、部屋風呂使うの?掃除大変なんだけど」
小娘よ。夢の中でまで仕事をするのは止めよ。これは急ぎ降臨せねばならぬな。
我は、夢の中の時間を止めた。掃除道具が消え、穏やかな風が吹いて来た。
「聞け、小娘。我は『帝瑞祥龍王』なり。夢の中ぐらい働かなくても良い...」
「うるさい。今忙しいの。五分待って」
「...す、すまぬ。我は待つゆえ、落ち着くが良い」
この小娘、余程ストレスとやらが溜まっておるようだ。頼み事をするのは酷か?
「お待たせ。あなた誰?」
「むぅ...何も聞いておらなんだか...。我は『帝瑞祥龍王』なり。この土地を治める龍神ぞ」
我の神気に触れた瞬間、小娘は膝をつき、深く頭を垂れた。神の恐ろしさを知る人間がまだいたようだな。
「も、申し訳ございません。龍神様。大変失礼いたしましたァァァ。どうかお許しおォォ」
ま、待て待て。我は何もしておらぬぞ?
「お主をどうこうしようとは考えておらぬ。これを見て欲しいのじゃ」
我は、緑に染まったおみ酒、今にも朽ち果てそうな我の家の映像を流す。
「...酷い有様ですね...申し訳ございません」
「そなたが謝らずとも良い。どうかおみ酒だけでも変えてくれぬか?長く飲めておらぬでな。楽しみにしておるぞ。それから、玄関口の稲荷にも手を合わせてやってくれ。奴も寂しがっておるのじゃ」
これ以上はこやつの精神が持たぬな。
寝かせてやるとするか。
小娘は穏やかな寝息を立て始めた。
我はそれを見届け、静かに夢を後にした。