第3話〜夢枕の龍神と朝の挨拶〜
「......変な夢。あんなリアルな龍、見たことない」
龍神様がおみ酒を変えてくれと頼みに来たのだ。いや、無理だから。そもそも、あなた何処にいるのよ?たしかに、職場である、龍宮帝門ホテルの玄関口のお稲荷様は毎日目にする。
でも、龍神様なんて祀られていただろうか。
(可能性あるとしたら...あそこだよね?通る時に探してみるか...)
「あ、もう時間......!」
情緒不安定な上司の顔が脳裏をよぎり、私は慌てて寮を飛び出した。
『お稲荷様。昨夜、龍神様が夢枕に立たれました。玄関口のお稲荷様とは、あなた様の事ですよね?いつも見守ってくださっていたのに、手も合わせず失礼いたしました。これからは合わせるようにいたしますね』
玄関口でお稲荷様に挨拶をすませる。
夢の余韻か、玄関口でお稲荷様に手を合わせている間、背筋に心地よい冷気が走るのを感じた。気のせいだろうか、昨日の雨で淀んでいたはずの空気が、今日の朝は少しだけ澄んでいるような気がする。
さて、今日も長い一日が始まる。
その時の私は、あの夢が現実の始まりだったとは、まだ知らなかった。