何で男と旅しなきゃいけないんだ
「無事ならそれでいい、じゃあな」
髭のおっさんが帰ろうとしたのを慌てて引き止める。
「おっさ...ジオさん待って。この世界にこのまま放牧されたら俺たち生き残れないから、弟子にしてください」
「やだ」
「やだて」
「何で男と旅しなきゃいけないんだ、しかも二人」
ふと肩を叩かれる。そめちゃん、染井先生だ。
「吉田、他のお客さんに迷惑をかけるな」
「そめちゃんこの人逃したら俺たち死ぬよ?この世界魔物出るんだよ?」
「最大限丁寧な言葉遣いでお願いしよう」
そめちゃんと話してる間におっさんは消えていた。くそじじい。
「なあ吉田、魔物って何だ?俺たちなんでここに倒れてたんだ?」
「えっ俺が説明すんの?俺もよく分からないのに?そめちゃん転生モノ知ってる人?」
「転生かぁー、あの交通事故とかで死んじゃって魔物とか道具とかになるやつか?面白いよなあ、あれ」
「俺たち多分それだよ」
「何ィーーーーーッ!?」
そめちゃん声でかい。あと酒くさい。
「どうしよう、遺産相続の手続きとか、退職届とか、その前に明日の授業......」
「もう死んでるから関係ないから。それより俺たち何もスキルないしアイテムもないし、金もないんだよね」
「それは......あれ?装備なしで最初の村から城に行かなきゃいけないやつ?」
「だから何で俺に聞くの」
話が聞こえてたっぽいおばさん(店主?)が声をかけてくれた。
「あんたたち、なんか困ってるみたいだね。金がないなら、ここで働くかい?」
「お願いします!」
「ぜひ!ここで働かせてください!!!」
俺たちはテーブルを拭き、床を履き、皿を洗いながら情報を共有した。
「転生したのが確定だとしたら、この世界で生きていくには何かの仕事に就かなきゃなんですけど、俺たち何のスキルも付与されてないっぽいですよね」
「ええ〜〜??転生って言ったら、通常じゃありえない特殊スキルか、高スペックになるもんじゃないの??なんかこう、神官みたいな人に格付け判定してもらってさあ」
「それより、ここでずっと働いてく訳にもいかないし、何で金稼いだらいいと思います?」
「うーん、折角だから魔物退治とかやってみたかったなあ...あのホラ、魔法使えるんじゃない?魔核取って売ったりしてさ」
そめちゃんは二十代後半なのだが、色々夢見すぎではないだろうか。
「そめちゃん、洗い物は油汚れを先に拭いて落として、汚れの少ない食器から洗ってくださいね。スポンジ汚れるから」
「吉田、なんか手際いいな」
「かーちゃんに仕込まれてるんで。うちかーちゃん怒らせると鬼怖いんで」