百パーセントポリエステルだ
おかみさんに買い出しを任されて、そめちゃんと二人で市場へ。
「何あの獣肉〜〜うまそう」
「そめちゃんちゃんと探してよ、マルベリーの実だからね」
賑わう市場の通りのど真ん中、行手を塞ぐように立つ男がいた。
「......ククク、装備も武器も持たずに買い物、か」
ピンクのモヒカン、棘だらけの黒い鎧に鼻ピアス。これは関わっちゃいけない人種だと一目で分かる。
「オイ!何通りすぎてんだ」
(吉田、知らないフリだぞ)
(そめちゃん足遅いよ)
(いいか、都会のキャッチはこうやって避ける!)
「ゥオラ!!!無視すんなガキとオッサン!!」
痺れを切らしたチンピラもどきに肩をぐい、と掴まれる。
「よ、吉田ァァァァ」
「そめちゃん誰か大人呼んで、あの、俺たちに何か用事すか?」
「そんな丸腰で『襲ってください』ってな格好のやつ、放っとく訳ねーだろうが!!金目のモノ全部置いてけ、有り金もその奇妙な服も全部だ!全部!ヒャッハー!!!」
そめちゃんがおろおろしている。周りの大人たちは遠巻きに見ているばかりだった。誰も助けてくれない。
仕方がないので、言われた通りシャツを脱いでやった。裏返しにしてタグを見る。
「よ、吉田...?」
「そめちゃんも早く脱いで、お金置いて。おばさん正直に言えば怒らないでしょ」
「何自分の服見つめてんだ、気色悪りぃな!さっさと脱いで置いてけ!!!」
「あんた、洗濯の仕方分かるの?」
「は、ハァ!??」
シャツのタグをチンピラの目の前に広げてやる。
「綿とポリエステルが五十パーセントずつ、これ手洗いマーク。これは陰干しマークね。多少なら洗濯機入れても平気だけど、やりすぎるとすぐ痛むから」
「吉田......あ、俺のシャツ、百パーセントポリエステルだ」
「よく見たらあんたの服、ズボンはしわしわだしブーツ穴だらけじゃないか。手入れしろよ、大人社会は足元きちっとしてないと舐められるってとーちゃん言ってるぜ?」
チンピラは俯いて震え出した。俺怒らせるようなこと言ったかな。そめちゃんが俺の前に出て庇うような姿勢とってるけど、脚が震えている。
「か、かーちゃん......」
「か?」
「その物言い、かーちゃんそっくりだ......!!!かーちゃんごめん、俺かーちゃんとの約束忘れてた......!」
「誰がかーちゃんだ」
「お前が幸せなら何でもいいって言ってたけどよォ、俺、強くなっても金があっても、幸せって言えねぇよ!これじゃあ!!」
そめちゃんがタンクトップシャツ姿のまま振り返り、小声で囁いた。
(吉田、なんか知らんがチャンスだ、逃げるぞ)
(わかった)
気配を消して歩き出そうとしたが、また肩を掴まれた。
「なあ、......もっと俺を叱ってくれよ、かーちゃんのこと思い出してェんだ」
「......故郷に帰れよ」